スピーチ
僕は女性を見た。
水着を着た吉田玲子が海の浅瀬に立っていた。
「玲子?」
玲子は不思議そうにこちらを見ていた。
玲子が近寄ってきて、
「久しぶりだね」
「おう」
「横に座っていい?」
「うん」
玲子が僕の横に座った。
「久しぶり」
「うん」
僕の心臓は高鳴った。
僕も玲子の隣に座った。
僕は一瞬、沖縄の海の遠くの方を見た。
僕は玲子を見た。
水着を着た玲子はとても綺麗に見えた。
「誠二もここのホテルなの?」
「うん」
「私たちもこのホテルに泊まってるの」
「そうなんだ〜」
「旦那さんと私のお父さんとお母さんでホテルに泊まってる」
僕は玲子の口から旦那さんと言う言葉を聞いて戸惑った。
「誠二、彼女はいるの?」
「いるよ」
僕はとっさに嘘をついた。
「写真見せて」
僕はあわてて昔の彼女の写真を見せた。
玲子が
「かわいい人、職業は?」
「僕と同じ高校の先生、国語を教えてる」
「年齢は?」
「2コ下」
「31歳?」
「そのぐらい」
僕は冷や汗が出た。
去年別れたばかりだった。
「名前は?」
「山田里奈」
「かわいい名前」
「結婚は?」
「まだ考えてない」
「そっか〜」
玲子も海の遠くを眺めていた。
「玲子、旦那さんといつ知り合ったの?」
「5年前友達の紹介で」
「そうなんだ」
「職業は?」
「映像作家さん、テレビドラマの編集やってるの」
「そうなんだ、どんなドラマの編集してるの?」
「踊らない大捜査線とか」
僕は驚いた。
僕の好きなドラマだった。
「旦那さん、映画監督になりたいらしい」
「へ〜、玲子は美容師続けてるの?」
「うん」
「子供は?」
「まだ、いないよ」
「誠二、毎日楽しい?」
「何だよいきなり、そこそこ」
「玲子は?」
「楽しいよ」
玲子の顔が明るくなり、輝いて見えた。
辺りが少し暗くなってきた。
玲子が、
「もうホテルに帰るね、バイバイ明日ね」
「おう」
僕は薄暗くなる海の波を見ていた。
僕はホテルで夕食を食べすぐに部屋に戻った。
玲子の明るい笑顔を思い出した。
僕は眠りについた。
結婚式はホテルの1階のホールで行われた。
テーブルが5つほど別れていて、玲子の友人の席と旦那の拓哉さんの友人の席に別れていた。
僕はテーブルの料理を食べながら、玲子と拓哉さんが出てくるのを待った。
そして父親に手を引かれながら玲子がウェデングドレス姿で出てきた。
拓哉さんは席についていた。
玲子のウェデングドレス姿はとても輝き綺麗だった。
友人のスピーチが始まり僕の番が回ってきた。
「吉田玲子さんの幼なじみを代表してスピーチをしたいと思います」
「吉田玲子さんとは幼なじみで、小学校と中学校と高校の12年間一緒に過ごしました。元気で明るい女の子でした」
「吉田玲子さんは美容師の専門学校を卒業され、立派な美容師になりました」
「そんな幼なじみが33才になり、沢山の人に祝福されて結婚します」
「吉田玲子さん、山下拓哉さん末長く幸せになられますように」
「ご結婚おめでとうございます」
僕の心の中に切なさと喜びが湧いて出てきた。
僕は泣いていた。
「もう一回言わせて下さい。ご結婚おめでとうございます」




