1日目:黒の夢の中で。
進行経路、大幅に脱線しながらお送りしております。屑木です。
新稿、どうか、お楽しみ下しますよう…。
ジリリリリリリッ
うるさい…
ジリリリリリリーッ
うるさい…!
ジリリリリリリーッ…バンッ!!
はぁ…朝が、きたようだ。
人間の睡眠欲って、ブラックホール並みに底がない
のではないかと毎回思ってしまう。
とは言っても、起きなきゃいけないもんは起きなきゃいけないしね。
僕はまだ纏わり付いてくるぼんやりとした眠気に
やられながら、なんとか制服に着替え、食卓に
ついた。
濃いめに淹れられたコーヒーで一気に目を覚まさせると、頭が冴えてしまったせいか、昨日寝たことにより氷結させていた不安やら期待やらの、朝早くから
感じるにはキツイ感情が融解し、押し寄せてきた。
そう、春休みが明け、徹夜でゲーム続きだった僕を本日、待ち受けているのは…
ーーー入学式だ。
まぁ、うちは中高一貫だから新高1になるって言っても、何も代わり映えのしない平和で平凡で、
退屈と憂鬱に満ちた「日常」が待ち受けているに違いないけどね。
いつもより、着くのが早く感じられた電車を降り、
長期休みを挟んでもなお、忘れさせない登りなれた坂道を登り、学校に着いた。
道中もそうだったが、いよいよ新クラス、新メンバーの発表となると、やっぱり緊張はしてしまう…
手に汗を握らせ、僕は掲示板へと向かおうとした。
が、朝っぱらから何やら場違いな喧しく明るい声が
僕に話しかけてきた。この声って…
「よう成瀬!!ひっさしぶりだな!元気にしてた
かー?んー?俺は毎日お前に会いたかったぜこの野郎!」
バシッ!
やっぱりあいつだった…
「なんだよ森本、昨日も一昨日も一緒にいただろ!
ゲーム内で。後その場の雰囲気を跡形もなくぶち壊していく喋り方をなんとかしろ!僕の青春の1ページを
千切った罰は重いぞ…。」
叩かれた肩が思った以上にいたいし…
「はっはっはは!!んなもん気にすんなって!俺とお前のなかだろ…?なぁ…」
囁くように語りかけてくる。何それものすごい嘔吐感。
「おい、お前登場一話目でそんなこと言っていいのか?!もうそのホモキャラが定着してもいいっていうんだな?!あーそうかいでも僕は健全な男子高校生をお届けするぞ…」
「お前何言ってんだ…?緊張しすぎて頭おかしくなったのか?まいいや!今年も同じクラスだといいな!それじゃ、俺は先に行くぜー。」
全く…キャラが不安定な上に嵐のような奴である。
今のは、僕の幼馴染で良き友でもあり、良きライバルでもある森本 正也だ。
でもまぁ確かにあいつと一緒のクラスならとりあえずは安心かな…けど、物事ってそう都合よく運ばれるものじゃない…はず…だ…し…?
ーーー森本、今年も、よろしくな…
僕は心の中で、呟いたのだった。
元々、今日は本登校日でもないため、担任紹介と
クラスメンバーの軽い顔合わせなどでHRは終わり、
早くもまたマイルームのあの暖かな布団に潜れそうだ。
「ねぇねぇお前『侵撃の老人』最終話見た?!」
「みたみた!あれ超やばくね?!」
はい出ましたー。「とりあえずヤバイと言っとけば男子高校生と仲良くなれる」の法則。
「お前の語彙力がやばくね?!」
そうつっこみたくなる気持ちをぐっとこらえ、僕は
心に平和をもたらすべく、そそくさと帰ろうとした。
しかし、階段を降りたところで、今度は本当に久々に会う友人を見かけた。
「おーい!五十嵐!久しぶりだな!どうだ?春休み課題は終わったか?お前、クラスはどこになったんだ?今年は一緒のクラスじゃなくて残念だな…」
今更、久しぶりに会うそいつに僕が一方的に話しかけていたのは一目瞭然だった。
「あ、…一気にたくさん喋ってごめんよ…久しぶりに会ったもんだからさ、つい熱が入っちゃって…
…五十嵐…?お、おい大丈夫か…?お前…疲れてるんじゃないのか…?ぼ、ぼくはもう帰るからさ、お前も早く休むといいよ。それじゃ、また。」
