メインディッシュの前の晩餐会
この物語はいくつかの思惑が絡まりあって構成されている。
『パズルを作り上げる者』『パズルを崩す者』そして、『パズルのピースを模索する者』の3つだ。
三者三様、十人十色というがすべての宗教が『神』という存在に一点集中しているように、この世のものは全て『何か』に通じている。この場合の『何か』に当てはまるものが神なのか、はたまた真理なのかもしくはそれ以外なのかは誰にも分からない。
話が矛盾しているじゃないかと思う者もいるだろうが、安心して欲しい。
その『何か』に何かが当てはまるというのは何者にも覆せない事実である。
おっと、話がずれてしまったね。ここからはちゃんと、思惑と思惑が交差するステージで踊り続ける人間たちの話をしよう。
◇◇◇
ここは暗い暗い場所。
周りをぐるっと見渡してみると、大きな直方体の機械がいくつも並べられていて光が点滅している。俗に言う『スパコン』というやつだ。
そのひとつに手をかけながら手にひらにもっている小さな携帯端末を弄っている中年の威厳のある顔つきの男―千堂 源九郎―。
千堂はニヤリとした不敵な笑みを浮かべながら先程まで手のひらにあったものからコードを引き抜きスーツのポケットにしまい込む。
それから逆のポケットからケータイ電話を取り出し、ダイヤルを回す。
トゥルルルル・・・ガチャッ
ワンコールだった。
「もしもし、私だけど」
『あ、千堂さん。電話を掛けてきたということは、そちらはもう終わったんですね?』
鼻をかく千堂。
「ああ、例の『パンドラ』はこちらに移し替えたよ。これで彼らは用済みだ」
『まさか孫のEMSにいくつものブロックを掛けて保存しているとは思いませんでしたよ…。では、『働き蟻』はこのまま放置ということでよろしいんですね?』
「ああ、あとは向こうが勝手に始末してくれるだろう。彼らの記憶処理は終わっているのかね?少しでも情報は漏らしたくない」
『はい、それはもう終了しております。Ms.ハートキラーに仕事を任せたので問題は無いかと。』
「龍淵寺 静香嬢か。なら余計な心配は無用だな。」
千堂が踵を返すし、出口に足を向ける。
「では、私もそちらへ行くとするよ。あとは高みの見物でもするとしよう」
『了解いたしました。では、もてなしの準備をさせてお待ちしております』
「気を使わなくていい、もともと私の城だ。では」
ピッと音が鳴り、通話が切れる。
◇◇◇
ドオオオオオオオオン!!
爆音が鳴り響く。
スクランブル交差点の真ん中で戦車が複数人の少女たちへ向けて砲撃したのだ。
「あっつ!先輩、これは流石に腕にきますよ…」
「我慢なさい、これも私たちの雫お姉さまのご命令なんですから!」
前線で砲弾を受け止めている2人の少女。正確には一人が砲弾のベクトルをゼロにして止め、後ろにいるもうひとりが空間移動で前の少女を砲撃の前へ座標移動してるという危険極まりない連携プレーをしているのだ。
「やばいですよ!私のキューティクル、そのうち不毛地帯になりますよ!!」
彼女の能力は無方地帯。生徒会役員、1年の相川 彩。おかっぱ頭 (ワカメちゃんカット) が特徴である。
後ろのロングヘアーも生徒会役員の1年、弓月 奈々。一応、上流階級という設定だが、真実は定かではない。
「お姉さまを介した迂回様の指示が来るまでここですべての砲撃を防ぎ続けろとのことですから、もう少し頑張りなさい!」
「腕パンッパンですよぅ…。明日は筋肉痛確定ですね」
今にも泣きそうな顔をしている彩だが、やはり慕っているお姉様のためというのが大きいのだろうか、諦めようとはしない。
その頃の雫お姉さまとはいうと…。
