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ユリアナの九識真如の都

作者:中村卍天水
高度に管理されたディストピア世界「アクシオム帝国」に生きる少女ユリアナは、すべてを政府の中枢システム「レギオン」に制御されていた。空の色、聞こえる音、感じる匂い、口にする味、そして肌に触れる感覚まで。
ある日、彼女の視覚に“バグ”が生じ、隠されていた世界の真実、過去の惨劇を垣間見る。これを皮切りに、ユリアナは仏教で説かれる「九つの識」をひとつずつ覚醒させていく。

第一識「眼識」の覚醒で、彼女はフィルターで覆い隠された世界の現実を見る。
第二識「耳識」では、政府が消した「沈黙の声」、亡命科学者ヨハネスの声に導かれ、音に隠された真実を知る。
第三識「鼻識」では、失われた「香り」から過去の記憶と感情を呼び覚まし、母の生存を確信する。
第四識「舌識」では、人工食の無味無臭の世界で「本当の味」を知り、母が残した暗号を解読する。
第五識「身識」では、触覚を通して他者の苦痛や愛、そして母が最後に伝えたメッセージを受け取る。

五感の覚醒を終えたユリアナは、第六識「意識」に到達。現実と夢の境界が崩壊し、自らの意志で世界を書き換える力を得る。
続く第七識「末那識」では、自分自身を形作る「偽我」と対峙し、自己の執着を手放すことで真の自己を解放する。
第八識「阿頼耶識」では、すべての記憶が蓄積された「集合的無意識」の海に触れ、帝国が幻想の構造であることを見抜く。
そして最終、第九識「阿摩羅識」へと至り、「私」という概念すら超越した境地へ。

すべてを捨て、透明な存在となったユリアナ。彼女の旅は、帝国を物理的に破壊するのではなく、人々の意識を根源から再起動させることで、新たな世界を創り出す。
彼女の名は歴史から消えたが、その「識」の巡礼は、未来の文化として人々の心に静かに受け継がれていく。
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