そういうと僕は一目散に駆け出した。おかしいのはわかってる。自分が一番わかってる…
けど…なんだよあれ…なんなんだよ…五十嵐…どうしたっていうんだよ…
僕の友人、五十嵐 宵一 は、はっきりいうと「恐怖」
であった。
比喩でもなんでもなく、まるでこの世で生きてないみたいな…
もういやだ。思い出したくない。ありったけのスピードで家に着くなり、布団を被る…。
まだ神経が張り詰めている。小さな物音一つでいちいちびくっとしてしまう。
いやだ…忘れたい…話しかけなければよかった…
それほどに、僕は恐怖を感じたのだ。
外では、いつからか雨が降ってくるらしい。
不規則に窓に当たる雨の音を聞いてるうちに、眠気が這い寄ってくる…なんでだろう…こわい…こわいはずなのに…
真っ暗。真っ暗の中を進み続ける。地面は、平のようだ。ひたすら進み続けた。これは…夢…?なのか…
何もない空間。前に、夢の中でも自己意識が残る、
「明晰夢」というのを聞いたことがある。
なるほどそれかと思いながらも、僕は足を動かし続ける。疲れも、感じないみたいだ。
このまま、どこまで行くんだろう。出口があるのかな。
やがて、思考さへも止まるほどに歩いた先、扉に辿り着いた。
いや、扉なのか…?周りに真っ暗な空間に、ただ一つ、長方形の巨大な面が存在している。質量はあるのだろうか…?そもそも触れられるのだろうか…?
いや、存在していると言えるのだろうか…?
不思議な感覚。
まるで、その扉なるものを触らせようと、何かの力が作用してるみたいに、僕の思考は限られて行く…。
手をゆっくりと伸ばす。伸ばす。あと少し…
…っ?!
ほんの少しだけ触れさせただけの指先に、その扉のような、流動する闇、はたまた周りから一部分だけ削り取られたようなものから、黒いものが手を這いずり回り、やがてはっきりと形をなして腕を掴まれた。
それは、
…無数の蜈蚣だった。
それを認識した途端、ぼくは鋭く息を飲み込み、
あまりの恐怖に叫び声さえも発することができず、
懸命に右の手で無数の蜈蚣に犯された左の手を、
掻き毟る。引き剥がす。
しかし、蠢く闇の量はそんなささやかな抵抗を蹂躙
するが如く、勢いを増して増えて行く…
「いやだ…いやだっ!いやだぁあああああああああ!!ああああぁああああーーー!!!!」
漸く絞り出せた叫び声も、何もない空間に吸い込まれ、誰にも届かない。
その時…!
「よ…く…ぼ……れ……じ…う…」
途切れ途切れで意味不明なことを低く呻きながら、
扉の中から、「目」がこちらを覗いているのに気づいた…
両の眼窶には、あるべき両の目玉がなく、かといって
その奥が見えると言ったらそうでもない…
蜈蚣が絶えず溢れ出してくる…
なぜか、僕はその「目」を、見たことがある気がしたのだ…
あ…五十嵐…五十嵐の「目」だ…
学校で話しかけた「そいつ」には…「目」がなかったのだ…
そこまで思考が辿り着いた瞬間…抵抗する力もなく…恐怖を感じることもなくなった。
ただ、聴覚野に蜈蚣どもの蠢く音が届く。
犯されていく。虫に。全身を。
身じろぎもしないまま、僕は色を失った双眸でただ
虚無を見つめ続ける。
やがて、首に、そして口の中に、そして鼻、耳、に蜈蚣が入って行くのが分かった。
蜈蚣が湧き出るのは終わりそうにもない。
あの「目」は相変わらず意味不明なことを呻きながら
僕が犯されて行く様子を見つめ続ける。
目が開けられなくなった…
蜈蚣が…蜈蚣がもう全身を覆い尽くしたんだ。
それだけははっきりと覚えていた。
ーーー夢が、覚める。
はい。
いかがでしたかー?急展開ですねー。急展開ですよ。ええ。しかしまぁ相変わらず文章力の方も屑でして…
描写などが至らぬ点もございますが、
少しでも気になっていただけ方、また次回、
お会い致しましょう。
それでは、お暇頂戴。