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縁結びの神様のご加護付き!  作者: 赤式
1章「転生、チュートリアル」
8/9

8話 この世界の片山 澄 前編

7話です!

ゴールデンウィーク。

高校生の頃、あれ程嬉しかったものは無かった。

だが、今の俺はというと……。


「やる事ない……」


この世界のことを知ろうとするが、全然分からない。

調べても出てくるのは向こうとほぼ同じ事だけ。

違うのは、クラスメイトがブログをやっていたりとかそんな事だけなのだ。


「行き詰まった…」


俺はそこで起き上がって、服を着替えて部屋を出る。

すると、リビングでいずみが掃除をしていた。


「おはよう」

「えっ!? 」

「行ってきます」

「……な、なんてこと!」


俺が何かと挨拶をする度に、いずみは驚きの表情であたふたと慌てふためく。

頭に何か異変が!?

と言われた時は、結構ショックだった。

まだ1日も経っていないが、色々とあり過ぎだ。

いずみのその反応を見ていると、この世界の俺は余程家族を酷く扱っていたのだろうと分かる。

とりあえず、いずみにまた変な心配をされる前に家を飛び出た。


「あ」

「おっ」


とりあえず、この世界の俺がどんな人物だったのか知りたかった。

そう思って家を出ると、玄関前に凛が立っていた。


「おはよう」

「え……」

「お前もか…!」


挨拶をするたびに、驚きの表情を浮かべられるのってなんか辛い。

やはり凛もいずみと同じで、驚きの表情を浮かべていた。


「俺が挨拶するのって変なのか?」

「自覚ないのね……。これ、いずみさんに届けておいて」


俺が質問すると、呆れたように言って袋を俺に渡してくる。


「これは?」

「宿題。料理を習ってるの」


宿題?と思い中を見ると、ノートのようなものが入っていた。


「わかった」

「じゃあ、お願いね」

「あ、そうだ。このあと時間あるか?」


そう尋ねた瞬間。


「へ? 」


この世のものでは無い物を見るような眼差しで見られた。


「な、なんだよ」

「いや、別に……」


凄く訝しむような表情で凛は俺を見てくる。

なんだって言うんだ、いったい…。


「難しいなら、瀬川辺りを当たってみるんだが……」

「え、あ……、そうした方がいいかもね」

「……?」


唐突によそよそしい態度でそう言われて、今度はこちらが首を傾げる。

そして、そのまま凛は後ろを向いて、


「それじゃ」


とだけ言って去って行った。


「なんだよ……」


変な事をしただろうか?

特に思い当たる節は無い……。

とりあえず、いずみに凛の宿題を渡してから出るか。

そして、いずみにそれを渡して家を出た。

スマホの無料トークアプリを開く。

LINKというアプリだ。

正直、昨日こちらに来てからからこれは開いてない。

というか、通知が一切来ていない…。


「あ、なんか来てる」


リンクの通知が切られていただけだったようで、リンクのトーク自体はちゃんとあった。

友達は……、え、8人?

嘘だろ……、前ならもっと居たのに。

どれだけ友達いないんだよ俺は!


