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第27話〜29話

 第27話

 繋がっていた心     

               

 「狭い所だけどどうぞ入って。雄介さん。」

 「あの・・本当にいいんですか?」

 「ええ・・」

 「おひとりで・・住んでいたのですか?」

 「はい。」

 「ご結婚されているものかと。。」

 「そんな気にはなれなくて。」

 「僕を・・恨んでいますか?」

 「そう見えますか?」

 「いえ・・」

 「あたしには雄介さんを恨む道理がないわ。同じ罪人だもの。ただ違っていたのはあたしの正当防衛事件の方が証拠不十分だったってこと。。」

 「・・・」

 「とにかく中に上がって。玄関じゃ寒いでしょう。」

 「はい・・ありがとうございます。」


 恵美が熱いお茶をいれ、二人は差し向かえに座った。

 「おいしいです。すごく温まります。」

 「長い間、御疲れ様でした。」

 「そんな優しい言葉をかけてもらえるなんて・・こんな卑怯者の僕に。。恵美さんに謝ることばかりで何もしてあげられなかったのに。。」

 「いいえ、雄介さんは充分に役目を果たしたわ。」

 「。。。」

 「おかしいわよね。あたし本人が殺意を認めて自首したのに、立証できない上に過去の終った事件として相手にもされず・・」

 「でも恵美さんは立派でした。僕は・・あなたのあの手紙を読むまでそんな気は全くなかった。自分のふがいなさ、情けなさに失望しました。」

 「そんなことない。雄介さんだってあたしの手紙なんかなくたってきっと同じことをしたと思うわ。あたしにはわかる。」

 「もう少しで福永事件まであなたを犯人にしてしまうところでした。僕は本当にバカだった。。自首したとき石原刑事にも言われました。『君がもっと早く自首していれば彼女に疑いはかからなかったし、精神的に苦しめることもなかったんだぞ!』と。」

 「あたしは・・雄介さんが自首したって聞いたとき、あたしをかばってくれているものと思っていました。」

 「すぐに自首もできなかった僕にそんな勇気なんかありませんでした。ただ、恵美さんが殺人罪になって逮捕されることはまずないと思って・・僕は事実から目をそむけていました。」

 「それはあとから石原さんに事情を聞いてわかったの。驚いたわ・・」


     

    遡ること数年前、田口雄介が福永事件に対して自首した翌日。。


 「Σ('◇'*エェッ!? 田口さん・・がですか?」

 「はい。びっくりしました。あなたに続いて彼がまた自首しに来るとはね。」

 石原刑事は恵美のアパートへ訪問し、事情を説明していた。

 「あたしの罪をかぶろうとしているんじゃ・・」

 「僕も最初はそう思ったんですけどね。事件当日のことを聞くと全て辻褄が合うんですよ。」

 「でもなぜ彼が福永さんを殺したことになるんですか?あたしが入れたコーヒーの中の薬で亡くなったのでは・・?」

 「いや、それが違うんですよ。原因はもうひとつの理由。窒息です。」

 「窒息・・?」(第21話参照)←クリック

 「はい。鑑識の結果では最初からどちらかが死因だろうとはわかっていました。そして田口雄介が自白した内容はまさにそれ。」

 「でもあたしはずっと・・福永さんが倒れてから見ていたのに・・」

 「ですが、あなたは気を失った。事件はその後に起こったのです。」

 「え。。?」

 「田口はあの日、福永があなたの家に来ることを知っていました。妹さんから聞いてきたようです。そしてあなたのアパートの外で福永が出てくるのを待っていました。そのときはあなたのことで話し合うつもりだったようです。」

 「・・・」

 「しかし福永がいっこうに外に出てこないので、しびれを切らした彼は、あなたの2階の扉の前まで行きましたが、話し声も何も聴こえず、逆に静まり返っていたので、福永があなたを無理矢理力づくで・・わかりますよね?」

 「はい・・」

 「まぁとにかくそう思ったそうです。胸騒ぎがしてドアノブに触ると鍵も開いていたので、中を少し覗くと福永がうつぶせに倒れていて、あなたはぐったりと仰向けに倒れていたそうです。」

