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創造神と愉快な仲間たち  作者: 川森 朱琳
第四章 もう一つの神界〜ラボ〜
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第六話 共存エリア〜巨大魚戦②


 エンゼスの視界が真っ暗になり何も見えなくなる。すると、ふわっと浮遊感がした後、何処かに吸い込まれる様な感じがした。


『…ここは…っ!!マズイ!』


 そう言うと、エンゼスは意識を二レスから切り離し自分の体に戻した。


『危なかった…』



 二レスは敗北した。

 そして例の如く黒い穴に吸い込まれ、体がエンタワー内にある「処理室」へと送られたのだ。






 二レスの最後の一撃は、最大級の雷を巨大魚に落とすというものだった。


 水中を縦横無尽に動き回れる魚に対して、人型である二レスは圧倒的に不利だった。ましてや相手の数は数万にも及ぶ。


 一体一体が硬い表面に覆われ、それ等数万もの個体の統率された素早い動き、物理攻撃をすればダメージは与えられるものの、抉っても抉っても核(心臓)は見えない。


 二レスは風で渦を作り、巨大魚そのものを閉じ込め海上へ巻き上げ雷を直撃させるという戦法に出た。

 一撃必殺にならずとも、感電させ動きを止める事で核を探し出す時間は稼げる。自分が動ければいい。


 計算上は二レスが勝つ筈だった。

 しかし結果は敗北。


 その敗因は…


 二レスは雷を落とす直前、自身の体に防電膜を張り、更に雷が海中に入る前に海底の砂の中に退避する。それでも二レスの最大級の雷の威力は凄まじく、無傷ではいられない事は明らか。それも計算の上で勝算があった。


 ただ、予想外に巨大魚の核とも言える一体が、雷が落ちる直前海底の砂の中を高速で移動し、何と二レスの足元から体を貫いたのだ。


 二レスの核である心臓への直撃は免れたものの、二レスの心臓は鋭い鰭で切られ傷を負い、更に防電膜にも亀裂が入った事で雷の電流を幾らか体内に取り込んでしまい、二レスも感電してしまったのだ。


 即死にはならなかったが、暫く感電状態で二レスは動けずその隙に、先に動き出した巨大魚の核が二レスにとどめを刺した。


 こうして二レスは敗北したのだ。



『二レスの奴…詰めが甘いんだよ!クソッ!』



 エンゼスは二レスの体内に入り、耐えがたい痛みを味わったにも関わらず敗北した事に殊更ご立腹だった。その腹立たしい感情の中に「悔しさ」が少なからずあったものの、それは自分なら簡単に倒せたのにという思いからで、二レスの事を思ってのものではなかった。


 しかし、逆にその「悔しさ」が「壊れない二レス」を製造する気持ちに拍車を掛けた。


 そして「壊れない二レス」とは、エンゼスにとって自分の分身の様なものに置き換えられた。

 自分の思う様に動き、痛みも二レスが請け負う。自分が受けた痛みを二レスも味わえ…そんな気持ちだった。



『…ほぉ?何やら面白そうな事してたみたいだね、エンゼス。』


『…っ!?パパ!!』


『どうやら「壊れない二レス」を作る気になったみたいだね。』


『ハハ…そうだね。パパもさっきの二レスの戦闘見てたんでしょ?…アイツ詰めが甘いんだよね。でも、勝てない相手じゃなかったのに、何が足りなかったのかな…』


『…そうだね…やっぱり計算だけじゃ不測の事態に対応する能力に限界があるのかも知れないね。』


『不測の事態?』


『そう。不測の事態………計算はあくまでこれまでの経験を基に分析して最適解を出す。けれど、不測の事態…急を要する場面、しかも瞬時に判断しなければならない場合では、計算するより体が勝手に反応する…「勘」って言うのかな。それが生死を分ける行動に繋がる。

