4話 紫 凛
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俺は凛について陽に話し始めた。
陽が引っ越しをした後、凛は元気を無くしてたんだ。でも、それは一時的なものですぐ元気になった
あいつはあいつでかなりショックを受けていた。
同い年だったから、学校でも同じクラスになったりはしたのだが、元気はなかった。
それでも、数年は陽がいなくても一緒に遊んだりはしていた。
でも、いつ頃からか笑う機会が減って行った。
そう、段々と話をしていても上の空の状態になったりしていた。
だから、どんどん周りから浮いていってしまった。見ていて何とかできないかと思って凛から話を聞こうとした。
でも、何を聞いても凛は大丈夫しか言わなかった。
でも、ある時凛の家で勉強しようってなった時に原因が分かった。
凛の兄貴が、一目見ておかしいと思える人物だったからだ。たまたま凛の家の廊下ですれ違ったんだけど、髪の毛とヒゲは整えてなくて、何もしていなくても人の部屋の壁を殴って来たりした。
髪の毛はぐしゃぐしゃで、ヒゲは数年分は剃ってないレベル。
そして、すれ違った時の風呂に入ってない時の独特な体臭。
でも、凛はいつもの事だから大丈夫だって言って平気そうにしていた。
凛の両親は家にあまり居ないみたいで、だから尚更そんな状況が毎日だったのだと思う。
そして、中学に入ったある時に、凛の顔にアザが出来ていた。
当時は学校の先生なんかが騒いでいた。
だが、誰も何もしようとはしなかった。
誰にやられたのかすぐ聞いたら、凛の兄貴だった。だから、なんとかしたいと思って、その日から凛を家に連れた来たり、逆に凛の家に行ったりする回数を増やした。
なんとかしたいと思っても、できる事は限られていた。だが、それでも俺は行動した。
それが数ヶ月は続いた。最後の日、俺は凛の家にいつも通り勉強を教わりに行っていた。
でも俺は家に忘れ物をしたから家に戻ってきた。
そして、事件は起こった。
俺が忘れ物を帰ってきてから探している間に、あいつの家が燃えていた。
俺はすぐに気がつかなかった。忘れ物を見つけて外をみたら、凛の部屋の窓から炎が出ていた。
今もその光景はハッキリと思い出せる。
忘れはしない。
すぐに母さんに声をかけた。
そしたら、近所の誰かが通報したらしく、消防車や救急車がきて鎮火活動と救助活動をしていた。
俺は何も出来ずに、それを野次馬の人達の後ろでただ見ることしか出来なかった。
自分の無力さと、助けに行こうとすらできない自分が情けなかった。
そして、凛の部屋からは凛と、凛の兄貴の死体が見つかった。
見つかった時にはもう時既に遅く、見るも無残な姿をしていた。
後々わかった事だが、出火元は凛の部屋だったらしい。
「大体はこんな感じ」
俺は話終えてから陽の顔をみた。
ひどくショックを受けている様子だった。
それを見て、俺は陽を一人にさせた方がいいと思い、無言で部屋を出て、玄関に向かった。
そして、すっかり暗くなった外へと歩き出した。
「はぁ」
家から30分程歩いた所の神社にあるブランコで揺られながら、ため息を吐いた。
ポケットの中では、時折スマホが振動しているが反応する気にはなれなかった。
陽に話をしていて、あの時の光景が頭に浮かんできてしまった。
「はぁ……」
深く溜息を吐いて、ブランコで揺れる。
すると、何者かの足音が近付いてきた。
その方へ顔を向ける。
「や」
「瀬川?」
「うん」
そこに居たのは、数時間前までクラスメイトだった女子、瀬川 そらだった。
クラス委員で、少し変わった人物である。
「片手君がこんな所にこんな時間にいるだなんて珍しいね」
「まぁ、色々あってな」
「……確かに、どこか元気ないな」
「いつものことさ」
少しだけ心配そうに瀬川が顔を覗き込んでくる。
俺は何事も無いと言うふうな素振りをするが、それでも心配そうにしている。
「瀬川こそ、こんな時間に何をしているんだ?」
「散歩だよ」
ニッと笑顔を浮かべて、俺の目の前に立つ。
そしてそのまま俺の顔を覗き込んでくる。
「なんだか顔色が優れないようだけど、大丈夫かい?」
「大丈夫ではないな」
「何があったか分からないが、元気を出して行こう」
瀬川はそう言うと、ポケットから飴を取り出して俺に投げてきた。
「疲れた時は甘い物が一番だよ」
「……ありがとう」
俺がその飴を口に含むと、いきなり俺の手を掴んでブランコから立たせる。
「おっとと……」
そしてそのまま、その神社の賽銭箱の前へと連れて行かれる。
「困った時は神頼みだ!」
「ええ……」
何とかして元気付けようとしてくれるのだろうが、胸を張ってそれを言われるとおいおいとつっこみたくなる。
だが、そこまで心配してくれての行動だと思うと、無下にもできずに、財布から小銭を取り出して賽銭箱に投げいれる。
『もしも出来るなら、過去をやり直したい』
「彼女が欲しいです!……かな?」
「ちょっと待て!」
人が願いを祈っていると、いきなりそんな事を言い始める。
「違うの?」
「いや、違うんだが……」
と、そこで。
いきなり何者かの視線を感じるとともに、ゾワッという寒気が体を襲った。
「!?」
「?」
それは瀬川も感じた様で、二人揃って同じ方向を見る。
「今のは?」
「見たところなにもないから気のせいじゃないかな? とりあえず、もう結構遅い時間だ。もう帰った方がいいかもね」
「そうするか……」
そして、2人とも首を傾げながらもそれぞれ帰宅する事にした。
家に帰ると、母・いずみが玄関で仁王立ちしてプリプリ怒っていたのはまた別の話。
瀬川さんの声は茅〇愛衣さんの落ち着いた声のイメージです!
次回、激動の第5話(大嘘)