 「確かに・・そうだと思いますが。。」

 「田口はすぐにこぼれているコーヒーを見て、何かが入っていたのだと察知しました。そしてまずあなたのそばに行き、呼吸も脈もしっかりしていることを確かめ、逆に福永が虫の息であることに気づきました。そのときちょうど福永が大きく息を吹き返したそうです。」

 「え?」

 「田口はとっさにあなたへの疑いを危惧して行動に出ました。もちろん田口自身も福永を恨んでいたそうです。彼はうつぶせになっている福永の顔を、敷いていた座布団の上に渾身の力を込めて押し付けました。被害者は少しもがいたようですが・・それが原因で絶命しました。」

 「・・・そうだったんですか。。でも本人の自白だけで裏づけがとれるのですか?私が自首したときもそれができませんでしたが。」

 「田口の場合は証拠があります。まず、あなたの以前の証言から、被害者は最初はうつぶせに眠るように倒れたのに、気を失ったあなたが気がつくと、今度は目が開いていたと言いました。それはまさに窒息状態で、もがき苦しんだからです。そして二つ目が決定的だったのですが、この寒さで田口は手袋をしていました。その手で彼は福永の顔を押し付けたとき、彼のだ液が手袋にわずかながら付着してまして・・彼の部屋を家宅捜索をしたときその手袋を押収しました。捨てるか洗濯さえすれば証拠も消えてなくなったんでしょうに。」

 「そう・・ですか・・でも私は彼があえてそうしなかったのではと思います。」

 「ほー。というと?」

 「彼は証拠を隠してまで罪を逃れるほど悪い人じゃありません。いつかは罪を犯した罰は受けなければならないと思っていた。。できれば早く証拠を見つけて欲しかったのだと。。彼もきっと自責の念に駆られていたんだと思います。このまま平然と暮らしていくには精神が持ちませんもの。」

 「あなたと同じように・・ですか?」

 「はい。」

 

 

 雄介と恵美は今ふたりでお茶を飲んでいる。

 雄介にとっては体の芯からあたたまるお茶だった。

 そして心の底からも。。


 「恵美さん、僕がさっさと自首しなかったばっかりに、あなたに迷惑をかけてきたことを心からお詫びします。恨まれても仕方ありません。」

 「そんな恨むとか・・そういうことは言わないで。」

 「僕はこれからあなたに何をしてあげたらいいのか。」

 「・・何かしてくださる気持ちがあるなら。。」

 「え・・?」

 「何かあたしにしてくださるのなら・・あたしのそばにずっといて下さい。雄介さん。」

 「恵美さん・・」

 「あたしはあなたをずっと待っていた。あなただけがあたしを理解してくれていた。福永さんのときだって、あなたはあたしの憎しみも一緒に背負ってしてしまったこと。あたしには雄介さんが必要!絶対必要なの!」

 「恵美さん・・僕も同じです。僕もあなたが必要だ。僕から言い出すべきだったのにすみません。こんなこと女性の方から言わせてしまって。。」

 「一緒にいて。。お願い。」

 恵美は思い余って雄介の胸に顔をうずめた。


 「今の僕には経済力も何もありません。苦労かけっぱなしかと思いますけど。。それでもいいですか?」

 「はい・・」

 「嬉しいです。恵美さん本当に嬉しいです。僕、絶対頑張りますから!絶対ここから這い上がってみせます!」


 恵美と雄介は、今までの心のうちを全部さらけ出して理解を深めあい、そしてこの夜ふたりは、数年の歳月を経て初めて結ばれたのである。




 第28話

 知美のそれから


 「お姉ちゃん。あたしの婚約・・破談になっちゃったよ。。」

 知美が恵美の家に入ってくるや否や、その言葉を発したとたんに大声で泣き崩れた。

 「何があったの知美?どうして?あんなに順調だったじゃないの。」

 知美は泣きじゃくるばかりでしばらく返答もできなかった。


 「彼とケンカでもしたの?それともあなたが彼に気に障ることでもしたの?」

 「違うよ・・」やっと出た言葉。でも知美の声は震えていた。

 「彼のお母様が・・一方的に婚約を破棄させたの。。」

 「そんな・・おかしいわよ。向こうのご両親だって喜んで賛成してたはずじゃ・・」

 「うん。。でもそれが急に今日になって。」

 「で、彼の気持ちはどうなの?」

 「彼は・・一人っ子の大事な御曹司だし、お父様の会社の跡取り。親に逆らえるはずないわ。」

 「いったいどんな経緯でそんなことに・・」

 「それなんだけど・・実は。。」



         知美の彼の大邸宅(第5応接間にて)


