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合格率0.000001%  作者: 婀娜
第二章 性的統制と絶対服従の儀
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第一話 再試験と沈黙のルール

列車は止まっていた。


鉄と血の匂いが充満した、静寂の鉄の箱。


裂けたままの座席。床に転がる断ち切られた指。


乾いた血がもう黒ずみはじめているのに、その匂いだけは生々しかった。


誰も席を立たなかった。


生き残ったはずの全員が──何も言えず、何もできず、ただ呼吸を細くしていた。


遥は、自分の手がまだ震えているのを感じていた。


でも、理由がわからない。


「なぜ生き残ったのか」さえ、まだ理解できていない。


──ピ、ピッ。


スピーカーが、不意に鳴った。


乾いた金属音。無機質な声が、車内を切り裂く。


「これより、第二次試験を開始します」


その声は機械のように冷たかった。


……けど、一瞬だけ微かに“息づかい”が混ざった気がした。


(……今、笑った……?)


ぞわりと背筋が粟立つ。


監視カメラの赤いランプが、まばたきしたように見えた。


背後の黒服のひとりが、息を呑んだ参加者たちを見渡し──「……面白い」

と、低く呟いたのが確かに聞こえた。


息が詰まる。


ここには、ただ“監視するだけじゃない何か”がいる。

黒服が感情のない声で告げる


……静寂。


「──パートナーの乳首を、勃起させてください」


…………は?


誰も声を出さない。


空気が、さらに冷たく沈む。


(なに……今、なんて言った?)


遥は思わず周囲を見渡した。


誰もが目を伏せ、息を詰めている。


笑う人もいない。──ここでは冗談なんて存在しない。


「本試験は、男女ペアで実施されます。以下のルールを厳守してください。」

• ステップ①:相手の了承を得ずに触れた場合、即時排除

• ステップ②:指示されたステップを破った場合、即時排除

• ステップ③:ステップ③までは肉体接触を禁止

「なお、“排除”とは失格および処分を意味します」


──処分。


その言葉に、全員の背筋がひやりと凍った。


──“強制措置”。


第一次試験で、それが何を意味するかは全員知っている。


次の瞬間、ペア発表が始まった。


•A-1:金子大地 & 森下彩花

→「おい、マジでやんのか?」根性論の大地。彩花は小さく震えていた。

•B-2:吉岡俊 & 高田美咲

→焦って場を乱す俊。「やめろよ…」と言いかけて黙る美咲。

•C-3:村上直人 & 桐谷玲奈

→「効率的に済ませよう」と無理に落ち着く直人。玲奈は顔をこわばらせたまま俯いた。

•D-4:松原拓真 & 三浦奈々

→冷静な分析を口にする拓真に、奈々は無言で頷いた。

•E-5:相馬準 & 工藤沙耶

→短絡的に舌打ちする準。沙耶は不安げに眉を寄せていた。

そして、最後に呼ばれた名前。

「F-6:佐伯遥、榊原黎」

びくり、と背筋が震える。


呼ばれたのは、わたし。


隣に座るのは──


フードの奥で顔を隠し、腕を組んだままの青年。


下を向いたまま、微動だにしない。


でも、その沈黙には抑制された意志のようなものがあった。


(この人が……わたしのペア?)


フードの縁からのぞいた顎には、かすかに古い傷があった。


誰にも気づかれたくないのに、隠しきれない過去がにじんでる──そんな印象。


目は見えないのに、視線だけは“そこにある”と感じるのが怖かった。


一瞬、息を吐くような安堵が車両の空気に広がる。


でも、それはすぐに破られた。


次の瞬間、別の車両から怒声。


「ふざけんな!変態みたいな試験、やってられるか!」


女性の悲鳴。


──パシュッ。


刃物が空気を裂くような、乾いた音。


叫んだ男の首が傾く。


抱きすくめられていた女の胸元にも赤い線が走り、ふたりは同時に崩れ落ちた。


金属の焦げる匂いが混ざる。


消えた跡が、触れた部分だけ不自然に切り抜かれている。


「ルール違反に対する排除措置です。止められなかったペア相手も、排除対象となります」


血が床に広がる。淡々とした声。


全員、息を呑んだ。


遥の隣で、黎がゆっくり顔を上げた。


フードの影からのぞく瞳は──冷たく、鋭い。


低い声が、すぐ耳元に届いた。


「……生きたいなら、“考えて”動け」


その声は、怒りでも命令でもなかった。


ただ、冷静だった。


(考えて……?)


「全ペア、ステップ①、開始」


ざわつきが走る。


服をめくる音。小さな悲鳴。笑い声。


動く者。迷う者。黙る者。


でも──黎は動かない。


微動だにせず、目線だけで状況を見ている。


遥は、迷った。


何をすれば正しい?


何もしないのが正しい?


でも、何もしなかったら終わるのか?


心臓が速くなる。視線が交錯する。


触れない。でも、見る。


それしか、選べなかった。


遥は、黎の胸元に視線を落とす。


指先ひとつ、動かさずに。


彼が、わずかに頷いた。


それだけで、なぜか通じた気がした。


「F-6ペア、ステップ①、完了と判定」


……え?


触れてない。何もしてない。


なのに、完了?


なんで……なんで?


遥は、反射的に隣を見た。


黎は目を閉じ、息をひとつ吐いただけだった。


まるで、**“それでいい”**とでも言うように。


(これが……正解?

でも……どうして?)


「正しい選択をしたのか」もわからないまま、


ただ、生き残った事実だけがそこにあった。


胸の奥がざわついた。


この試験は“正解を探す”ものじゃない──そう気づきかけたとき。


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