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未来の伝説  作者: 雲雀 あお
エピローグ
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エピローグ

 新聞の見出しは、いまだ商業国で起こった大地震のことをかたっていた。まあ、実際は地震ではないんだけど、そんなこと他の人が知っているわけがない。知っている人は、自分の不利益を考えて黙っているようだし・・。


「て、それは俺もか」


 俺の場合は不利益ではなく、ただ単に説明が面倒くさいだけだが。

 手にした新聞をテーブルに放り出し、大きく伸びをする。


 此処ここは、俺が生まれ育った実家だ。


 あの時折れてしまった聖剣『シュトラウス』。それは、聖剣がつくられた聖国家に持っていった。時間はかかるが、直ると聞いてほっとした。が、さすがに何故なぜ折れたのか、理由を説明しないままというわけにはいかなかった。

 仕方ないから、適当に言葉をにごしつつ伝えたら、何故かすごく感動された。どうやら、魔王と壮絶そうぜつな戦いをしたというとんでもない勘違かんちがいをさせてしまったらしい。まあ、その方が都合が良いから黙ってたけど。


「おい、茶菓子が切れたぞ。代わりを持ってこい」

「何でお前は、当たり前の顔をしておれるんだよ」


 テーブルの向こうに座るベリアスに、一応ツッコむ。と、台所から、クッキーの入った缶を持ったバラシオンが出てきた。


「陛下、このようなものが見つかりました」

「ほう、どれどれ」

「お前ら、他人ひとで勝手にしすぎだろ!?」

「何を言っている。あの時、爆発に巻き込まれそうになったお前を助けたのは、誰だと思っている。命を救ってやったんだ、これくらいで五月蠅うるさく言うな」


 そう、あの時、ギリギリで壁の破壊に成功した俺は、復活したベリアスの『転移』の魔法で助かった。それは、そうなんだが・・・、壁を壊したのは俺だぞ?むしろ、ベリアスが借りを返しただけだろう。


「そんなことは、わかっている。だからこうして、待ってやっているのではないか」

「いや、そんなことは頼んでないけどな」


 ベリアスは、勇者との対決にまだこだわっていた。おかげで、聖剣が返ってくるまで、こいつは待つと言いだしたのだ。まあ、百歩ゆずって待つのは良いが、何故俺の家で待つ。自分の城に帰ればいいものを・・。

 しかも、無駄に見目みめが良いからか、家族に容認され、村でもちょっとした有名人になっている。本人も満更まんざらでもない様子だし、追い出しにくくて仕方ない。


 と、そこで、玄関のドアをノックする音がした。こんな昼日中ひるひなかに誰だろうか。農村ゆえに、昼はみんな畑に出ているはずだが。

 とにかく、扉を開ける。そこには・・


「久しぶり!」

「エリィ!?それに・・・シュナイゼル」

「何で僕を見て、そんな嫌そうな顔するんですか、勇者様」


 ワンピースにパンツと、動きやすい格好をしたエリィが俺の脇を通り抜ける。続いて這入はいろうとしたシュナイゼルの鼻先で、扉を閉める。


ひどいよ、勇者様。約束通り、記憶を返しに来たのに・・・」

「ベリアス、無事で良かったわ」

「ん?・・・・ああ、お前か」


 扉を小さく開けて、わざとらしく泣き真似まねをするシュナイゼルを無視して、ベリアスの隣に座ったエリィに目を向ける。


「何で、お前らが一緒に・・、ていうか、何で俺の家を知ってるんだ?」

「そいつが、教えてくれたの。ベリアス、会いたかった」


 後半は隣のベリアスに向けていたが、言われた本人はクッキーに興味津津きょうみしんしんで聞いていない。仕方ないから、シュナイゼルを家の中に入れて話を聞くことにした。


「で、記憶を返しに来たってことは、あの時のことはうそじゃなかったってことか?」

「そうだよ。僕は嘘なんてかないからね」

「どういうことだよ?ちゃんと説明してもらうからな」

「しょうがないなぁ・・」



*********



 話をまとめると、俺とシュナイゼルの出会いは、あの森で間違いはなかったらしい。

 ただ俺は、その前に川の上流で、街道を行く行商人ぎょうしょうにんを狙う盗賊とうぞく討伐とうばつしていたらしいのだ。そして、運悪く川に落ちて頭を打った俺は、意識を失ったまま流され、最初に目覚めた場所まで行ってしまった。おそらくその時、荷物も落としたんだろう。