 「知美さん。率直に申し上げますけど、うちの宗則むねのりとの婚約は解消してもらいます。」

 

 この日、彼の母親から急に家に呼ばれ、席に着くなりいきなり言われたのがこのセリフだった。あまりに唐突すぎて、知美にはすぐは飲み込めなかった。

 「え・・?解消って・・え?」

 「言葉通りです。この話はなかったことにします。」

 「あの・・理由がわかりませんが。」

 「それはこれから説明します。理由もわからずに婚約解消ではあなたも納得できないでしょうから。」

 「はい。。」

 「知美さん。あなたには悪いんだけど、ちょっと素行調査をさせてもらったのね。」

 「・・探偵さんがあたしを調べたということですか?」

 「そうよ。うちのお抱えの興信所ですけどね。」


 知美は唖然としたが、徐々に冷静さを取り戻してきた。

 「それで・・あたしのどこがいけなかったんですか?」

 「あなた自身には別に問題がなかったんですけど。。」

 「どういうことですか?わかりません。」

 「じゃ、はっきり言うわね。あなたのお姉さん、以前犯罪に関わってますよね?」

 それを聞いて知美はショックを受けた。

 「でも・・でもそれは姉が巻き込まれただけです。辛い思いをしてきたのは姉です。」

 「それだけじゃないわ。しかもそのお姉さん、今は殺人を犯した人と一緒に住んでるようだけど、本当なのですか?」

 「・・・はい。。」

 「ゆくゆくはその前科者と結婚するつもりなのでしょうか?」

 「そ・そうだと思いますけど・・でもその人はちゃんと罪を償って、今は真面目に働いてます。それのどこがいけないんですか?」

 「あなたはわかってらっしゃらない。普通の一般家庭ならともかく、うちの企業グループは歴史と伝統を持つ親子5代に渡って受け継がれて来ている由緒ある会社です。宗則はもう時期、このグループのトップに立とうとしています。」

 「・・・・」

 「それをあなた、嫁ぐ嫁の身内に犯罪者がいるなんて。。そんな人たちとは縁戚にもなりたくないわ。」

 「そ・・そんな。。」

 「私たち上の者は、部下たちに良い手本を常に見せなくてはなりません。弱みを見せると足元を引っ張られる原因にもなりかねません。」

 「弱みって・・あたしたちは弱みになるのですか?」

 「あなただってもう20歳そこそこの小娘じゃないんだから、いい加減わかりそうなもんでしょう!うちのような注目される企業は特に世間体が大事なの。余計な噂がたつとね、これ見よがしに追い落とそうとするライバルたちが山ほどいるの。」

 「あたしじゃダメってことなんですね。。」

 「あなたの学歴に関しては・・まぁまぁですけどね。予備校へ1年行ったあと、某有名大学の薬学部を経て、某大学病院に勤務。でもね、うちの社員はすべて超エリートなの。この意味わかる?」

 「・・・・」

 「つまりあなたがこの家に嫁に来るということは、いずれ社長夫人。エリート社員たちの上に立つことになる。彼らが納得すると思う?」

 「ではあたしの学歴が問題であって、姉たちは関係ないんじゃないですか?」

 「あなたホントに甘いわね。ゴシップというのはすぐにバレるのよ。特にマスコミっていうのは、ゴシップ探しに目くじら立てて飛び回ってるの。そして世間もそれを興味津々で注目してるの。そうそう隠し通せるもんじゃないわ!」

