3.妄想学園放送部!
あーかったる。
小走りに放送部へ向かう。もうすぐ昼休み、放送の時間だ。金沢のヤロウが早退したせいで、当番が俺に回ってきた。面倒くせ。何がどうせ暇でしょ、だ。
昼休み開始のチャイムがなり、五分後。間に合った。
放送開始のボタンを押し、すうっと息を吸い込んだ。
「こんにちは! 昼放送の時間です! 四限に水曜担当の金沢くんが早退したため、原稿が手元にない恒例の代役でお送りいたします!
いよいよ十二月、もうすぐクリスマス! そして来月はセンター試験ですね! 俺には関係ないけど! あっはっは!」
うーん、見えない殺意が見えるようだ! 気にしないけど!
「それでは学園からのお知らせです。えーっと……森学園長のヅラが持ち去られ、現在スペア生活です。見つけ次第学園長のとこまで持ってくと、食券がもらえるよーです、皆届けてねー。
英語担当のコル.先生が素敵なマッチョをお待ちです! ……なんぞ」
一応学園からのお知らせは書面で放送部に届いているのだが。この内容どう考えてもおかしくないか? まぁヅラは失せものだしあり……か? いやしかしマッチョ。俺の夏休み☆細マッチョ計画まで待ってくれないかな。
「お次はお便りコーナー! まず一通目は~」
放送室の前にはお便り箱というものが設置されている。学園の教師・生徒が誰でも匿名でこの箱にお便りを投稿できるのだ。採用されればお昼の放送で読まれるというわけ。
「保健体育の尾野先生へ! 乳は本物ですか? だそうです! うん、どうなんだろうね! 今度尾野先生に聞いとくわ!」
セクハラで訴えられそうだけどな!
「では、次! 七不思議の目撃談コーナー! お便りありがとー! どれが本日採用分かわからないので適当に読みます! えーと何々……赤い糸の木に変な文字の書かれたものがある。えjrh@fg……何のことかわからないなぁ、さっすが有働さん! 次はー、開かずのトイレに行ってみました! 本当に開かなかった!! しかも何か物音が……それって……いやなんでもないわ」
この件に関しては触れないでおこう。
よし、これで一通り読み終わったな。
「おっと、いい時間ですね! それでは本日のリクエスト曲、続けて三曲流します、どうぞ! っておい誰だこの選曲、金沢か!」
俺は知らん。歌ってみたとかありなんですか。しかもよっ○い。どうなんですか。これあとで怒られるの、俺じゃね?
本来ならこの間に昼飯を食べる。放送はほぼ昼休み中あるから、この空きに食べるしかない。十五分程度しかないので早食いの癖がつく。
以前は放送の前半と後半で担当を分けることもあったのだが、今は部員が少なくて一人で担当しているのだ。
まぁ俺はあとで食べるんだけど。
「それでは本日のお昼の放送も、まもなく終了! それでは最後に!」
すうっと息を吸い、大音量で宣言する。
「工藤結花と付き合いたいヤツは、この俺を倒してからにしろ!」
学園一の美少女として名を馳せる工藤結花。
彼女がよく裏庭や屋上で告白されているのを知っている。今のところすべてゴメンナサイだからいいけどさ。こっそり覗いてることがバレたら本当に殺されるな。
「以上、代役の放送部顧問兼ボクシング部顧問、早く人間に戻りたいの工藤強でした!」
あー、本当人間に戻りたいよなぁ。便利といえば便利なんだけどさ。鍵もいらないし。
廊下から騒がしく、足音と罵声。おいおい、美少女、人気落ちるぞー。
「ちょっとパパっ!」
「はぁい、結花ちゃん♪」
笑顔でひらりと手を振ってみた。
「はぁい、じゃないっ! 病院から電話あったんだからね! 早く戻らないと戻れなくなるよ!!」
「おっと、すぐ戻るって」
「幽体離脱禁止だって言ったばっかなのに! しかも何あの最後!!」
「愛娘に悪い虫がつかないように♪」
「もー! パパ早く退院しないといつまで経っても七不思議のまんまだよ!」
「はーい! じゃ、勉強頑張るんだよー」
ふわりと浮いて、病院まで戻る。
あー早く退院したいなー。
妄想学園七不思議・幽霊(生霊?)の放送の怪 ・ 強制終了 本当にありがry