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創造神と愉快な仲間たち  作者: 川森 朱琳
第四章 もう一つの神界〜ラボ〜
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第五話 共存エリア〜巨大魚戦①


 その頃エンタワーの上空…

 雲海の端に胡坐をかいて座るエンゼスは、ここでずっと共存エリアの様子を見ていた。


 お気に入りの猫の仮面を外し、皿に乗せた鮮やかな黄色の果実を手に取り一齧りする。

 サクっと音を立て、口の中に刺激的な酸味が広がり喉の奥がキュッと締まる。



『…っち!二レスの奴、またダメか!!』



 先程の人型男性体は「二レス」。以前、アンゼスに壊れない二レスを造ったらどうかと言われ、面倒くさいと言いつつもこっそり造って共存エリアに放っていたのだ。


 共存エリアにいる二レスは、既に百勝は優に超えており最後の進化…五度目の進化を待っていた。

 だが、なかなか五度目の進化が起きずにいた。


 進化には「新たな障害」が必要不可欠。二レスは元々イレスのデータを元に造られている為、初めから優秀で共存エリアに入った当初から圧倒的な強さを誇っていた。

 その為、障害となり得る対戦相手になかなか巡り合えずにいた。それでも、何とか四度の進化を果たしあと一息のところまできたにも関わらず、寸止め状態を続けていた。


 エンゼスは早く二レスを完成させてアンゼスにお披露目したかった。


『…僕が二レスと戦えば最後の進化が起きるかも…いや、ダメだ。それで二レスが壊れたらこれまでが無駄になる…クソッ!他に強い奴いないのかよ!』


 サクサクと小気味いい音を立てながら、黄色い果実…リリンモを食べるエンゼス。

 エンゼスが食べている「リリンモ」とは、林檎の様な形をしたラボで作った食べ物で味はレモンの様に酸っぱい。種類は三つある。酸っぱい黄リリンモ、甘い赤リリンモ、渋い青リリンモ。エンゼスは刺激が好きなのと、色から黄リリンモを特に好んで食べている。


 エンゼスやアンゼスは食事を必要としない神。食べたところで何か変わる訳ではないが、アンゼスに倣い雰囲気で何となく食べているに過ぎない。

 しかし、他の製造物には敢えて食べさせている。

 それも実験の一つで、同じ色の食べ物を食べさせ続ける事で体の色を変えられるか、体質を変えられるか等の研究の為だ。


『二レス…次は進化しろよ。パパが行っちゃう前に完成してくれよ。』 


 そんなエンゼスの気も知らず、二レスは黙々と次の対戦相手を探すのであった。




 二レスは怪鳥との戦いを終え次の相手を探す為、南方面へ向かって歩いていた。道中遭遇した相手も、二レスには取るに足らない相手で何の成果も無かった。


 次に南から西に向かって歩き始める。


 南から西は海が広がる地帯で、天気も変わりやすく変異体との遭遇に期待が過る。


『ここなら、そろそろ強い奴出てくるかも知れないな…もしかしたら……そうだ!』


 エンゼスはふと何かを思いついたようで、ニヤリと意味深な笑みを浮かべた。

 意識を二レスに集中し目を閉じると、エンゼスの体が淡く光り輪郭がぼやける。


 エンゼスは意識だけ二レスに入り込んだ。


『成功…これで二レスが進化すれば、その感覚を僕も体験出来る。ふふ…楽しみだなぁ。』


 エンゼスは製造物達の進化を体験してみたくなり、そこで思い付いたのがこの「意識と体を分離させる」方法だった。

 期待に胸を膨らませ二レスに入り込んだエンゼスだが、製造物達が痛みや苦痛を感じない事を忘れていた。そして、それが後に思いがけない作用を齎す(もたら)事になる。




 二レスは南から西に向かい、海沿いを歩いていた。そして、突然立ち止まり視線を沖に向けた。沖をじっと見て、徐にそちらに向かって歩き出した。

 徐々に水深が深くなり、二レスの体が海に沈む。


 二レスは海に入る前に自身の体に薄い膜を張り、海水が直接肌に触れない様にした。以前、毒素が多い湖に何の対策もせずに入り皮膚が爛れ治癒に時間が掛かったという事があった。それ以来如何なる水中であろうと体の表面に膜を張り、余計な障害を受けないよう対策していた。

 これも、経験がデータ化され脳内にインプットされると二レスの行動に反映される為、誰の指示がなくとも勝手に作動する…自動で動いているのだ。




 ここの海は浅瀬ですら底が殆ど見えない濁った海。そんな視界の悪い海の中、二レスは黙々と海底を歩き続ける。すると、少し先に大きな何か…魚の様なものが見えた。

 二レスは立ち止まりよく観察すると一匹の大きな魚に見えたそれは、小さな魚の集合体である事が分かった。


 その小さな魚一匹当たりの大きさは大体三十センチ位だろうか。背中と腹にはひれがあり、特に胸鰭は尾に届く程の長さである。また、二つに分かれた尾鰭おひれは、下側が上側より長く鋭い。

