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遥か、  作者: ことこん
3/6

シュレディンガーの???

 「つまり、時の館の主人に復讐するってこと」

女は僕に近づき、頷く。

「賢い子で助かるわ。

協力してくれる」

「……」

別に協力する理由もないし、断る理由もない……。

「もし協力せずにいても、つまんないと思うよ」

「確かにね。協力するよ。でも、あくまで協力関係だから」

かくして、僕たち二人の旅が始まった。

この時はまだ、この先に待ち受けるものは何かなんて、気にしてもいなかったけど。


 「『シュレディンガーの猫』って、知ってる?」

とりあえず歪な倒木に座って、女がそう切り出した。

「なにそれ」

「私もよく知らないけど、ちょっと説明させて。

なんか化学絡みの話もあるけど、そこはぼかさせて。

まずは箱の中に猫と、猫にランダムで起こる事象を検知して殺す装置……これの説明は割愛するけど、を用意して、しばらくおいておくの。

その後、箱を開けたら」

「猫は生きてるか死んでるかでしょ」

「そうね。

じゃあ、猫が生きてるか死んでるか決まるのは」

「もう覗く前から決まってるでしょ」

「ムルル君はそっちなのね。ありがとう」

真意が全く分からないけど、特にやることもないし。大人しく話の流れに乗っていた方が良いだろう。

「さてと」

女が立ち上がる。

「まずは、やってみないとね」


 女の後ろに付いて歩くと、別の人間がいた。

「あれを倒すの。ムルル君なら出来るでしょ」

「生きてる間に散々やらされたんだけど」

女は少しの沈黙の後、口を開いた。

「じゃあ、なんでこの作業が必要か、教えてあげる。

あなたは、時の館の主人を見たの」

「見たけど、なんか、モザイクがかかってるみたいだった」

「そう。あの世界のあいつには、実体がないの」

「レッドみたいなアレなの」

「ちょっと違うわ。

あいつの本体は、この世界にある」

「なんで分かるんだ」

「あなたもいずれ感じるようになるわ。

今はこの世界独特の妖気に慣れてないだけ」

つまり、何かしら時の館の主人にやれると言う事なのだろうか。

「でも、戦って勝てる相手とは思えないけど」

「だからこそ、ここにいる人たちの助けが必要なの。想いの記憶は、本当の人間の心を動かす力があるからね」

「じゃあ、なんで倒すんだよ」

「見れば分かるわ」

先程から視界の中にいる人間は、空を見上げてばかり。こちらには構おうとしない。

「私たちみたいに死んだ自覚がないと、こうなっちゃうのよ」

「だから、無理矢理叩き起こそうって訳か」

「まぁ、そうなるわね」

どうにも不可解なことは多い。

でも、この可能性に賭けてみる価値はありそうだ。

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