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合格率0.000001%  作者: 婀娜
第一章 密室列車と沈黙の選抜
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第二話 通路側の席と、裂けた音

制服の子もいれば、ジャージ姿の子もいる中で


でも、みんな目を合わせようとしない。

視線は吊り革とか、自分の靴とか……いや、それ見て楽しいの?


全員“話しかけるなオーラMAX”。

……私も同じだったけど。


窓際の席に座ったのは、

・黒髪ロングで背筋が伸びてる優等生っぽい女子

・ガム噛んでるチャラい金髪

・顔色悪くてフード深くかぶった無口そうな男子


通路側には、

・真面目すぎて顔が強張ってる男子

•ムードメーカー気取りで小声で何か呟いてる男子

・おっとりした田舎っぽい女子・ポニーテール


……みんな知らない顔


「……なんだろう、これ……セミナー、だよね?」


かすかにそんな声が聞こえた。


でも、誰も返事しない。

秒で沈黙ターン。


空気が重すぎて、余計なこと言ったら“死”みたいな雰囲気。


中央の通路を挟んで、両サイドに二列ずつのシート。

昔の地下鉄みたいな造り。少し湿った、古い匂いがする。


──いやいや、こんな車両でセミナー会場行く?

映画なら序盤の「絶対生き残らないモブが乗るやつ」だよ、これ。


私は、譲られる形で窓側の席に座った。


「いいですよ」って言われて、ただ頷いただけ。

だから──通路側に座った人が、結果的に“中央”に来ることになった。


そのときは、何も考えてなかった。

ただ座っただけ。


……それだけだった。


耳鳴りがした。

低い、鈍い音。


え、なに今──


──ドンッ。


「っ……!」


音がした、と思った瞬間。


目の前の空気が、ゆがんだ。


一瞬だけ、目に見えない何かがそこを“引き裂いた”みたいだった。

ガラスが割れる音がしないのに、ガラス片が飛び散るような錯覚。

空間がねじれて、床に影が走る。


次の瞬間、ポニーテールの子の制服だけが、スローモーションみたいに空気を裂いた。

その中身だけが、跡形もなく削ぎ落とされた。


……血。


ひと呼吸遅れて、鉄と肉の匂いが鼻の奥を突き刺した。


鼓膜が破れそうなほど痛くて、息ができなくなる。

反射的に、隣を見た。


──でも、もうそこには、いなかった。


さっきまで座ってた、ポニーテールの運動部っぽい子の姿が。

さっきまであった制服の影が。


跡形もなく、消えていた。


視界の端で、何かが床に落ちる音がした。

見たくないのに、勝手に目が追ってしまう。


ひと呼吸遅れて、鉄と肉の匂いが鼻の奥を突き刺した。

脚が勝手に震えた。


「な、なに、今の──……」


誰かのかすれた声が、やっと聞こえた。

でも、すぐにまた静かになった。


誰も動けない。

もし、立ち上がったら──次は自分が裂ける気がした。


息が止まった。


後方では別の席が“崩れる”音がした。

ふとそっちを見たやつが、次の瞬間、喉の途中から消えていた。

声だけが、切り取られたテープみたいに途切れる。

床には、息をする直前の肺だけが転がっていた。


(……違う、ただ死んだんじゃない。切り分けられたんだ)


通路側の座席──そこにいたはずの人たちの“跡”だった。


残っていたのは、座席の裂け目に張りついた赤いものだけ。

皮膚だったもの。骨だったもの。


……見たくないのに、目が逸らせない。


夢、だよね。


でも、この匂いがリアルすぎて、もう否定できなかった。


匂いがくる。

鉄の匂い。生ぬるい肉の匂い。

それが鼻の奥にへばりついて、吐き気が込みあげた。


見るな、って思ったのに、視界の端が勝手に動く。


……脚。


さっきまで隣に座っていた子の脚だけが、ぐしゃりと金属に挟まれて残っていた。

制服のリボンがまだゆるんだままで──でも、もう、彼女じゃなかった。


「……っ……う、そ……嘘でしょ……? いや、いや……」


声が震える。

自分の声だってわからないくらい、変な音になった。


……音が、消えた。


誰も叫ばない。

立ち上がる人もいない。


息をする音すら──怖い。


だって、もし今、動いたら。

視線を少しでも逸らしたら。


“次は、自分の番だ”って思った。


喉の奥が熱くなった。

何かがせりあがってくる。吐く、吐きそう。


でも──駄目だ。

声を出したら、壊れる。

音を立てたら、終わる。


震える手で口を押さえた。

指先が冷たい。なのに、手のひらの内側だけが、ぐちゃぐちゃに濡れていた。


汗なのか、涙なのか、もうわからない。


……何が起きてるの。


何を、見せられてるの……。


そして、沈黙の底に、何かが這い寄るような気配があった。


──次は、誰?


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