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銀河連邦惑星特殊調査官  作者: 白猫
5/10

ブリーフィング

 クルーがブリーフィングルームに集まる。

 円形のテーブルの上に惑星が立体投影される。

「悪い報告といい報告がある。」

 カイが切り出す。

「いつものように悪い方から。」

 ミナトも声にじゃあと

「とんでもないものが、見つかった。」

 惑星の上に赤い点が灯る。

「ダーウィンだ。」

「えっ!二つあったって?」

 カイの言葉に互いに顔を見合わせる。

「そしてそれがずっと探していた最後のダーウィンだ。」

「キャプテンなんでそんなことが言える?衛星軌道上の旧式と同じという確率の方が高いだろう。」

 モリソンの言葉にカイは軽く頷く。

「あれだけほかのと全く違った波長を出す。ダーウィンと便宜上言っているが、別ものだ。だから銀河連邦は未だに必死で探している。」

「聞いていないわ。」

 ユーレシアが珍しく不満そうな声だ。

「上位者のみの管理情報だ。危険な情報ということでな。

 さらに悪い知らせだ。そのダーウィンはまだ稼働している。」


 カイは説明する 




 ダーウィンはまだ動物が人のような機能を持つように強制的に進化するようにつくられたため、生体になるべく無理のない形での作用を及ぼすものだった。

 しかしキサラを生み出したダーウィンは違った。

 テロリストによって不特定の空間へ放たれたそれは


 リスクを無視して進化させ

 異種の卵子と精子を掛け合わせることも可能とし

 おぞましい奇形児を生み出し

 実験体の致死率がほぼ100%



 最大の脅威は魔人が知性をもって生み出されることだった。


 それまでの、魔人は身体能力に優れ、治癒能力も高く、感覚の明敏化がみられた。だが感情も起伏が激しかった。衝動的だった。凶暴だが狡猾でもなく、集団で組織だってもいなかったため、脅威ではあったが対処出来うる災害と言ってよかった。




