エクス=アン=プロヴァンス駅にて
18歳になると家を出て生きていかなければならないという1700年代から伝わるメスリーヌ家の伝統に基づいてメアリー・メスリーヌはエクス=アン=プロヴァンス駅に来ていた。
もちろん、住むあて、とまるあても一つもなく恐らく今日から始まるであろう野宿生活の事を思い嘆いていた。ちょうど、家を出たのが夜明け前ということもあってエクス=アン=プロヴァンス駅は多くの人で賑わっていた。いや、賑わっていたと言うより混雑していたという方が適切だろう。全ての人間が自分の事だけを考え、自分のために行動している駅の構内はどこか淀んだ空気が流れていた。小走りで駆け抜けている人もいれば、まだ時間に余裕があるのかこれといって急ぐ様子もなく改札口から出てくる人もいた。これだけの人がいる駅の中では何がおこっても不思議ではないとメスリーヌは思った。バトラーとただ、ただ呆然とその光景を眺めていた。
「バトラー、何かしないと生きていけないよな」
何も考えず、そう呟いていた。
「そうですね。お嬢様。」
バトラーは、この雑然とした空間の中でもしっかりとメスリーヌの声だけを聞き分けている。さすが、国が認めた第1級の執事と言えるだろう。
ー10分後
メスリーヌは意を決した。ちょうど前方から駆けてくる男を凝視する。隙を狙っているのた。財布は、彼のズボンの右ポケットの中にあることが分かった。男がメスリーヌの横を通り過ぎた時、彼の運命は決まった。メスリーヌは後ろ手で彼のスボンから財布を抜き取る。その姿を見たものは1人もいなかった。
これが、メスリーヌの最初の窃盗だった。
繋がりを不可解に感じる人もいるかもしれませんがその理由は後で分かります。今はあまり気にせず読んでください。