「ちょ、迂回君!止目ちゃんのパンチラ映像ばっかり見てないで仕事してください仕事!!」
ここは優姫のお屋敷の中。
さっきまでの会議室とは違い、ここは地下にあるモニタールームで都内23区のほとんどの防犯カメラの映像を見ることができる。
まあ、写っている半分の映像は周期の設置した私用のカメラの映像なのだが…。
「仕事はしてますよう。ほら、敵戦力のレポートもまとめたし、配置させた生徒会役員に出す伝令も大体できましたし、めぼしい幼女もリストアップしたし、とどちゃんの今日のパンツは水玉だし…」
「最後の2つは要りません!!」
「そんな顔を真っ赤にして怒らないでくださいよ。優姫姉先輩だって十分魅力的ですよ?ただ、僕は熟女には興味が無いというだけで…」
「誰が熟女ですか誰が!!第一、こんな時にそんな関係のない話をしている場合じゃないでしょう。スティーブ・ジョブズも呆れ顔ですよ!?」
「ああ、確かにこのPCはmacですけど、それこそ今は関係ないでしょう?」
「この人キライ!!!」
とうとう率直に言ってしまった雫。ぜーはーぜはー、と息を荒げながら―――
「じゃあ、この伝令を出してもいいのですね?」
「いいですよ、じゃ僕の頭に手を乗せてください」
そう言って周期は頭を突き出すが…
「了解しました」
と、言ってトコトコと後ろにあるダンボールの方へと行ってしまう。
「?」
不思議そうな顔をする周期を尻目に、雫はゴム手袋をして戻ってきた。
そしてそれを周期の頭の上へ。
「とことん嫌われてますね、僕…」
「はい、そうですけど?」
雫さん、怖いです…
『あー、あー、各地伝令各地伝令。』
それぞれの配置についている役員に向けて、周期が雫の心理描写を介して直接頭に音声を流し込む。
『戦闘準備が整い、、、え、あ、整った?あ、いや、整ったんですよね?まあ、いいか。整いましたので、あとは風紀委員が特攻で終わらせます。皆さんは各地に配備された風紀委員のサポートについてください。まあ、することもないだろうけれど…。けが人は今、現時刻をもって純一郎君奪還の任務から外れてください。戦闘に巻き込まれても困るので!一般人は既に学級委員が退避させています。直ちに避難してください。2度は言いません。死にたくなければ直ちに避難してください。以上!!』
「だってさー。私、帰ってもいいですか?見たいアニメあるんで」
ブーたれる彩。
「ダメに決まっているでしょう。見ているだけでも勉強になるはずよ!」
「奈々ちゃんは努力家ですなあ…」
戦場の後方から黒いバイクがやってきた。そこに乗っているのは―――
「あ、優様だ!」
「そうら、いってらっしゃい♪」
「むぎゃっ?!」
思いっきり彩に回し蹴りを喰らい、バイクの方面へ飛ばされる奈々。
「へ、あ、奈々?!?!」
「ぎゃあ!彩ちゃんの野郎、回し蹴りを直前で引いて戻すことによって無法地帯のマイナスベクトルの勢いをプラスさせやがった!!!」
「モテますね、優センパイ…」
優の後ろに乗っているのはジト目をした止目だった。もう、鬼の形相どころか、阿修羅の3乗くらいの怖さ…。
「あ、あのー。止目さん?」
「いいんです!私なんてペッタンコだしちっちゃいしちっぱし!!!!」
「へ、オール胸への言及?!」
「キャー!優様~!!」
ドンガラガッシャーン!
奈々が飛び込んできた。
そして止目が下敷きに…。
「いいんです、いいんです。私みたいな未熟者は引っ込んでます」
自力で脱出し、片手でバイクを持ち上げて戦車に向けて投げ飛ばした。
もちろん、反射で戦車に砲撃され跡形もなく粉々に…
「ああ!マイバイクがあああああああああああああ」
更新遅くなりました( ̄◇ ̄;)