赤い髪
短すぎました。
「今度は俺たちの報告だな。」
カイとユーレイカは街にはいった。
地上には都市が点在していた。都市は街も含めて城塞で囲まれており、外敵というのを前提とした造りが主だった。
潜入する都市にはほどほどの規模を選んだ、首都では警戒が厳しいだろうし、小さすぎても異邦人は目立ってしまう。
言葉も通じない状態で門から入ることができない二人は、城壁に沿って歩いき門番の目の届かいところに行くと、重力反発装置で城壁を乗り越えてはいった。
二人は大通りへと出る。
なかなかの賑わいだ。これなら、二人もそれほど違和感なく人ごみのなかに溶け込める。
「反応は?」
「いくつかあります。隔離されているといった状況ではありません。自由に活動しているみたいです。」
「そうか。」
広場にあったベンチに腰を下ろす。
周囲を見回すと、同じようにくつろいでいるカップルがいる。
「こちらもデートに見せたほうがいいですよね。」
言い訳のように言ってユーレイアが寄り添ってくる。
「そ、そうだな。」
うろたえ気味にカイは周りを見回す。
派生人種で身なりの良いものが歩いているし、店の主人も人・派生人種入り混じっている。
カフェのようなところでお茶を飲んでいるものも、特段に席の住み分けをしているわけではない。
つまり、自然体だ。
「前方より近づいて来ます。」
そっと囁かれて、ドキッとする。
気を取り直して示す方を見る。
「もしかして・・・・」
視線の先に赤い髪の男が歩いてくる。
カイのいた世界には、赤い髪の人間は一人しかいない。
キサラだ。
この世界では赤い髪は珍しくないかもしれない。
しかし反応している個体ならば、キサラのような能力を持っているという可能性はある。
「間違いありません。」
見ていると赤い髪の男のもとに、違う黒髪の男が近づき話しかける。赤い髪の男も声をかけた男も笑顔だ。そして二人連れ立って店へと入っていった。
周りの反応は全くない。注目を集めていない。
「ほかには?」
「にしの方に二つあります。」
「行ってみよう。」
そこには少年が五、六人ほど、ボール遊びに興じていた。その少年たちのうち一人が赤い髪だった。
そのそばに女性がいて、赤子をあやしている。
その母親も赤い髪だった。
「男、子供、女性。世代と性別をまたがって赤い髪が出現しています。」
「赤い髪と特異パターンは一致するが、ここでは珍しいものではないということか。」
「・・・カイ。キサラの前では言いにくかったので言わなかったのですけど、ここでの反応パターンはキサラのそれにかなり類似していたのです。」
「ユーレイア、それを言っておいて欲しかったな。」
「すみません。」
「言い出せない気持ちはわかるが、任務だ。私情を挟むな。」
「キサラの精神にあまり負担をかけるわけには行かなかったので。」
カウンセラーとしての判断なら仕方がない。
「こっちはDNAサンプルと取るわけにも行かないからな。そんなところだ。」
キサラは目を見開いている。ショックだったようだ。
「映像が有りますか?」
「今映す。」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・馴染んでますね。」
「ふつう?」
「キャプテン。私も街に行きたい。」
キサラの強い視線がカイに向けられる。
物心ついた時から、キサラは自分と世界がへだったっていることを知っていた。
だが、映像では同じ赤い髪の人たちが友と遊び、子を産んでいるのだ。
「考えておく。」