それでも守るというのなら
遥か、気の遠くなるような距離を歩いて。
遥か、昼と夜の境のない日々を過ごして。
遥か、過去の記憶も、消えてしまうんだ、いつか。
ある日。女は足を止めて振り返る。
「どうした」
「……『方舟』が来るわ。隠れましょう」
よく分からなかったが、女の様子に違和感を感じ、三人で茂みに隠れた。
無言で待っていると、何もない所から『舟』が現れる。地面を悠々と進むその中に、多くの“想いの記憶”があるのを感じた。
「……あれは」
「私たちの企みを知って、なるべく多くの“想いの記憶”を集めておこうと、奴が差し向けた部下がいるみたい。……気配でバレないと良いけど」
僕たちの会話を、ギルド様は黙って聞いていた。
舟はゆっくりゆっくり進んでいき、僕たちの視界から消えた。
「ちなみに、その部下ってのはどのくらい強いの?」
僕がそう尋ねると、女の表情が曇った。
「強い弱いの話じゃないわ。あの舟はたった一人が動かしているのだけれど、彼は……生身の人間よ」
「でも、別に攻撃できない訳じゃないだろ」
「『ただの人』ならまだ良かったかもね。彼は私たちのようなのを倒す専門家よ。バスターを前にした蜂も同然。何もさせて貰えないでしょうね」
「じゃあ、僕たちを泳がせておくのは」
「いくら逃げながら“想いの記憶”集めたとしても、最終的な目的地は時の館。待ってても来てくれるって分かってるからでしょうね」
「でも、それだと違和感がある。わざわざ“想いの記憶”を集めて妨害する理由がない」
「おそらく向こうにもタイムリミットがあって、急かそうとしてる、とか」
「何のために」
「確かに」
「一個聞いて良いか」
「良いけど」
「お前、本当はどっち側なんだ」
「……それはどういう意味」
「もう分かってるだろ。お前は、時の館の味方なのか、僕たちの味方なのかって意味だ」
「どうして疑うの」
「“想いの記憶”を集めれば、向こうの世界への“扉”を開くことができる。そうだろ」
「まぁそうね」
「お前の目的は、時の館を主人ごと向こうの世界に送って、主人の力を取り戻させることじゃないのか」
「酷いわね。そんな訳ないじゃない。信じられないなら、私に協力しなければ良い話よ」
その時、ギルド様が女の首にナイフを近付ける。
「私は、彼らが助かる方向に賭ける。それだけです」
女は少しの間の後、
「君たちの目的はそうだろうね。だったら……尚更、あの方の復活を助けた方が良いと思うわ」
「……どういう意味だ」
女の雰囲気が、一層不気味に感じられた。




