二話 働きたくないから働いてない(以下略)
それは、唐突だった。
「ニートなめんな!」
ミカン砲により、フリーター論争が終結を迎えたその後。
笑いが収まったばかりだというのに、いきなり声を上げた相手。
思わず笑いが振り返しそうになった。
しかし、その笑いは落ち着けて、平静を装い問い掛けてみる。
「……急にどうした?」
「俺は、働きたくなくて働いてないんじゃない」
「違うのか?」
てっきりそうだと思っていた恋は、本心のままに再度疑問符を返した。
ミカンの皮を剥き、白い筋を取り除きながら頷かれれば更なる疑問符が口をつく。
「だったら何だ?」
その問いに、亜鶴は手を止めて片方の口角を上げた。
「働く必要がないから」
ドヤ顔で紡がれた答えだが、恋は疑問を引き摺ったまま首を傾げる。
「……いや、よく意味がわからない」
「だーかーら、働く必要がないから」
……それは今聞いた。
思わず内心でツッコミを入れた。
聞こえなかったわけではない。
恋が問いたいのは別の部分なのだ。
「……働く必要がない?」
相手の答えた内容そのままだった。
すると、続く問い掛けにも嫌な顔一つせず、むしろ自慢気に、亜鶴はその理由を口にする。
「だってほら、俺には恋っつー金蔓が居るからさ」
「…………」
「え? どした?」
訪れた沈黙。
半笑いの亜鶴が見つめる先。
ミカンを握る恋が立ち上がった。
「…………だ……誰が金蔓だぁぁぁぁぁッ!!」
近隣に響く声と共に、ミカン砲が放たれたのは言うまでもない。