第13話 妖スコップ
「あれ? アムルさん。どうされました?」
翌日、俺は農業者ギルドを訪れていた。
ちなみに納屋はギルドから借りていたものだが、今回の一件は隠し通すことに決めた。
なぜかというと絶対に怒られるからだ。
怒られるのは嫌なのであった。
今日来たのは新しいスコップ調達に関するものだ。
すると受付にいたのは、ちょっとヤバイお姉さんでお馴染みのエレナさんだった。
「実はスコップが壊れてしまって(ドロドロに)新しいものが欲しいんですけど」
「ああ、なるほど。今、農具屋さんの場所をメモしますね。……。はいどうぞ!」
差し出されたメモに手を伸ばすと、さっとメモが引っ込んだ。
「500ゴールドです」
「やっぱりですか……」
渋々、お金を出してメモを受け取ると、メモには「となり」とだけ書かれていた。
「となり……?」
「お隣さんです」
「……っ、なぜ気付かなかったのかっ!?」
俺は血の涙を流した。
◇
農具屋に入ると様々な農具が置いてあった。
「おや? 見ない顔だぁ。アンタ、ルーキーだねぇ?」
「どうも。隣のギルドから紹介されてきました」
そして、そこにいたのはローブを深く被ったしゃがれ声のお婆さんだった。
「ヒヒ。何をお探しだい?」
「スコップを」
「そうかい、そうかい。ヒヒ。あんたにおすすめのスコップがあるよぉ」
そう言ってお婆さんが奥から持ってきたのは、漆黒のスコップだった。
「ヒヒ。これは名工ボウザンが打ちし妖スコップ【牛若丸】だ」
妖スコップ? 妖刀みたいなもんかな?
「このスコップはねぇ、どんな衝撃を受けても人の手にある間は決して壊れないし、ましてや欠けもしない。今なら10万ゴールドにまけておくけど、どうするね?」
「お婆さん、それ本当?」
「あたしゃ、農業者ギルドのとなりで商売してんだ。そこからの紹介で来たもんに嘘なんてついたら、干されちまうさ」
それもそうか……
幸いにして今は懐も温かい。
「そのスコップ買った!」
「ヒヒ。毎度ありぃ」
おっ! なかなかしっくりくる。
さすが妖スコップ!……妖スコップ?
「お婆さん、これ妖スコップって言ってたけど、もしかしてヤバイやつじゃないよね?」
「ヒヒ。なぁに大したことはない。スコップ関係のスキルが使えなくなるだけだ」
……え?
「おっと返品はできないからねぇ。適当にそこにあるスコップを持ってみなぁ」
指さされたのは、粗悪品の投げ売りコーナーだった。
言われた通り、一本選んで持ち上げると、そのスコップは粉々に砕け散った。
「【牛若丸】は嫉妬深いからねぇ。アンタは死ぬまで他のスコップを持てないよぉ」
「いやいやいや! おかし「ヒヒ。1500ゴールドだよぉ」
「え?」
「今、アンタが壊したスコップの値段さぁ。1500ゴールドだよぉ」
「……くそっ! くそぉおおお!!」
俺は本日二度目となる血の涙を流した。
◇
「こんな店二度と来るか!(泣)」
店の外に出て悪態をついた。
まさかパワースコップが日の目を見ることなく封印されるとは。
ギルドカードを見ると本当にスキルから消えていた。
これでまた補助なしの土掘りに戻ってしまった。
「あれ? アムルの坊ちゃんじゃないでやんすか?」
肩を落として歩いていると、後ろから声を掛けられた。
そこにいたのは地獄丸だった。
「ちょうど坊ちゃんたちの所に行こうと思ってたんでやんすよ」
「なんかしたのか?」
「何言ってるでやんすか? 昨日の夜にオイラが納屋を建ててあげるって約束したでやんしょ?」
マジかよ!? 酔ってたからか全然覚えてない。
「もーしっかりするでやんすよ! 友達が寒空の下に放り出されて黙ってるオイラじゃないでやんす! ちゃちゃっと建てるでやんすよ!」
うわーこれは本当にありがたい。
地獄に仏ならぬ、地獄に地獄丸さんだった。
『【ふわふわヒツジ】に転生したので、狩られないようSランクモンスターを目指します。』という作品も書き始めました。もし宜しければそちらもよろしくお願いします。
https://ncode.syosetu.com/n6075fg/




