第二十話 イネスとシィの絆③
シィの魂の叫びのような悲憤が海底を震わせた直後、シィの体の奥底から何かが弾けた。
と、同時にシィの体が白く光り海面に向かって閃光のように飛び上がる。
『…っ!シィーーーッ!!』
シィの異変にイネスは直ぐ様反応し、後を追う。
海面に勢いよく飛び出したシィを包む光が、空に届くと一際眩しく光る。
イネスは人魚の姿で、全速力で追いかけその勢いのままシィに向かって飛びついた。
イネスはシィの光の中に吸い込まれ一体化した。
『……シィ…?』
『…………イ…ネス…様…』
『シィ!!良かった、無事だったのね!!』
そこは真っ白な空間でシィの姿は見えないが、イネスにはちゃんとシィの気配が感じられ、そちらに向かって話しかけていた。
『…シィ…ごめんね…私が不甲斐なくて…シィを危険な目にあわせてしまって…』
『…っ!違います!!イネス様は何も悪くありません!!……私が…力不足で…お役に立てず…』
『……何言ってるの?シィは凄く頼りになるし、ホントに助けられてるのよ、私。だから役立たずなんて二度と言わないで!喩えシィ自身でもそんな事言うのは許さない!!』
『……イネス様…すいません…ごめんなさい…ぅぅ…』
『……シィ?そこにいるんでしょ?顔を見せて?』
『……ぅぅ…』
『……シィ?』
イネスがシィの気配を感じていた辺りが、キラキラと煌めき光の粒子が集まり出す。
徐々に形を整え、やがて一体の女性体が現れた。
『…っ!シィ!!』
イネスは何の疑いもなく、目の前に現れた女性体に抱きついた。
『…っ?!…イ…イネス様…どうして…』
『何?…貴方がどんな姿をしてても、私がシィを分からない訳ないでしょ!私はそこまでバカじゃないわよ!!』
『……イネス様…ぅぅ…ありがとうございます…ごめんなさい…ごめんなさい…』
『……シィ…私こそごめんね。貴方をこんなにも不安にさせてたなんて、私全然気付かなくて…やっぱり私はバカかも…』
『…いいえ。イネス様はバカなんかじゃありません!!優しくて、思いやりがあって、可愛くて、素直で、皆が愛さずにはいられない素敵な方です!!』
『…あ、ありがとう…そんなに褒められると照れるわね…お世辞でも嬉しいわ…何か恥ずかしい……』
『お世辞なんかじゃありませんよ!本心です!!』
『そ、そう?ありがとう…って、シィ!貴方も今の姿とっても素敵よ!!可愛い…ううん、カッコイイ♪』
『え…そうですか?自分の姿が見えないのでよく分かりませんが…気に入って頂けたのなら嬉しいです。』
シィは感情の爆発により覚醒し、見事「人型」に進化したのだ。
イネスより濃い青い髪は、頭の高い位置で一纏めになり、その髪は腰より下まで伸び、顔はイネス似ではあるが意思の強そうなキリッとした顔立ちに、細い首としなやかな体つきは女性体らしくスタイル抜群。
※覚醒中のイネスの髪色は薄い水色なので、シィの髪色は明るい青色
ただ、今現在全裸なので何か着るものを用意しないと、ここから出る訳にもいかずイネスは悩んだ。
『あ!アンゼス様!!
アンゼス様聞こえますか?アンゼス様〜?』
『……ハイハイ。まったく…騒がしいなぁ、イネス…』
『あ!アンゼス様!すいません!!
シィが多分覚醒したみたいなんですけど、服を着てなくて…何か服を用意出来ますか?』
『…シィ、覚醒おめでとう。其方の強い想いが殻を破ったね。でも、あんまり自分を卑下しない事。
イデスと比べる必要はないんだから。皆それぞれに得意不得意がある。気にし過ぎると、逆に自分の能力を下げる事にも繋がるから気を付けてね。
……では、服はイネスと同じでいいかな?』
『はい!アンゼス様…ありがとうございます。
全部お見通しだったんですね…恥ずかしいです…』
『…ふふっ…私を誰だと思ってる?創造神だよ?』
『そうですね…ふふっ…』
『よし!じゃあ……うん、こんな感じかな?』
シィの体にイネスと同様の白い服が宛てがわれた。
『わぁ〜!アンゼス様凄い!!ここに居なくても創造出来るんですね!!』
『そりゃあ私は…『『創造神だからですよね?』』…うん…そ、そう!私は創造神なのだ!!』
『『創造神最高〜!!』』
『…あ、あぁ…』
『『創造神バンザ〜イ!!』』
『な、何だよ急に…まぁ悪い気はしないけど…ふっ…』
このやり取りを、オアリスはアンゼスの横でじっと見ていた。
そして、ワクワクしてきたのだった。
『……何か…いいな…こうゆうの…楽しい!!』
ほのぼのしたやり取りをしている間、海底に残されたもう一人の「あの子」は、ふつふつと怒りが込み上げ…そして哀しんだ。
『………私の事忘れてんんじゃないわよーーーっ!!』
ザバーーーーーーッ!!
海底から海水を巻き上げながら、大きな黒い渦が飛び出した。
巻き上げられた海水は黒いモヤと混ざり、ゴォゴォと音を立て海面から数十メートルの高さにまで上る。
『っ!!あの子だわ!!』
オアリスは気配でその黒い渦の正体に気付き、アンゼスに懇願する。
『アンゼスお願い!あの子のとこに私を連れてって!!』
『……いいよ』
アンゼスは一瞬躊躇ったが、直ぐに了承した。
アンゼスとしてはもう少し様子を見ていたかったが、オアリスがこれ以上は我慢出来ないだろうと判断し諦めた。
『…ありがとう、アス!あの子は何としても私が止めるわ…』
『…そう…』
アンゼスの眉がピクリと動く。
僅かに声が低くなるアンゼスに、オアリスは気付かなかった。




