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第18話 堆肥がうちにやってきた


「わぁ! いつの間にこんな大きいお家を建てたんですか?」


 今日はこの土地を借りてからちょうど一週間、エレナさんとの約束の日だった。


「色々とあったんですよ……」


 1000万の借金とか。


「それで牛車に載せてるのが例のあれですか?」

「そうですよ。見ますか?」


 牛車の荷台には大量の袋が載せてあった。

 そのうちのひとつを開くとそこには土のようなものが入っていた。


「そっちが牛糞で、こっちが腐葉土です」


 おぉこれが噂の堆肥か……


「意外と匂いませんね」

「牛糞はそうですね。アムルさんこっちに来てください」

「何ですか? ゴフッ!?」


 俺がのこのこと近付くと、目の前で小袋があけられたのだった。

 その中身の匂いは攻撃力が高かった。


「ひぃー。中身は鶏ふんでした! ゲラゲラゲラ!」


 サイコパスかよ。


「まあ鶏ふんは使わないので置いておいて……」

「……」

「さて本題に入りましょう。これだけの堆肥と運搬料合わせていくらになるでしょ~か?」


 まさかのクイズ形式。

 相場を知らない相手に料金を尋ねるとは、まさに鬼の所業である。


 安く答えれば馬鹿にされ、高く答えればその値段にされる。


 それはデッド・オア・ダイ。

 俺はだんまりを決め込んだ。


「早く答えないとタイムアップになっちゃいますよ。いいんですか?」

「……」

「しょうがないですね。それじゃあ答えを発表します。ダ~ダダン♪ 答えは0(じぃろ)だ~!」


 え? 0ゴールドってことか?

 0の発音が腹立つがまあいい。


「そんな訳ないでしょ! あの金に汚いエレナさんが無償で働くはずがない! あんた何を企んでいるんだ!?」


「ちっちっち。確かに交換条件を出させてもらいますが、そんなに悪い話ではありません」


 やっぱり、裏があったか。


「ときにアムルさんは職業スキルの【じゃがいも】は持っていますか?」

「何ですかそれは?」


「そのスキルがないと、じゃがいもを植えても育ちませんよ」

「え? それじゃあスキルを取れって話ですか?」


「それには及びません。今回アムルさんには、ベジタブルワンダー帝国のジャガイモタウンで『じゃがいもの試練』を受けて頂きます」


 何それ?


「試練を達成するとスキルポイントを使用することなく【じゃがいも】を取得することができます。ちなみに旅費はギルド持ちです」


「はい先生!」

「何ですか? アムル少年」

「その『じゃがいもの試練』ってなんですか?」


「まあまあ細かいことはいいじゃないですか。あっこれ受領証にサインお願いします。畑への施肥が終わり次第ギルドに顔を出してくださいね。それでは~」


 あーこれ厄介なやつだ。

 俺は遠ざかっていくエレナさんを見ながらそう思った。





「なあ地獄丸、ベジタブルワンダー帝国って知ってるか?」


 俺は昼食を摂りながら、遊びに来ていた地獄丸に尋ねた。


「聞いたことはあるでやんすけど、詳しくは知らないでやんすね。聞くところによると農業者だけが入国できる特殊な国らしいでやんすよ」


「へぇ~そうなのか」


「クロノスのお嬢がいれば知ってそうなものでやんすけど……」


 クロノスは豊饒エネルギーの充填が終わったらしく、今日の朝方に旅立っていったのだった。


「なんでもジャガイモタウンで『じゃがいもの試練』っていうのを受けないといけないみたいなんだよ」


「お祭りでやんすか!? オイラも絶対行きたいでやんす!!」


 地獄丸はテンションがあがったのか、目がキラキラしている。


「いや多分お祭りじゃないと思うぞ。それに農業者以外入れないんじゃないのか?」


「そうでやんした…… いや思い付いたでやんす! ちょっと行ってくるでやんす!」


 そう言うと地獄丸はピューと飛び出していって、ピューと戻ってきた。


「オイラ農業者になったでやんすよ!! ジョブチェンジでやんす!!」

「え!? 冒険者のほうはどうしたんだ?」

「辞めてきたでやんす!!」


 マジか! すげーな。


「よかったのか? せっかくAランクになったのに」

「オイラ面白そうなものには全力で臨む主義でやんす」


 ああなるほどな。地獄丸がなんでその年でAランクなのかちょっとだけ分かった気がした。


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