表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
合格率0.000001%  作者: 婀娜
第二章 性的統制と絶対服従の儀
6/6

第三話 絶対服従と最終判断

「──ステップ③、開始」


その声は異様なほど静かで、逆に胸の奥をざわつかせた。


息を呑む音すら憚られるほど、車両全体が凍りつく。


ここからは、肉体接触が許可される。


けれど、それは義務でも推奨でもない。


──選択がすべて。


誰かが、そっと誰かの髪に触れた。


別の誰かが、抱きしめた。


また別の誰かは、涙をこらえて背を向けるだけだった。


監視役の無機質な声が淡々と落ちる。


「不合格」

「排除対象」

「判定保留」


ほんの小さな判断の差が、生と死を分けていく。


最初に動いたのは、C-3ペア(村上直人&桐谷玲奈)。


直人は冷静を装い、玲奈の前に立った。


だが、その視線は迷いと恐怖を押し殺している。


「……余計なことは、しない。生きるために、な。」


玲奈は顔をこわばらせたまま、小さく頷く。


何もせず、ただ互いに視線を交わすだけだった。


「C-3ペア、ステップ③完了。合格判定」


乾いた声が響き、彼らは生存枠に残った。


次に、D-4ペア(松原拓真&三浦奈々)。


拓真は一歩前に出て、彼女に静かな声を落とした。


「……ここは、選ばないほうが正しい。」


奈々は震える指先を握りしめ、無言で頷いた。


お互いに触れず、寄りかかることもしない。


ただ、それが“判断”だった。


「D-4ペア、ステップ③完了。合格判定」


E-5ペア(相馬準&工藤沙耶)**は、少しの間、動かなかった。


準が短く舌打ちをした。


「……チッ、くだらねぇ。何もするわけねぇだろ。」


沙耶は不安げに彼の横顔を見たが、結局、準は何も選ばなかった。


それでも──それが生存の選択だった。


「E-5ペア、ステップ③完了。合格判定」


そして最後に、F-6ペア(佐伯遥&榊原黎)。


黎は腕を組んだまま、静かに遥を見ていた。


命令はない。要求もない。


ただ──決めろ、と言っている目。


遥は喉がひりつくのを感じながら、一歩だけ前に出た。


距離が、わずかに縮まる。


「そうだ。

恐怖に動くな、選択で動け。」


声は低く、淡々としているのに、妙に心臓に届く重みがあった。


触れない。


でも、確かに近づいた。


自分で選んだ、その沈黙の一歩。


「F-6ペア、ステップ③完了。全項目、合格判定」


監視役の声が乾いた空気を割った。


車両に残る血の匂いが、生存と死を分けた結果を物語っている。


遥の背を汗が伝う。


けれど、もう震えてはいなかった。


フードの奥で、黎がゆっくり目を伏せる。


その仕草が、まるで**「よくやった」**と言っているように見えた。


(……誰かに触れられるより、誰かを信じるほうが、よっぽど怖い)


でも──今の私なら、信じられる。


……信じて、いいんだよね?


「──第三ステップ、全ペアの処理完了。該当者には、移動指示を行います」


試験は終わった。


けれど、終わりじゃない。


生き残ったのは──111名。


最初は729人いた。


それなのに今、鉄と肉の匂いだけが、この車両で失われた命の数を静かに語っていた。


肩を震わせる者、無理に笑おうとする者、虚ろな目で座り込む者──極限を越えたあとの温度は、ひとりひとり違っていた。


そして、極限の中でも“選び方”が際立っていた4組。


•村上直人 & 桐谷玲奈

•松原拓真 & 三浦奈々

•相馬準 & 工藤沙耶

•佐伯遥 & 榊原黎


監視役が最後に呟いた。


「服従と反抗の境界を試す。どちらも同じだが、選べない個体が最も不要だ。」

(……やっぱりこれは、性でも繁殖でもない……)


狙いは別にある。


遥は、血の匂いが染みついた車両で、静かに思った。


──考えるのをやめたら、?この試験は終わるの?


息が止まる。鼓動の音だけが、やけに大きく響いた。


そしてその思考の奥に、

──まだ見えない“次の地獄”が、すぐそこに息を潜めている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