第五章 本当に好きならたとえ記憶が無くても〜本当に覚えてないのか?〜
「にしてもここは暇だね。」
「だろ?だからみんな必死なんだよ。ここから出れるように、やり残した事を探してる。どうしても駄目な場合は自然に生まれ変わるけどな。」
――そうさ、俺もやり残したことはある。だけど……
「私も思い出したら、こんな思いしなくてもすむのかな?」
「うん。でもさ……」
「なに?」
――教えていいのか?
コイツに………
「…思い出したら、その男のこと思い出したら、結局逢えないまま、生まれ変わっちゃうんだよ?」
――そうだよ。俺のこと思い出したら、そこで終わりなんだよ?
「あ………」
そして少ししゅんとしてしまったアイツを見て、俺はしまった…!
と思った。
そして俺は付け足した。
彼女を悲しませたくないから……
「で、でもさ、思い出さないで逢うことは出来るんじゃないかな?」
「どういうこと?」
俺は少し考えた。
勇気付けられることを……。
「うーんと…そう、もう一度好きになるんだよ。」
「もう一度?」
「うん。その人のことが好きだってことを思い出さないで、もう一度好きになるんだ。」
「それってすごい偶然だよね?」
「うん。でもその偶然に賭けてみない?どうせなら小さな可能性を信じてみない?」
――そうさ、現にこうして二人でいるのも偶然なんだ。
「…そうだね。」
「それにさ…」
「?」
そして、俺は今まで言いたかったことを言った。
「本当に好きならたとえ記憶を失くしても、好きになれると思うよ。」
そして、彼女は黙ってしまった。
渋かったかな?
「……いいこというじゃん!!」
「だろっ?!」
「自分で言うな!」
「「ハハハ!」」
――でもずっとこうして笑い合っていられるのなら、
もう少しこのままでもいいかな?
〜作者から〜
今回は第四章の雄の回想でした。
……ってことは優奈の好きな人って、雄?!(聞くな!&びっくりしてんな!)