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創造神と愉快な仲間たち  作者: 川森 朱琳
第三章 新たな創造神
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第二十一話 哀しみの渦①


海の異変にイネスとシィも直ぐ様反応し、二人は互いに向き合い一つ頷くと手を握り目を瞑る。

意識を異変のある海に集中すると、白い世界は一瞬眩しく光る。二人が目を開けるとそこは黒い渦の目の前だった。


二人はアンゼスのように空を飛ぶ事は出来ないので、真っ黒に染まる海へ落下する。数十メートル上空から落下すれば、イネスは何とかなってもシィは無事では済まない。

イネスは瞬時に海水を自分達の足元まで吸い上げ、同時に浄化する。


真っ黒な海水の渦と、浄化されキラキラ光る海水の渦。遠くからは、黒と白の水柱が二本立っているように見える。


『イネス様…アイツです。アイツが私を取り込み…』


『シィ。あの中はどうなってるの?あの中には何がいるの?』


シィは青い髪の女性体に会い、話を聞いてるうちに辺りが暗くなり、いつの間にか自分がモヤに包まれどんどん気持ちが沈んで、何もかもが嫌になって考えるのを放棄しようとしていたが、イネスの声に導かれ正気を取り戻した…と、簡単に経緯を話した。



『……そう…女性体…赤ではなく青い髪の女性体だったのね?』


『はい!青です。…アイツ、話すのが苦手だなんだと言う割によく喋る…何か言い訳っぽい感じがして…髪色や顔つきは暗い感じでしたが、根はお喋り好きなヤツなのかもと思ったんですが、泣きだしたら全然私の話聞かなくて…私は周りの状況に気を取られて、途中からアイツの事忘れてて…でも多分、あの中心にいると思います。』


『…そう…元凶はあの渦の中心にいるのね…先ずは…』


イネスは浄化水を手に溜め渦の中心目掛けて放つ…が、弾き返される。


『やっぱ簡単じゃないわね…』


イネスはふと気付いた。黒い渦の後ろに広がる氷土は黒く染まってない事に。


『…シィ、見て。氷土は黒く染まってないわ。』


『ホントだ…では…』


『うん。やってみる価値はあるかも…シィ、私は今から海を分断してそこに氷の壁を作る。貴方は分断した海の方にいて、氷壁が出来たら浄化濃度を上げてほしいの。』


『浄化濃度を上げる?氷自体イネス様の浄化の力が含まれてるのに、それ以上浄化する必要があるのですか?』


『液体より固形の方が力を使うから、必然的に浄化濃度が水より落ちちゃうのよね。しかもこれだけ広範囲に氷壁を作るとなると、どうしてもゆっくり時間をかけて作ったあの氷土とは質が落ちるわ。だから、シィの助けが必要なの。』


『分かりました。やってみます。』


二人は方針を決め、直ぐ様行動した。


シィは海中に戻り、イネスの後方に下がる。それを確認したイネスは両手を広げ、目を閉じ集中する。


イネスの体から白い光がジワジワと溢れてくる。

ゴゴゴ…と地割れのような音がすると、黒く染まった部分と染まっていない部分との境目で海が割れた。

割れた部分の底は地肌が見え、続けてその部分がキラキラ光りそれが徐々に氷となり巨大な氷壁になった。


シィは氷壁の完成を見て、すかさず氷壁に浄化の力を込める。


『これだけの広範囲に浄化をするのは初めてだ。私一人でどこまで出来るだろうか…』


イネスは目を開け、氷壁とシィの様子を見る。


『氷壁は何とか完成したけど、この後は…悩んでもしょうがないわね。やれるだけの事はやろう!』


イネスは前方の黒い渦に目を向ける。


『…あの渦…いえ、モヤに包まれると酷く悲しい気持ちになるのよね。またあれに取り込まれたら…でも待って…青い髪の女性体…モヤの正体が彼女の悲しみからくるものなら、その悲しみをどうにかしてあげれば収まるんじゃ……一か八かね。』