 知性を持った魔人。様々な人種の頂点にたつそれを、ネオ・ヒューマンといった。

 出現したは知性を持つ魔人は、短命であり致死にいたる障害をもっていた。

 多分に暴力的ではあったが、後天的に理性や知性によって、暴力衝動を抑えられるのかまでは、確認されていない。




 結一生き残った人種といえるのは、キサラだけだったのだ。

 存在自体が既に特異。それがキサラだ。

 彼女は既に人ではないと言える。



 キサラが実験体でスリーピングチャイルドだったということは周知のことであったが、

 カイを言葉はそれをあらためてつきつけ、衝撃を与えるものだった。


「キサラはその事を知っていたの?」

 テクワが声をひそめるように聞く。

 まるで大きな声で聞くと、キサラの中の魔人を呼び出してしまうかのように。

「知っていた。だから私は銀河連邦とくう腫捜査官になた。絶対に破壊すると決めた。

 ただし死ぬために生まれてくるような悲しい目に合わせないために。

 ただ破壊と憎悪だけの存在をつくらないために。」

 キサラの目は赤い点に据えられたままだ。

 怖くてみんなの顔が見れない。

 拒絶しないで。

 私は化物じゃない。

 意識を持つようになってから、何度となく自分に向かってはっせられた言葉  『化物』   

 それが私の名だと思った。

 私は 化物といいます。仲良くしてください。

 私を育てて、人にしてくれたグランはその言葉を聞き、涙を流して私に名前をくれた。

 キサラ=スメラギ

 それが私。

 グラン=スメラギに育てられてた、銀河連邦調査官。



 しばしの沈黙。その重さにキサラが耐え切れなくなり喘ぐように口を開き再び言葉を発しようとした時、テクワの口が先に開いた。

「魔人が出現しているって言うの?」

 カイはうなずく

「だが、今度は良い情報だ。反応はあるが、この地点にのみでほかの地域にはいない。

 まあ、それが不自然だとは言えなくもないが」

「とっとと爆破しよう。キサラを苦しめてる現況だ。」

「だよね。」

「破壊したら、破壊記念パーティでハンティングだ!。肉汁滴るステーキが俺を呼んでいる。」

「胃袋でモノを考えるな!」

「滴るなら果汁の方がいいなあ。栄養なんてなくてもいい。糖分プリーズ。」

 普段とおなじような口調で皆が話し始める。

 カウンセラーでもあるユーレシアの手がキサラの肩に置かれる。

 キサラの体がビクッと反応する。

 何も言わずにそっと背中に下ろされ撫でられる。

「本部に状況を報告した。

 応援が来る。この船の火力では取りこぼしがある。

 魔人が知性を持つとしたら、科学力を与える行為は極力避ける必要がある。

 到着まで本部からは、ほかの地域に拡散していない理由、または反応をごまかす擬態をしている可能性について調査するようにという指令が来ている。」



 船の軌道を変更して、直上での観測からはじめることにした。

 魔人の生体反応は、半径50キロ圏内の円状に限られていた。

 地形的に隔離されているというわけではなく、何故こうもきれいに仕切られているかわからなかった。

 その地域はほぼ平原に位置していたのだ。

 そして中心には城を取り巻く城塞都市があった。

 さらに解像度を上げると荒れているのがわかる。

 どういうことか。

 都市に機械が出現したとは考えにくい。発見したものを、城に研究のため持ち込み、

 魔都とかしてしまったというところだろう。

 魔人の生体反応は1000以上ある。

 この数値が多いのか少ないのかはよくわからない。

 上空から観測するに、この星はまだ蒸気機関すら利用していないらしい。

 だとしたら魔人の能力からしたら、知性を持っていなくともこの星にとって他の知性体の生存を脅かすほどの脅威だろう。



 ほかの地域では予測した通りに、衛星軌道上にあった旧型ダーウィンの影響を受けて、派生人種が生活している状況が見て取れた。


 さらに生体反応を分析すると、派生人種の生体反応の中にパターンが多少異なるものが2パターンあった。ひとつは世界中に分散しているが、人口密集地には見られず、もう一つは逆に都市部の方に見られる。

 これは、自分たちの社会ではみられないものだった。


「降りてみよう」

 カイ キャプテンが決断する。

「危険性の少ない生体パターンの分析から始める。

 俺とユーレイカは都市部、ミナトトテクワはもうひとつのパターンを持っている生体の観察と分析だ。」

「私は・・・」

「キサラは待機だ。モリソンと我々をトレースしておいてくれ。」




 4人が地上におりてから、キサラはモニターにかじりついている。

 何かしていないと恐怖と不安とに追い立てられる気がする。

 こうしていると少しは紛れる。

「キサラ。コーヒー。」

 モリソンはパイロットだ。この状況下では無条件で待機組だ。

 彼は、派生人種のなかでは珍しい爬虫類人種だ。

 グランと似た風貌を持っているので、キサラにとっては、最初から親しのわく存在だった。

「ありがとう。」

 チームではキャプテンを除いて最初に声をかけてきてくれたのもモリソンだった。

 彼は少数派の派生人種ということで、幼い頃いじめにあっていた。

 キサラの境遇とは比べ物にならないが、辛さを共感することができたのだ

「大丈夫。みんな無事に帰ってくる。」

「そうだね。」

「きっとミナトは情報収集のついでにハンティングしてくるつもりだろう。テクワも手ぶらじゃなさそうだし、

 帰ってきたら、一足先にパーティーだな。」

 表情筋の乏しいモリソンだが、キサラには笑っているのがわかる。

「ふふ」

「やっと顔がゆるんだな。私と違って動かせるなら、動かすべきだぞ。」

 そのさりげない励ましがうれしい。

「ありがとう。・・・モリソン、私のこと・・・化物と思う?」

「爬虫類族でもないのに外傷に強くて、プラナリアのように再生力が強くて、アリのように力が強くて、チーターでもないのに足が早ければ、化物だな。だが、普通の女の子だ。」

「なにそれ・・・」

「身体能力じゃなく心のことを言うのなら、キサラは化物じゃない。みんなもそう思っている。」

「そうかな・・・」

「ミナトなどチームの結成当時無茶をして何度キサラに助け出してもらったか覚えておるか?」

「そんなことあったっけ?」

「あいつが7度といって意た。毎日鍛錬して筋肉バカになりつつあるのはキサラに7回借りを返すためだ。」

「そ、そう。」

「ユーレシアがカウンセラーの資格を取ったのはキサラのためだ。」

「ちがうをよ。ファーストコンタクトをスムーズに友好的に取るためって。」

「それは表向き。たまにうなされているキサラを見て思ったはずだ。」

「そうだよね。このチームはもともと私を監視するためのチームだったんだものね。」

「違う!チームメイトの苦しむ姿を見て、少しでも助けてあげたいと思ったからだ。全く何年このチームで過ごしていると思っているんだ?」

「私はこのチームは仲間以上で私の居場所だと思っている。でもみんなは・・・」

「みんなも一緒だ。知っているだろう。能力はあっても俺たちもはみ出しものだった。

 ここが居場所なのは皆同じさ。」

 モリソンの言葉にここ最近キサラの中に張り詰めたものが溶けていく。

 キサラには分からないが肩の力が抜けてきたのを見てモリソンがポンポンと頭を軽く叩いて持ち場に戻っていく。

「あ、ありがとう!」

 振り返って礼を言うと、モリソンは片手を上げる。


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