第二章 悲しみを乗り越えて〜“彼”に似ている“彼”〜
もうお通夜もお葬式も遺品の整理も終わった頃、優奈は……天国にいた。
「ここはどこ…?……あっお母さん!」
そう、下にはパートで働いている優奈の母、優里が働いていた。
「…そっか私、死んじゃったんだ…記憶も無いのに……。」
優奈は泣き出しそうになった。…でも泣かなかった。
だって、お母さんやお父さんのほうが辛いから……。
いつも優奈は涙を人に見せたことがなかった。
いつも泣き出しそうになれば、こう唱えた……こう思った。
?私より辛い人はたくさんいるのだから泣かない。もっと辛い人に申し訳ない。?
と………………。
「泣かない……。……絶対……!」
「君……誰?」
「えっ?」
そこには、同い年ぐらいの男の子が立っていた。
「貴方こそ…誰?」
「あ、ごめん。俺、南都田雄。」
「ナツタスグル……?」
「うん。俺は、三年前にここにきたんだ。」
「そんな前から?」
「うん。でももっと長い人もいるよ。一番長い人で一〇〇年前かなぁ……。」
「そ、そんなに?!」
「うん。あっでもこっちじゃ時間の経ち方がちがうんだ。」
「経ち方が違う?」
「うん。俺、三年前って言ったろ?でも向こうじゃ十日なんだ。」
「へぇ……。」
「でも…みんな記憶があるんだよね……。」
「え?」
「私、記憶が無いの……。ひき逃げで……最初は記憶が無いだけですんだのだけど、今度はそううまくいかなかったみたい……。」
「口封じ……か?」
「うん…。」
「そっか……。俺の好きだった人もそうだったなぁ。」
「え?!」
「俺、その女の子かばって死んだんだ。俺が一回目が覚めたとき教えてもらった。…結局その子が目を覚ます前に俺は行っちまったけどな……。」
「そう……。」
ほら…いるじゃない……。
私より辛い人……。
雄君もそうだけど、その女の子もかわいそうよ。
でもそういう時は、下手な言葉を掛けないほうがいい……。
余計傷を深くするだけだから……
私がよく知ってる………。
深く聞かないほうがいい……
「ねぇ、ちょっと聞いてくれるかな?その子のこと…誰も聞いてくれなくて。」
「え?いいけど……」
「ありがとう!」
あっ……この顔なんか…懐かしい。
すごく優しくて……
心を暖めてくれる感じ………
なんか前に会ったことのあるような……
「その女の子はとっても笑顔が素敵だった……天使みたいだったんだ……」
そうこの顔……
記憶は無いけれど“彼”もこんな風に笑った気がする……
なんだかすごく“彼”に似てる気がする―――――……………
〜作者から〜
優奈の好きな人とは…?
誰でしょう。