イネスはゆっくり慎重に黒い渦に近付く。


渦に近付くにつれて、悲しみが強く伝わってくる。


『これは……相当な悲しみね。でも、同情ではきっと解決しない。せめて、話しが出来れば…』


イネスは黒いモヤに取り込まれないように、自分の体に浄化の膜を張り更に近付いた。


『ねぇ…もしもし〜?聞こえる?』


反応はない。

イネスは何度も何度も声をかけ続けた。


すると、黒い渦の中心から微かに泣き声が聞こえた。


『…っ!!泣き声が!!』


黒い渦の中心辺りから微かに泣き声が漏れ聞こえる。

イネスはあと一息だと、再度声をかけた。


『大丈夫?私と話しをしましょう?何故泣いてるのか聞かせてくれない?ねぇ『聞いてくれるの?』』


よし!とイネスは小さくガッツポーズをとり、直ぐに返事を返す。


『そうよ、貴方とお話ししたいの。何が悲しいのか聞かせてくれない?』


するとゴォゴォと音を立てていた渦が、徐々に勢いを抑え緩やかになる。そして、その渦の中心から青い髪の女性体らしきものが、すーっと現れた。


『貴方、本当に私の話しを聞いてくれるの?』


髪と同じ暗い青色の瞳からポロポロと涙を流し、イネスをじっと見つめる。


『もちろんよ!是非聞かせて。何が悲しくてそんなに泣いているの?』


『……私…大好きなあの子を怒らせて…ぅぅぅ…あの子が…ぅぅ…いなくなっちゃったの…ぅぅ…それが寂しくて…ぅぅ…哀しくて…ぅぅ…うぇ〜んっ!!』


『…そう…寂しかったのね?それでその「あの子」っていうのは、今どこにいるのか分かる?』


『……ぅぅ…あの子は…黒いドラゴン?…のとこに…』


『…え…黒いドラゴン?それって…イアレス達の事?』


『名前なんて知らない。せっかくあの子に会えたのに、あの黒いデッカイやつが急にこっちに来て…私…びっくりして…逃げちゃったの…あの子を置いて逃げちゃったの…ぅぅ…うぇ〜んっ!!』


『……ぇ…あの子って…もしかして…ねぇ、貴方の大好きなあの子って、もしかして赤い髪の子?』


『……!そう!赤い髪の子!え!どうしてあの子を知ってるの?』


あの時の…なら、アンゼス様と一緒にいるかも…と思い、この後の事を考える。


『…ねぇ。聞いてるの?』


『…ぇ…あっ!ごめんね。その子を知ってるというか、見たかも…って思って、ちょっと思い出してたの。』


『ホント!?そう、赤い髪の子。あの子とっても綺麗になってた。一緒にいる時は姿も見えなかったのに…あんなに綺麗になって…どうして…私と一緒にいる時は姿もなかったのに…やっぱり私と一緒じゃ…ダメだったんだわ…ぅぅ…うぇ〜んっ!!』


『あ、ちょ、ちょっと!待って!泣かないで!!』


青い髪の女性体が泣き出すと、それに呼応するように黒い渦がゴォゴォと勢いを増す。


『っ!!マズイわ…ね、ねぇ!二人でいた時は姿が見えなかったっていうのはどうゆう事?以前は貴方も姿がなかったの?』


『…ぅぅ…そう…無かった。私達は姿なんて無かった。ただ、一緒にいた。二人で一人みたいな感じで…あの時は幸せだったわ…いつも二人で話して…何をするでもなく、ただ二人で()られた』


イネスは、二人で一人というのがまるで自分とイデスのようで、自分がイデスと離れ離れになる事を想像した。そして、少しだけ彼女の悲しさが分かる気がした。


『……それは…凄く…哀しいわね…』


『…分かるの?貴方に私の哀しみが分かるの?』


『全部じゃないけど、少しは分かるわ…私にも大好きな…二人で一人みたいな存在がいるから…』


イネスはイデスと離れ離れになる事を想像して、悲しくなってしまった。


イネスのその様子を見て気持ちが落ち着いたのか、黒い渦も勢いが弱まる。


『……貴方にも大切な存在が…なら…私がその子の代わりになってあげる。私も今一人ぼっちで寂しいし、貴方は私の話聞いてくれて優しいから、貴方となら一緒にいて楽しいと思うの!それに貴方、あの子と少し雰囲気も似てるから、あの子といた時みたいに私達仲良くやれるわ!』


『……イデスの代わり?あの子と似てるから?

貴方…何言ってるの?イデスはイデスよ。誰も代わりになんてなれないし、私も貴方の言うあの子の代わりになんてなれないしならないわ!』


『……何よ…やっぱり貴方も…私を嫌がるのね…あの子みたいに…私を置いて…私を捨てるのね!!』


『貴方の言うあの子と、何があってどうして離れ離れになったのかは知らないけど…今の貴方の言葉を聞いて、その子が離れていった気持ちが何となく分かるわ。貴方…自分に合わせてくれるなら誰でも良かったんじゃない?その子だから一緒にいたいんじゃないでしょ。貴方のそれは「執着」よ!』


『……執着…違う…そんなんじゃない…私はあの子じゃなきゃ…あの子がいいの…あの子がいなくて寂しいの…』


『本当にその子がいいなら、私に代わりなんて求めないわ。寂しくなければ誰でも良かったのよ。』


『…さい…るさい…うるさいうるさいうるさいっ!!』


再び黒い渦が勢いを増す。青く長い髪が四方に広がり、瞳の色が一層暗くなる。


『お前に何が分かる…お前もさっきの白いヤツと同じ…本当に一人ぼっちになった事なんてないんだ…そんなヤツに私の気持ちが分かる訳ないっ!!』


そう叫ぶと体から黒いモヤが一気に噴き出し、渦の中に吸い込まれるように入っていった。


『……しまったぁぁ…ついムキになっちゃった…はぁ…』


一部始終を見ていたもの達…アンゼス、オアリス、イデス、アデス、レオン…そして黒いドラゴン。


アンゼスとドラゴンの中にいるイアレスは彼女の気持ちがよく分かるが、他のもの達には本当の一人ぼっちを経験した事がない為、想像でしか分からなかった。


しかし、イレスとブルートは少し違った。


二人共、初めこそ一人ぼっちではなかったが、長い間創造神と二人で過ごし二人で一人のような感覚でいた事もあり、他のもの達より一人になる寂しさをよく理解していた。



各々が各々の想いを胸に、黒い渦の中心にいる女性体を見ていた。


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