 目覚めた俺は、シュナイゼルと出会った。記憶を持ったまま。

 で、意識が朦朧もうろうとしていた俺に悪戯心いたずらごころいたシュナイゼルは、俺の記憶を奪った。そして、再び気絶した俺が起きた時に、記憶を失って困る様子をこっそり見てたのしんでいた、と・・。


「お前、ちょっとなぐらせろ」

「いやだなぁ、そんな怒らないでよ」

「怒るだろ、普通!!お前のせいで、俺は散々な目に合ったんだぞ!?」

「ああ!そうだった。忘れる前に、はい」

「!?」


 油断していた。後ろに回ったシュナイゼルが、俺の後頭部をさわった。すると、生まれてから今までの記憶が走馬灯そうまとうのように、めぐった。すごい速度でまわる記憶に目が回る。


「どう?戻った?」

「・・・・2度とやるなよ」

「わかってるよ。次は、もっと面白いことにするからね」

「・・・・」


 わかってない。でも、今は記憶が戻ったことを素直に喜んでおくか。

 しかし、シュナイゼルはともかく、エリィは何しに此処まで来たんだ?まさか本当に、ベリアスに会いに来ただけではないだろうが。


「僕は、ほら、面白そうだから」

「お前には、いてない。さっさと帰れ」

「私は、ベリアスに会いに。それと、知らせたいことがあったからよ」

「知らせたいこと?」


 シュナイゼルを追い出そうと伸ばした手を止めて、エリィの方を見る。エリィは、ベリアスに聞いてほしそうだったが、ベリアスはこっちを見もしていない。あきらめて、持ってきた大きなかばんを開けた。


「そうよ。これを見て」


 と言って取りだしたのは、少し古い装丁そうていの本だった。エリィは、開きぐせのついたページを開いた。そこには、勇者と魔王の戦いが描かれている。


「私、こんな風に、魔王と勇者の話を書きたいの。だから、此処に来たのよ」

「・・・つまり、俺たちのことを、本にしたいってこと?」

「そう。ね、素敵すてきでしょ」


 隣のベリアスに同意を求める。当然のごとく返事はないが、そこは予想済みだったのか、対して気にせず笑顔を向けている。


「そして、私の書いたその話は、いつか伝説と呼ばれるようになるのよ!」

「ふむ、それは面白そうだな」

「そうよね!」

「いや、全然面白くないから」

「そんなことないよ、勇者様。きっと愉しい話になると思うよ」

「お前は勝手に愉しんでるだけだろ!」






*********




 間抜まぬけにも記憶を奪われた勇者と、阿呆あほな思想を持った魔王。そして、性悪しょうわるなことしかしない魔法使いと、夢見がちなお嬢様じょうさま

 そんな俺たちの話が伝説になるのは、まだまだ先の話だ。



<完>



 初連載終わりました。内容としてはまだまだ続けられるんですが、とりあえず一旦終了します。


 気が向いたら、また続きを書く・・・かも?



 あ、人物紹介を最後に付けてますけど、意味はありません。


 一応作ったんで、投稿しておこうかな~って思っただけです。読まなくても全然OKです。




 次回作はまだ決めてないですので、とりあえず『只今、冒険活動中!』を進めて行こうかな、と思っています。


 よろしければそちらも読んでみてください。



 ここまで読んで下さり、本当にありがとうございます。


 感想等、ありましたら気軽にどうぞ。

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