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第28話 緑黄色監獄


「働け! 働け! 奴隷ども!」


 パシンッ!と鞭が地面を打つ。


 その音に怯えながらも、俺はエメラルド色に輝く立派なピーマンを休むことなく収穫していった。


「苦い……」


 ここはベジタブルワンダー帝国に属する離島。

 通称「緑黄色監獄」である。


 国内の重犯罪者が集められるこの監獄は警備が厳重であることで知られ、過去脱獄に成功したものは誰一人として存在しないらしい。


 そんな物騒な所になんで俺がいるのかというと、カボッチ王子に捕まったあと、普通に有罪判決を受けたからだ。


 そこではクロノスの威光が何の力も持たず、むしろ検察側のキラキラした尊敬のまなざしに屈して「法は守らないといけないよね~」などとのたまっていた。


 まさかの裏切りである。


 そしてそれが祟ったのか、俺は先の兵士たちが暴走した件を考慮されて死罪は免れたものの、終身刑でここにぶち込まれたのだ。


「また会ったな。貴様には借りがある。私が徹底的に苛め抜いてやろう。フハハ」


 そして何故か俺の目の前にいたのは先日、野菜の粉をぶっ掛けてデカいカラスをけし掛けてきた軍人だ。たしかカボロット少佐とか言ったか。


「なんであんたがここにいるんだよ?」

「自ら志願したのだ。現在、この緑黄色監獄の署長は私だ。どうだ嬉しかろう?」


 全然嬉しくない。


「軍曹! いや今は副署長か! アレを用意しろ!」

「サーイエッサー!」


 ついでにあの時一緒にいた軍曹まで付いてきた。

 軍曹もとい副署長が持ってきたのは白く輝く腕輪だった。


「アムル・ベルよ。この果てしなく広がるピーマン畑が見えるだろう? 貴様はこれから無限収穫地獄の刑を受けてもらう。この腕輪を嵌めてな」


 かちゃりと副署長によって腕輪が取り付けられた。


「フハハ。この腕輪は特殊な魔道具でな。収穫野菜の苦味を増幅して味覚に直接叩き込んでくるのだ」

「なんだと……」

「ピーマン。それはその苦味故に子供の天敵。それが増幅され収穫の度に襲ってくるのだ。いくらピーマン大好き人間でも10分持たずにトラウマとなるだろう。フハハ楽しんでくれ!」

「くっ、くそぉおお」


 なんて残酷な刑罰なのだ!





「貴様ぁ! これはまだ熟れていないではないかぁ! 謝れぇ! ピーマンさまに謝れぇ!」

「ひぃぃ。すいませんでしたピーマンさま!」

「許さん! 死ね!」


 最悪だ。


 無限収穫地獄が始まって、どのぐらい経ったのだろうか。

 まぁ10分ぐらいなんだけど、俺は完全にまいってしまっていた。


 ピーマンを収穫すれば強烈な苦味に襲われ、収穫しなければ看守の容赦ない鞭が振るわれた。前門の虎後門の狼である。


 こんな理不尽がまかり通っていいのだろうか?

 怒りが沸々と湧いてくる。


 これは裁判中に知ったことだが、野菜族は普通の野菜とは比べ物にならないほど美味しいらしい。


 という訳で、攫って食べようとか売ろうとか、そういう思惑を持つ不埒な輩が未だに存在するという。


 その対策として、ベジタブルワンダー帝国は入国者に制限を付けて、街中には危険思想チェックの魔道具を配置するに至った訳だ。


 そこまでは分かる。

 問題は何故俺が捕まっているのかということだ。

 全然納得出来ない。


 ぶっちゃけ、俺は野菜族を食おうだなんて1ミリたりとも思っていないのだ。

 だって普通に喋るし、食べるなんて絶対に無理だ。


 そう完全に冤罪なのだ。


「ていうか、料理したら美味しそうだと思うのが犯罪って何なのよ? 頭の中は自由でしょうが! 法は行動に適用されるもんじゃねぇのかよ! ねっ! おじいさん!」


 俺は反対側で収穫していた人の良さそうなおじいさんに愚痴った。


「ほうほう。お主アレをやらかしたのか。それはまた豪気なことじゃのう」


 おじいさんは、ほっほっほと陽気に笑った。


「野菜族はその辺、かなり敏感じゃからな。わしも昔はベジ身売買を生業としていてのう。今じゃこのような有り様じゃ」


 おっと話しかける相手を間違えたらしい。


「見たところ相当まいっておるな。これは内緒なのじゃが……」


 そう言っておじいさんがヒソヒソと近付いてきた。


「お主、脱獄に興味はあるか?」


 俺はめっちゃ首を縦に振ったのである。


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