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7、恋物語は長期戦

「こ、こんな……事がっ」


 瞬殺だった。

 ステイシーが圧倒的に不利だったはずなのに、場はいつの間にかステイシーに支配されていた。


「ふふ。では、お約束お守りくださいませね?」


 ステイシーは契約書をくるりと丸め、にこやかに笑う。


「こ、こんなのイカサマだっ!」


 ガーランド伯爵は負け惜しみのように叫んだが。


「あら、証拠は? まさかなんの確証もなくヘイリス公爵家を敵に回すおつもりで?」


 微笑むステイシーからは先程までの柔らかな雰囲気は一切感じられず、ぞっとするほどの威圧に背筋が凍る。

 そんなステイシーを見て彼らはたかが小娘と侮った相手が、とんでもない手練れであったのだとようやく認識した。


「ステイシー! やっと見つけた」


「あら、旦那さま。お仕事は終わられたのですか?」


「ああ、俺の方は問題なく。それよりも……だ」


 仕事を終えたクラヴィルはステイシーが連れて行かれたと部下から報告を聞き、急いで彼女の元にやって来たのだが。

 そこにいたのは上機嫌なステイシーとテーブルの上のトランプと死んだ顔をした男達だった。おそらく自分がそうされたように、彼らはステイシーによって完膚なきまでに叩きのめされたのだろうとクラヴィルは察する。


「妻の相手ご苦労だった。が、今後は発言に気をつけるといい。彼女は俺でも手を焼く、魅力的な女性だからな」


 次はない、と身も凍るような声音でクラヴィルはガーランド伯爵に釘を刺すと、


「いくぞ」


 呆然とする彼らを残し、ステイシーの手を取って優雅に会場を後にした。



「さすがにロイヤルストレートフラッシュはやり過ぎだろ」


 先程のカードを思い出し、くくっとクラヴィルは楽しげに喉を鳴らす。

 65万回に1回出る確率の手だ。どう考えても偶然ではない。

 ステイシーはイカサマの心得まであるらしい。


「感情任せなんて、君らしくないな」


「少々、腹が立ちましたので」


 少々どころではなさそうなステイシーの様子にクラヴィルは立ち止まりじっと栗色の瞳を覗く。

 全てを見透かしそうな濃紺の瞳の問いに耐えかねたステイシーは、


「だって! 旦那さまはちゃんとエルネア家に援助をしてくださいました!! 離れだってすごく快適だし、洋服もふかふかのベッドも食事だって、全部全部必要なものは揃えて頂いてますっ!!」


 腹が立った胸の内を叫ぶ。

 震える唇から紡がれる言葉は乱暴で、確かに怒っているのに、大きな瞳からは今にも涙が溢れ落ちそうだ。


「今日だって本当は女性が苦手なのに、会場までエスコートしてくれました」


「気づいてたのか」


「手、震えてます。今も」


 クラヴィルから手を離したステイシーはゴシゴシと雑に涙を拭う。


「あー腹立つ! なんっにも知らないくせにっ!!」


 とても淑女らしくない動作。

 だが、すごくステイシーらしいとクラヴィルは思う。


「関係ない人間はすっこんでろ、です。旦那さまの事、クズだダメだと罵っていいのは結婚した私だけですよ、これから先、ずっと!!」


 何も知らない人にクラヴィルを貶められたくない、とステイシーは憤る。

 荒らされるのはコメント欄だけで充分だ。


「……そっか」


 どうやらステイシーは自分のために戦ってくれたらしい、とクラヴィルは理解する。

 クズい、分かってないと普段散々ダメ出しされているのに。どうして彼女の言葉はこうも自分に響くのか。


『心を揺さぶられる相手に出会ったら手放しちゃダメですよ』


 ああ、コレか。とクラヴィルは急に腑に落ちる。

 そして、ステイシーが言うことは大体正しいと今のクラヴィルは知っている。


「なるほど、恋物語は長期戦だな」


 結婚初日に"愛さない宣言"をしてしまったし、ステイシーはそれを受け入れ喜んでいる。

 状況は既に最悪だ。


「え? もう出会ったんですか?」


 出会いイベント見逃したんだけど!? と涙が引っ込んだステイシーに、


「まぁ、先は長いから」


 と明日からの関係を思って、静かに微笑むクラヴィル。


「ステイシーは俺の恋物語とやらを楽しみたいんだろ。なら一番近くで鑑賞していればいい」


「まぁ、そのつもりですけど……?」


 なんだか、クラヴィルの雰囲気が変わったような? とステイシーは首を傾げたが。

 当て馬妻という名のただの読者だし、まっいっかとスルーしたステイシーは、


「あー怒ったらなんだかお腹が空きました! これはもう旦那さまに美味しいものでも奢って頂かなくては割に合いませんわ」


 美味しいお料理食べ損ねたので別途手当てを要求します! と話題を切り替える。


「それは残念だったな。今度いい店を調べておこう」


 そんないつも通りのステイシーを見ながら、妻になってくれたのが彼女で良かったとクラヴィルは心からそう思ったのだった。

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