第三章 顔も名前も知らない誰かに恋してる
そして私は30分ほど彼の話を聞いた。
彼のころころ変わる表情を見ながら、“彼”のことを思い出していた。
けれど時々、頭痛がし、結局思い出せなかった。
「ねぇ!」
「何?」
「まだ名前教えてもらってないや。名前は?」
「優奈。水無月優奈。」
「えっ?」
「な、なによ。」
「いや……俺が助けた子もそんな名前だったような……。」
「嘘?!」
…もしかしたら彼が……雄君があの“彼”なの………?!
「いや待てよ……葉奈だったかな……菜都美だった気も……。」
優奈はずっこけた。
何なのよ……この人………。
絶対“彼”じゃないわ!!
「もういいわ。私、どうすればいいの?」
「どうすればって……何かまだ未練があるんだろ?あそこに…」
といって雄君は下をさした。
「未練っていうか……思い出したいの……。」
「自分が誰か?」
「ううん。……私の好きな人。」
「え?」
「なんかね……痛いの。」
「痛い??」
ますますわからないという顔をしている。
「忘れているんだけど、好きな人がいる気がするの。そのことを考えると、心が暖かくなるの……。私は……」
私は笑われることを覚悟で言った。
まっすぐな瞳で………
「顔も名前も知らない誰かに恋してるの―――――‥‥‥‥‥‥。」
「そっか……。」
「笑わないの?」
「うん。」
「何で?!」
――絶対笑われると思ったのに……
「俺も似たようなものだから………」
「え?」
「俺、さっき話した女の子が忘れられないんだ……」
「そう……」
「じゃあ似たもの同士、仲良くしよ!」
ね?と言って手を差し出した。
「あぁ。」
そして二人で握手をした。
〜作者から〜
なんかこの題名(顔も名前も知らない誰かに恋してる)聞くと、あの歌思い出すんだよなぁ。
知りません?
君の瞳に恋してる って歌。
似たようなものですしね。(イミフメイ!)