「とりあえず…」


瀬川は連絡先を交換していたようで、トークがあった。

というか、いくつか発言されているようで、数字が表示されている。


「心配してくれてるのか」


その内容は、大丈夫?とかそういう心配しているものだった。

俺はそれにまず、大丈夫とだけ打ち、心配ありがとうと続けて打つ。

そして、今は暇?とさらに続けて打つ。

すると、すぐに既読がついた。


『暇だが?どうしたんだい』

『暇だからさ、街中ブラブラしようかと思って』

『それは、デートのお誘いかい?』

『期待に添えなくてすまない』

『残念 (笑)』


まぁ、街中をブラブラするだけなら瀬川に声をかけなくても、ほかの男友達に声をかければいいのだが、大体がバイトとかで連絡がつかない。

特に、大型連休は。

それだけじゃない。

京介のあの時の、初めて会う奴に縁結びの神が憑依しているとすれば、瀬川なのだ。

何か話を聞き出せれば、と思い瀬川に声をかけた。


『じゃあ場所はゆかり神社でもいい?』

『よろしい、もういるのかい?』

『いや、今からだわ』

『分かった、こちらも今から家を出よう』


そして、リンクの通知をONにしてアプリを終了する。


「さて、始めるぞ……!」





神社に着くと、もう既に瀬川が待っていた。


「遅いぞー」

「瀬川の方が家近いからな……」

「あぁ、その通りだ」


なんというか、瀬川はとてもボーイッシュな雰囲気の服装が好きのようだ。


「とりあえず、またあのカフェに行ってみよう」

「えー、あそこ俺の父親がやってるカフェなんだよ……」

「かまわん!」

「勘弁してくれ」


だが、そんなこんなでまたカフェ・ルーエへと足を運んだ。


「いらっしゃい」

「どうも」

「あ、昨日の」


まだ開店直後の時間だからだろうか、お客は誰も居なかった。


「昨日はありがとう」

「いえいえ」


正利と瀬川のやり取りを横目で見つつ、適当な席に座る。

瀬川も俺の真向かいに座った。


「何頼むんだい?ここのお店のオススメは?」

「全部オススメです」

「教えてくれないのか……」


メニューをじっと見る瀬川。

俺はいつも通りの物を頼むと決めていた。

そこへ、正利が水とおしぼりを持ってやってくる。


「注文は決まった?」

「俺はカフェオレで」

「わかった。お嬢さんは?」

「ええと、私もカフェオレとミディアムチョコレートパフェで」

「かしこまりました、少々お待ちください」


注文がおわった所で、俺は早速昨日の事を聞こうとする。


「なぁ、瀬川」

「ん?」

「昨日はありがとな」

「お、おう……。君から感謝されるなんて」

「またか……」


この世界の俺は、いったいどうしたって言うんだ!

明らかにコミュ障だったようだ。

とりあえず、ひとつ俺は質問する。


「で、昨日はなんであそこにいたんだ?」

「なんでというと?」

「いや、ほら、あの雨の中で傘さしてまで外出歩くのはあれだろう?」

「なるほど」

「もし用があってあそこを通ったなら、その用は大丈夫だったかなとか思ったわけだ」


少し無理のある理由を通して、何故あそこに居たのかを聞いてみる。


「実は、あの神社に子猫が捨てられていてね。この時期にしては雨が酷かったから見に行こうとしていたんだ」

「なるほど」

「……まぁ、行ったら居なくなっていたけどね」


少し悲しそうに笑う瀬川。

何となく悪いことをしてしまった。


「なんかごめんな」

「いや、いいんだ。おかげで体調の悪い君を助けられたし」

「お話中失礼するよ。ご注文のカフェオレ2つに、ミディアムチョコレートパフェになります」


そこへ正利が注文した品を届けに来る。

瀬川はパフェを見るなり、目がランランと輝き始めた。


「美味しそう……」

「美味しいよ、それ」

「そうなのか!? い、いただきます!」


そして、口いっぱいにパフェを頬張った。

見ているこちらが幸せになりそうなくらいの食べっぷりに、なんだか満足してしまう。

こうやって見ている限り、あの縁結びの神が憑依しているとは思えないが……。


「ふぅ……、美味しかった」


そして数分かからないうちにチョコレートパフェを綺麗さっぱりたいらげた瀬川。

女子ってたまに凄いよな。




結局、その後街中をブラブラしたものの、特に瀬川に異変を感じなかった。

その日の夜、リンクの通知がスマホに表示された。

相手は……凛だ。


『体調大丈夫なの?』


というものだった。


『大丈夫だ、問題ない』

『そのセリフ聞くと不安になる』

『どうした?何か用か?』


それだけなのかと思い、そう尋ねる。


『別に用はないけど……』

『心配してくれてありがとう』

『……何か変な物でも食べた?』

『いい加減悲しい!』


何度同じことを思ったものか。

何故、ありがとうの一つでこんな反応をされるのか分からない。


『なぁ、凛』

『な、なに』

『俺って普段、感謝の気持ちあまり言ってないのか……?』

『え……、自覚なかったの?挨拶だってまともにしてくれないわよ、まったく』

『す、すいません……』

『でも、どういう心境の変化があったの?』

『特には』

『ふーん』


余程嫌な態度を普段から取る人物だったのだろうか。


『まぁ、元気そうなら良かった』

『おう、ありがとう』

『おやすみなさい』


そこで会話が終わり、明日の事を考える。

何かとこの世界に来てから思うのは、俺自身とこの世界の俺とで性格が違うようなのだ。

明日学校に入って、どういう人物なのか分かると助かる。


「まぁでも、友達いなそうだな…」


次の日、あまりの出来事に俺はショックを受ける事を知らずにそんなことを考えていた。

実は人気者でした、なんて

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