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第6話 食料と猪


 結果から言うと俺たちの戦いは予想を裏切ってあっけなく終わったのだった。


「うわっ!?」

「ブヒッ!?」 


 ギルドの人に門を潜らせてもらうと、真横に一匹のワイルドボアがいたのだ。


 俺もびっくりしたが、そいつも相当びっくりしたらしく、ガタガタと震えているばかりで何もしてこない。


 よくよく見ると他のワイルドボアより一段階ワイルドさが感じられない。

 言うなればマイルドボアだ。


 なんか、こいつ倒すの可哀想じゃないか?


「おいボウズ、チャンスだぞ! 頑張れ!」

「今回は譲ってあげるよ! ぼくは目をつぶっているからね」


 クロノスは汚れ仕事を俺に押し付けたみたいだ。

 仕方ない。生きることは命を食らうことだ。


 「ブッ、ブヒッ!?(ぼっ、ボクに何を!?)」


 俺が斧を振り上げてにじり寄ると、ワイルドボアは小さな悲鳴をあげて、足をもつれさせながら後ずさった。


 そして互いの緊張がピークに達してそのときがきた。


「すまないっ!!」

「ブ……ヒ……(意識……が……)」


 そのワイルドボアは俺が斧を振り下ろす前に気絶していた。





 目的を達成出来たのか怪しいところではあるが、放置しても他の冒険者に討伐されるだけだろうから、とりあえずこいつを貰って帰ることにした。


「今日は本当にありがとうございました」

「いいってことよ! それより気を付けて帰れよ!」


 カルデロさんは、ワイルドボアをどうするのかと尋ねてきたが、ほんとにどうしようか。


 このワイルドボア飼えるのか?


 とりあえず、帰ってから考える旨を伝えると、少し何か考えたあと、街のなかに連れ込みさえしなければいいと了承してくれた。


「カルデロー、豆大福美味しかったよ、ありがとー!」

「おう。また遊びに来いよ!」


 俺たちはお礼を言って街を覆う壁伝いに納屋へと帰り着いたが、重要なことを忘れていた。


 食料を買い忘れたのだ。


 面倒だけどしょうがない。俺はワイルドボアをクロノスに任せて、また一人グラッセルへと向かった。

 




 グラッセルの街中は降って湧いたワイルドボアの肉にお祭り騒ぎとなっていた。


 見るとそこかしこで肉料理が販売されている。

 酒場では昼にも関わらず冒険者が宴を開いていた。


 しかし、そんな喧噪には構わずに俺はパン屋へと向かう。

 お金がないからだ。


「フィラデロさん、いつものお願いできますか?」

「はいよ。パンの耳だね。100ゴールドだ」


 パン屋に入ると先客がいた。身なりのいい女の子だ。

 その子はパンの耳が詰まった袋を抱えてほくほくと嬉しそうにして店を出ていった。


 それにしても袋いっぱいのパンの耳が100ゴールドとは。

 懐に不安がある俺にとって今後の主食になり得る商品だ。

 是非とも購入したい。


「あの、すいません。俺もパンの耳を貰っていいですか?」

「悪い! 今ので全部なんだ。」


 そう言うとパン屋さんにしてはやたらとガタイのいいおじさんは、申し訳なさそうに拝むようなポーズをとった。


「パンの耳は毎日出るからな。これに懲りずにまた来てくれよ」


 おじさんはそう言って快活に笑ったのだが、なんとなくこの人に見覚えがある気がする…… 誰だったかな?


 とりあえず、パンの耳を買えなかったのはショックだが、お得情報をゲット出来たし、もともとここに来たのは普通のパンを買う為だ。ノーダメージである。


「それじゃ、これとこれを2つずつください」


「おう。ありがとな! お詫びと言っちゃなんだが、なんかおまけで付けてやるよ。そうだな……おう丁度いい。チーズがあった。これは俺の兄貴が趣味で作ってるチーズなんだけどよ、ウチのパンと一緒に食うと旨いんだ! 取っときな!」

「え、こんなに大きいの良いんですか!?」


 おじさんが出してくれたチーズは拳3つ分ぐらいある大きさで、普通に買うと俺が今この店で買ったパンの倍はするだろう。


 何という事だ!


「ああ良いってことよ! 今後ともウチを宜しくな」


 俺はほくほく顔でパン屋を後にした。


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