 体は全体的に白っぽく見えるが、濁った海中でははっきりとは分からない。



 一匹の魚としてはそれほど大きいものではないが、集合体として見ると大きさは大型の鯨に匹敵する程で三十メートル位はあるだろう。

 この集合体は一体何匹で形成されているのか…。密集具合からしても数千、いや数万いても不思議ではない。

 そして何より驚きなのが、これだけの数の魚が密集した状態で一糸違わぬ動きをして、あたかも一匹の魚の様に動いている事だ。


 これまで二レスは単体との戦闘が多く、複数体…ましてやこれ程の個体数との戦闘は初めてだった。

 エンゼスはこの状況に期待で興奮し始める。


『よし!今回こそ期待出来そうだ!!』


 集合体の巨大魚はゆっくり旋回し、二レスを捉えた。

 魚達は互いの隙間を完全に詰め、巨大魚の体が僅かに縮まる。そしてこちらに向かってくる。


 巨大魚は先程までのゆったりした動きとは違い、かなりのスピードで一瞬のうちに二レスに体当たりした。水中な為派手な衝撃は起きないが、水圧と合わさり一度の体当たりで相当な重量を感じた。


 ドンッ!


『うわぁ!!……………ったぁぁぁ…』


 痛みを感じたのはエンゼスだった。

 二レスは「衝突した」という認識しかない為、「うっ…」と一言発しただけで表情は変わらない。


『クソッ!!痛いじゃないか!!何やってんだ、二レス!これ位避けろよ!!』


 体のダメージは二レスが受けるが、痛みはエンゼスが感じてしまう。感情があれば二レスも感じる痛みなのだが、エンゼスはそんな事には気付かず自分が受ける痛みに対して腹を立てていた。


 これまで「痛み」とは無縁だったエンゼスにとって、初めて感じる「痛み」だった。

 エンゼスの体はアンゼス同様自然治癒が働く為、傷を負っても痛みを感じる前に治ってしまう。


 その後も戦闘は続き、攻撃を受ける度にエンゼスは痛みに怒り二レスを叱責する。


『…ぐはっ!!

 …二レス!このバカヤロー!!何で毎回攻撃受けるんだよ!お前は避けるって事知らないのか!!』


 二レスの戦闘スタイルは、敢えて攻撃を受け相手の力を分析するのだ。その為、体に与えるダメージは相当だが、頭で予測計算するより正確な情報を得る事が出来る。そして、ダメージを受けて得た情報を基に繰り出す反撃の一手は、確実に相手に致命傷を与えられる。ハイリスクハイリターンというやつだ。


 しかしこの方法は強靭な肉体と驚異的な頭脳を持ち、更に痛みを感じない二レスだから出来る事で、普通のものでは耐えられないだろう。


 エンゼスは数手の攻撃を受け初めて感じる痛みに耐えつつも、二レスの戦闘スタイルに気付き意図は理解した。が、納得はしていない。


『くそっ!二レスのやり方はリスクが高過ぎるし、逆に効率が悪いんじゃないか?あんな雑魚の大群、まとめて一撃で吹っ飛ばせばいいだろ!ちまちまと分析する必要あるのか!?』


 しかし、その方法はエンゼスなら可能だが製造物である二レスには簡単ではない。寧ろ、初めにその方法を候補に挙げ計算した上で不可能と二レスの脳内コンピューターが判断したのだ。

 その結果、相手の力量をより正確に知る為に、攻撃を受けつつ常にあらゆる可能性を計算していた。その計算の中には、二レスがあとどれ位攻撃を受けれれるかという事も含まれている。


 だが、二レスを含め製造物達の脳内コンピューターは、基本的にはこれまでの経験に基づくデータから可能性を導き出している為、予測を超える事象には判断が出来ない…又は判断が遅れる場合がある。


 つまり、いくら膨大な数のデータを持とうが、瞬間的な「感覚」には劣ってしまうという事だ。


 既に巨大魚の攻略方法が分かっているエンゼスは、二レスの行動がまどろっこしくて仕方がなかった。どれだけ教えても、所詮はエンゼスの独り言で二レスには何も伝わらない。



 そしてとうとう決着が着いた…



『…っ!バカ!!やめろ!二レス!!!』



 バリバリバリバリバリバリーーーーッ!!!


 ……………バリバリバリバリーーーーーーーッ!!!


 バーーーーーーーーーーンッ!!!



 辺りは激しい爆発により海底の砂が舞い上がり、もとより視界の悪かったそこは何も見えなくなっていた。海上には爆発による水柱が数十メートル立ち上がり、場違いな虹が出来た。



 しばらくすると、水中を漂う砂が徐々に落ち着き、いくらか視界も回復し始める。




『……………ってぇ……………バカ二レスめ…』


 あまりの痛みにエンゼスも意識が飛びかけていた。

 そして漸く意識がはっきりして、辺りを見ようとするがはっきり見えない。視界が悪いというより、ぼんやりしている感じだ。



『…ん?……………どうゆうことだ?おい、二レス!』


 エンゼスは呼んでも返事がないのは分かっていても、状況が分からず何度も二レスを呼ぶが視界がどんどんぼやけてきて、最後には真っ暗になった。


『……………え…嘘だろ……………』



二話に分けようか悩みましたが、一話にまとめてしまいました…(;^_^A

そのせいで長くなってしまい、すいませんでした。

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