嫌いだよ
僕はそいつに向かって兄ちゃんのように百鬼夜行を放った。
そいつはまるで、指でつつかれたシャボン玉のように。最も簡単に弾けて消えた。
「これでいいの」
「あれが想いの記憶」
見ると、そいつのいた場所に小石が落ちていた。
「綺麗な宝石とかじゃないんだね」
「そりゃそうよ。ここにいる人の記憶なんて、ドロドロしてるわ」
「本当にこれを集めるだけでいいの」
「ええ。ありがとう。でも、ちょっと覚悟しておいてね」
と言われるや否や、左目の視界が消えた。かと思うと、全く違う景色が映し出される。
「見えたかしら。そうやって、その人の記憶を見ないといけないの」
「結構不便だな」
「まぁね。だから一人じゃ無理なの」
左目を瞑りながら歩くと、やはり不便だ。
「このままじゃ危ないでしょ」
と、女が僕の左手を掴む。どうやら手を繋いで歩いているらしい。
「こうやれば、二人までなら同時に倒せるでしょ」
「もっと仲間を増やせばいいのに」
「ムルル君みたいな人、そうそういないの」
「なんだそれ。一体僕に何があるんだ」
「あるじゃない。時の館の主人との繋がりが」
「倒されたり殺されたりすれば、力は失うけど」
「大事なのはそこじゃないわ。あなたは時の館の主人と話したことがある。
さらには、時の旅人とも」
「時の旅人って」
「知らないの。多分、向こうにいる人の中で一番時の館の主人の影響を受けてる人よ。生きてるうちに上手く会えなかったし、こっちにいる方も近付くことさえ出来なかった」
「強いってこと」
「違うわ。時の館の主人のガードが硬くてね。やっぱりこの世界を警戒してるみたい」
「自分のいる世界だろ」
「あの人もここにいたくている訳じゃない。繋ぎ止められてるのよ」
「変なの」
「そうかもね。でも、あの人は力を持ちすぎた。事実、自分が動けなくても魂を分離させた分身や洗脳した部下たちを動かせてる。あなたも会ったはずよ」
「まぁね」
「あの人の目的は知らないけど、この世界を壊そうとしてることは確かよ」
「そう。全然そんな感じしないけど。今だって、どこへ行っても果てが無さそうだ」
「何にでも限りはあるの。例え誰もそれを立証したことがなくても」
「論理が破綻してるだろ」
「そう思えたら、ああはならなかったわ。ごめんなさい、つい思い出しちゃった」
「意味がわからない。わざとだろ」
「……ムルル君みたいな子にこんなことを言うなんて、大人気ないし、バカっぽいけど。ムルル君のそう言う一々鋭い所、私……嫌いだよ」