 …但し、その「勘」は意思を持つ者にしか備わらないんだけどね。』


『じゃあ、パパが言うその「勘」ってやつが二レスにあればさっきの戦いは勝ってたって事?』


『う~ん…絶対とは言えないけど、何かしらの対処は出来たかもね。』


『…くそっ!二レスに「勘」があれば、僕の痛みも無駄にならなかったのに!ホント役立たずだな!』


『エンゼス。それは仕方ないよ。このラボには私とエンゼス以外「意思」を持つ者はいないから、当然二レスにも備わってない。だから二レスが悪いんじゃなくて、たまたま今回の相手が二レスを上回ってた…それだけの事だよ。』


『それはそうかも知れないけど…僕、すっごく痛かったんだよ!それなのに負けちゃうなんてただの打たれ損じゃん!…まあ、実際の体は何ともないけどさ…』


『それは辛かったね。でも初めて「痛み」を味わう事が出来たんだろう?ある意味良かったんじゃないの?また一つ「初めて」を経験したんだから。エンゼス、最近退屈してたんでしょ?いい退屈凌ぎになったじゃないか。』


『退屈ではあったけど、痛いのは嫌だよぉ。』


『そお?残念ながら私はまだ「痛み」を感じた事ないから、エンゼスは私より先に「痛み」を経験したんだよ。今回は先を越されてしまったなぁ。』


『えっ!パパはまだ「痛み」を知らないの?ホントに!やった~!パパが知らない事、僕が先に知るなんて初めてだね!!そっかぁ…パパでも知らないのかぁ…なら、今回は大目に見てやるか!

 …そうだ、パパ。「意思」ってどうやって持たすの?そもそも、このラボで「意思」を持たせていいの?前に、ここは完全に管理された場所でなければならないって言ってたよね?』



『…そうだねぇ…ここにいる者達に「意思」を持たせたら、ラボは機能しなくなるだろうね。』


『…?どうして機能しなくなるの?』


『だって、エンゼス、考えてもご覧よ。其方はさっき「痛み」をとても嫌がってただろう?その「痛み」をここにいる者達皆が感じてごらん。どうなると思う?』


『……………痛がって…嫌がる…?』


『そう。痛いのは嫌だよね。でも、今いるラボの製造物達には「意思」がない。そして「感情」もない。だから「痛い」も「嫌」もない。そのお陰で様々な実験が出来る………ラボが機能しなくなる事は、私の目的を害する事になる…私はそれを望まない…


 ……………私が言いたい事は分かるかい?』


『…うん。分かる……じゃあ、二レスに「意思」を持たすのは…ダメって…事だよ…ね…』


『……………なら、条件を出そう。

 二レスに「意思」を持たせてもいい。但し…一からエンゼス、其方が育てなさい。そして、ラボの今の状態を維持させる事。又、二レス以外に「意思」を持たせない。それが条件だ。どお?出来る?』


『出来る!やるよ、僕!!』


『なら…やってみるかい?』


『わーい!ありがとう、パパ!!』


『…エンゼス。もし…ラボを壊す様な事態になったら…』


『…っ!?だ、大丈夫だよ!絶対そんな事にはならないから!万が一二レスが暴走する様な事になったら…僕が…後始末…するから…』


『……そう…じゃあ、任せるよ。

 私はそろそろあちらへ戻るから…しっかり二レスを育てるんだよ。また様子を見に来るから。』


『分かったよ。次パパが来る時には、壊れない二レスを見せられる様に頑張るね!』


『……エンゼス、一つアドバイス。知識と経験、どちらも大切だという事を忘れないで。』


『知識と経験…どちらも…?』


『そう。経験は時に知識を上回る事もあるけど、知識があればより高いところでその経験が活かされる。

 それと……二レスを自分のコピーとしてではなく、「二レス」として育てる事…それが「意思」を持つ事であり、二レスの能力を最大限に活かす近道でもある。


 それじゃあ、頑張って。次に来る時を楽しみにしてるよ。』



 そう言って、アンゼスはその場を後にした。



『……………育てるって……どうやればいいの?』



 アンゼスが良かれと思ってしたアドバイスは、初心者のエンゼスには難し過ぎたようだ。


 頭の中が?でいっぱいのエンゼス。

 これからエンゼスの初めての育児?が始まるのであった。



冒頭辺りの「製造室」→「処理室」に変更しました。

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