異分子
「なにそれ。じゃあここで旅終わりにすれば良いじゃん」
女は目を伏せる。
「ごめんなさい。つい」
意味が分からないというか……言っている事が支離滅裂だ。
「あんた、一体何者なの」
「……私は、やらなきゃ行けないの」
女の雰囲気が変わった。
今の彼女はずっとガラス張りの棚に入れられている西洋人形みたいだ。
「この物語を守らないと。守る……守る」
「良い加減にしてよ。話も出来ないじゃないか」
女の雰囲気が急に戻る。
「おかしいわ、記憶が飛んだみたい」
「本当かよ」
目の前で起こった不可思議を、すぐに信じる気にはなれない。かと言って、女との旅を終わらせたい訳じゃない。
実際、僕は生前何も出来なかった。ただの傀儡だった。
力を奪われ、家族を奪われ、仲間を奪われ。果ては、人間としての尊厳まで奪われてしまった気がする。
「……早く行こう」
女は数秒固まったが、「ええ」と短く応えた。
そこからは、生きていた時より遥かにやりがいのある戦いばかりだった。
それだけで、多分良かったんだ。
だって、あんな事に気づいちゃうなんて、思っても見なかったのだから。
「なんだか、強い強い想いの記憶がいるわ。大変だけど、倒せれば大きな一歩になるわ」
「ああ」
と行ったは良いが、そこには見慣れた姿があった。
「えっと……ギルド、様?」
いつもの格好をしながらも、何処か遠くを眺めていたその人はこちらを向く。
「ムルル、さん?」
「知り合い?」
「……まぁ、そんな感じ」
ギルド様は立ち上がる。
「私、一体全体、何がしたかったんでしょうね。どうか、殺して下さい。もう忘れたいです。何もかも」
その時、僕がライトさんに放った身勝手すぎる言葉を思い出した。
『どっちなんだよ!殺すなら殺せよ!
そんな生半可な優しさ、戦士なら捨ててしまえ!
もう終わりにしたいんだよ!終わらせてよ!ねぇ!』
ギルド様は、憔悴しきった様子だった。
「……フォニックスは、僕にとって光でした」
ギルド様はフォニックスという単語に反応した。
「でも、その光を曇らせたのも、僕自身です。
ギルド様、あなたは僕なんかに殺されて良い人じゃない。自分で何かを成す人だ」
「ご評価ありがとうございます。
しかし、私がここまでやれたのは全てストキの権力があったからです。
それに、死人に何が出来ると言うのですか?」
女はギルド様に近付き、耳打ちする。
「……分かりました。今の私は非力ですが、目のストック二つ分としてお使い下さい」
なんて言ったのか、ちゃんと聞いておけば良かった。