 「それなら・・最初から反対して下されば諦めもついたのに。。」

 「宗則ももういい年齢になってるし、あの子が結婚を口にしたときは私も嬉しくて舞い上がってしまったのね。すぐにあなたの素行調査さえしてれば婚約まで到達することはなかったのに。。その点は謝ります。」

 「・・・宗則さんも・・このことは納得したのですか?」

 「あの子には私から言いきかせます。用件は済みましたのでどうぞお引取りを。」



             再び恵美の家


 「そうだったの。。ごめんね知美。。」

 「お姉ちゃんが謝ることないよ。」

 「いくら年月が経っても・・人に迷惑かけちゃうのね。。あたし」

 「アタシ、お姉ちゃんに迷惑かけられたなんて全然思ってないから!」

 「でも実際はそうじゃない。知美の人生も変えてしまったわ。」

 「お姉ちゃん、今日はここに泊まらせて。家に帰りたくないの。ダメなら雄介さんが仕事から帰って来るまででもいいの。」

 「彼も久々にあなたを見て喜ぶわよ。泊まっていきなさい。」

 「ありがとう。お姉ちゃん。」




 第29話

            宗則むねのりという人物


 帰宅した雄介も知美の婚約破棄の事情を聞き、神妙な面持ちになっていた。

 「ごめん。知美ちゃん。僕は君に迷惑かけっぱなしだね。」

 「ううん。雄介さん気にしないで。お姉ちゃんにも言ったけど、アタシ本当に全然そんなふうに思ってないから。」

 「こんな大事なことまで影響があるなんて。。」

 「もういいの。思い切り泣きたい捌け口が欲しかっただけなの。お姉ちゃんたちにしか言えないんだもん。」


 恵美と知美の両親は、過去の事件以来、ほぼ勘当状態であった。

 また雄介の実家でも福永事件以来、世間体を気にする両親は、家も引越し、ひっそり身を潜めながら暮らしており、雄介とも連絡も全くといっていいほど途絶えていた。


 「僕がこんなこと言える立場じゃないけど、今の時代に本人たちの意思を度返して、一方的にそんなことできるなんて信じられないよ。」

 「アタシも今になって思うわ。家柄だけを重んじるなんて、昔の武家か貴族みたいでしょ?」

 「なんとかならないものかな?」

 「いいの。宗則さんのお母さんと一緒に暮らすのなんてご免だもの。」

 「でも彼自身の口からは婚約破棄のことは聞いてないんだよね?」

 「そうだけど。。彼の携帯にかけてもでないの。」

 「・・僕が彼に会って、彼自身の真意を確かめて来ようか?」

 「いえ、アタシが明日彼に会いに行くわ。自分の問題だもの。」

 「そっか。。」


 翌日は日曜だった。

 知美は身支度を整え、恵美と雄介の住むアパートを出ようと玄関を開けたと同時に、扉が外の誰かにぶつかった。知美はすかさず、

 「あ、すいません。大丈夫ですか?。。あっ!」

 知美がびっくりしたのも無理はない。目の前にいたのは自分の彼氏、宗則本人だったのである。


 「どうしてここがわかったの?」

 「おふくろ御用達の興信所に聞いて来たんだよ。びっくりさせてごめんね。」

 「宗則さんも知ってたの?探偵さんがあたしの身辺を調べてたの。」

 「全然知らなかった。母が勝手にしたことなんだ。許してほしい。」


 二人の玄関での会話を小耳に挟んだ恵美が、声をかけた。

 「はじめまして。姉の高瀬恵美といいます。玄関ではなんですので、こんなところでよろしかったらあがって話を聞かせてもらえませんか?」

 「はい。今日はそのつもりで来ましたので。」


 居間には恵美と雄介、そして知美と宗則が、長方形のテーブルにそれぞれ隣どうしで対面する形で座っていた。

 「こっちから行こうと思って、出かける寸前だったのよ。」

 「そうだったんだ。間に合って良かったよ。」


 次に恵美が問う。

 「妹の婚約破棄はあなたも認めてしたことなんですか?」

 「いえ、僕は認めてませんよ。母が僕が仕事中に勝手にしたことです。」

 「じゃあ、妹と婚約は解消しないと約束していただけるんですね?そしてお母様を納得させていただけるのですね?」

 「母を納得させるのは・・難しいと思います。たぶん無理ですね。」

 

