黒いチューリップ
生ぬるい沈黙が訪れる。そのまま目を瞑れば、底なし沼に沈んでしまいそうな恐怖を感じながら。
女は狂ったように笑うばかりで、大した会話も出来そうにない。
「……何が言いたい」
思わずそう呟くと、意外にも笑うのをピタリとやめて、
「あなたたちは『使われた』のよ、フォニックスを『生き残らせる』ためにね」
「……は?」
この頃消えていた感情が沸々と湧き戻る。なんだこれ。
「あなたたち、考えた事なかったの?
なぜ、よりにもよってあなたたちが不幸を延々と見に受けることになったのか」
「何が言いたい」
「だって、あなたたちが不幸にならなきゃ、いまのフォニックスはないもの。
ムルル君、あなたがいなきゃ、フォニックス、特にライトだっけ?は強くなってないわ。
ギルドさん、あなたがいなきゃフォニックスたちは出会うこともなく、それぞれが勝手に不幸になってたわ。
この物語は」
女は急に話すのをやめ、倒れ込んだ。
分からない、分からない……。
……僕は、一体どうすれば良かったんだろう。
何の為に生まれて来て、不幸になって、……。
もう、終わったことだと、割り切りたかったのに。
どうして……こんなに涙が溢れて来るんだろう。
集めて来た『想いの記憶』が、どんどん一点に吸い込まれていくのが見える。僕はそれをぼんやりと見るだけだけど。
もう立ち上がりたくない。ましてや何かしたいとも思わない。
ただ……もう溶けちゃえ。僕が生きた証ごと。
僕を覚えてる人がいて、悲しんでいるなら、申し訳……ないな。
どうか……忘れて欲しい。
僕が最期に見たものは……何よりも明るく、目を閉じても消えないような……そんな、光でした。