 雄介が言った。

 「僕らのせいで、知美ちゃんにこんな思いをさせて本当に悪いと思っています。でもそんな理由で結婚できないなんてあなたはそれでいいんですか?」


 宗則は雄介をじっと見ていた。

 「あなたが田口雄介さんですね。失礼ですが・・こないだまで服役していらした。。」

 「はい。僕のことです。もうほとんど調べていらっしゃるからおわかりでしょうが、人を殺しました。それが理由で今回のことが破談になるのなら、僕は彼女たちの前から消えます!!」


 「雄介さん・・!」


 恵美は凍りついた。それ以上言葉も出ない。

 知美も驚きながら雄介を見つめていた。

 そしてとっさに言う。

 「雄介さん。それだけはやめて!アタシ、お姉ちゃんを犠牲にしてまで結婚しなくていい!お姉ちゃんには雄介さんしかいないのよっ!」

 「しかし・・」

 「お姉ちゃんが不幸になって、アタシだけ幸せになるなんてあり得ない!雄介さんはアタシのことなんかよりお姉ちゃんのことだけを考えてあげて!お願いだから。」

 「そりゃわかるけど・・じゃどうすればいいのか。。」

 「いいのよ。知美。あたしは自業自得なの。まだ罪の償いが終ってないのよ。」


 宗則は恵美と雄介をじっと冷静に観察していた。まるで何かを確かめるかのように。そして口を開いた。

 「皆さん、そんな悲観しないで下さい。確かに僕は母を納得させることはできません。いや、納得させるつもりもないんですが。」

 「それで悲観するなと言われても。。」と知美が言う。

 

 「でも僕は知美さんと結婚します!今はっきりと決断しました。」

 「宗則さん・・でもお母様は?」

 「母はうちの企業グループの行く末のことばかり考えているんです。父の跡継ぎは弟に任せて僕は独立するつもりです。」

 知美は心配そうに言う。

 「でも・・そんなこと許してもらえるのかしら?」

 「この独立はね。ずっと以前から思ってたことなんだ。今急に決めたことじゃない。もう下準備も整っているしね。」

 恵美も不安そうに言う。

 「でも・・裸一貫で事業を始めるなんて・・かなりな冒険だわ。」

 「確かに冒険ですけど、独立を前提にして僕個人の資産をかなり残してあります。また優秀な人材を数名、機密のうちに今の会社より抜擢してあります。貧乏からのスタートではありません。」

 「(!o!)オオ! (!o!)オオ!それは素晴らしい!」雄介は絶賛した。

 「良かったわね。知美。じゃ絶対妹と結婚して下さるのですね?」

 「はい。以前からそう決めてました。ただ、母が今回のことで探偵を使って田口さんやお姉さんの素性を調べ、すごく恐ろしいことをしてきた人たちで、まるで人間じゃないような言い方をしていたので。。」

 「それは・・ひどいわ。。」

 「すいません。母はいつもオーバーリアクションで言う人なので。だから余計に自分の目であなたたちを訪問して、そしてお話をさせていただき、母の言ったことが真実か確かめてみようと思ったのです。」

 「それでいらしたんですね。」と恵美。

 「はい。人の家系やまわりの親戚関係を気にするなんて、母は時代遅れもいいとこだ。それに・・」

 「それに?」知美が聞き返した。

 「田口さんもお姉さんも随分苦労されてきたようだ。恐ろしい人間だなんてとんでもない。先ほどの発言といい、人に思いやりのある素晴らしい人たちですね。ここに来て本当に良かったです。」


 恵美も知美も、そして雄介も、お互い顔を合わせて微笑んだ。

 「妹をどうかよろしくお願いします。」

 「それは任せて下さい。でも企業から独立するので、結婚式はちっぽけでささやかな式になりますがよろしいですか?」

 「アタシ、ど派手なのは苦手ですからw」

 「それなら良かった。」


              (続く)


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