閑話 二人で一人
『ブルート…すまない…ブルート…』
『辛かったわね…苦しかったわね…』
ブルートを失った悲しみと後悔で意識が朦朧としている時、誰かの声が聞こえた。
朦朧とする意識の中何とか目を少し開けると、そこには赤い色と「女性体」らしき顔がぼんやり浮かんだ。
……赤い?イネスじゃないな…何でもいいか。
そう思いながら、その声に慰められた気分で…多分抱きしめられてるんだろうが、それがとても心地好くて落ち着く。
薄れゆく意識が、あぁ…ブルートの元へ行けるのだと勝手に想像する。
そして完全に意識が途切れた。
『オイ!……オイッ!!イアレス!!
いつまで寝てんだよ!起きろ!!』
ペシペシと頬を叩かれ、段々意識が戻ってくる。
『オイッ!!』ペシッ…
『ってぇなぁ〜!!何だよ!!』
『やっと起きたか、イアレス。』
頬の痛みで目を覚ますと、目の前に消えた筈のブルートがニカッと笑って立っていた。
『……っ!!ブルートッ!!お前…ぅぅぅ…』
『何だよ、泣くなよ…俺まで泣けて…くるだろ…』
『『ゥワーーーーーーーッ!!』』
二人は互いを強く抱きしめ、腹の底から声を出して泣いた。これでもかという位に泣いた。
一頻り泣いて、二人は漸く顔を合わせ…笑った。
『……アハハハハ、お前何泣いてんだよ!』
『お前だって滅茶苦茶泣いてたじゃねぇか!!』
『『……アハハハハ』』
握手をするように互いに手を握り、ポツリポツリと話し出す。
『……悪かったな…お前の話聞かなくて…』
『……いや、俺も悪かった。ちゃんと自分の気持ち言えば良かったんだ……悪い…』
『これからは、ちゃんとお前の意見も聞くよ。』
『俺も思った事は遠慮しないでちゃんと言う。』
『『……ふっ…また…ヨロシク…』』
二人は素直に互いの気持ちを打ち明け、強く手を握る。
すると握った手から白い光が溢れ、次第に二人を包み込む。
この時二人は、二度とこの手を離さない…と強く握り、二人一緒ならこのまま消えても悔いは無いと思った。その願いを叶えるかのように、二人一緒に姿が消えた。
『……此処は…』
『……イアレス…此処ってもしかして…』
『あぁ。多分そうだ…最初に俺がいた…真っ暗な世界だ。』
『……此処が…何にも無いな。それに何にも見えない…お前、こんなとこにずっと一人でいたのか…』
『……そうだな。そうだった…けど、お前といるようになってから忘れてた…ハハ…』
『まぁ、でも、今は俺がいるから一人じゃないし?何も見えなくても、こうやって話しは出来るから…寂しくはないだろ?』
『……あぁ。寂しくない…お前がいるからな!』
『…ったりめぇだ!!』
『『……ふ…アハハハハ…』』
すると真っ暗な世界が一気に白く光りだし、真っ白な世界に変わる。
『……はっ…今度は此処か…』
『…何か…走馬灯ってやつみたいだな。俺ら死ぬんかな…』
『……もう死んでんだろ…』
『……そっか。そうだよな。
なぁ、次もし生まれ変わるとしたら何になりたい?』
『……何に…か。俺は…強くなりたい。心も体も…』
『……あぁ、いいなそれ。俺も強くなりたい。で、お前に攻撃されても打ち返す!』
『……んだよ、それ…フッ…じゃあ俺は、それを更に打ち返す!』
『はぁ?それじゃあ俺だけ殺られっぱなしだろ!狡いぞ!一回位当たっとけ!』
『やだね〜!悔しかったら打ち返してこい!
……俺がずっと打ち返し続けるから…』
『……ッカヤロウ…負けねぇからな!!』
『フン!かかって来い!!』
『ってかよぉ、体はどんなのが良い?人型は弱っちくないか?何かこう…もっとデカくて強そうなやつが良くないか?』
『確かにそうだな…デカくて強そうなやつ…』
『『……っ!!……ドラゴンッ!!』』
二人の声が揃ったと同時に、グイッと引き寄せられたと思ったら一瞬で意識を飛ばされ、気が付くと初めて神界に来た時にいた噴火山の底だった。
『『……此処って…』』
二人で顔を見合い首を傾げる。
『『……は?』』
確かに各々の顔だが、何かがおかしい。
互いに見合う顔はイアレスとブルートなのに、ドラゴンの姿や顔にも見える。
『『……もしかして…』』
一体のドラゴンに二人が入った…二人で一体のドラゴンになった…そう結論付けた。
『『……ハハ…アハハハハ!!』』
『『……やったな、俺達!!』』
息ピッタリの二人。歓喜の雄叫びを上げ上空へ飛び立った。
ブルートは以前この土壁をイアレスに背負われ登った時の事を思い出し、胸が熱くなる。
『あの時は出来なかったけど…今は本当に二人で登ってる…く……』
『ブルート!二人一緒は楽しいな!!』
『……ああ!楽しいな!!』
『『ギュェーーーーーーーーーーーーッ!!』』
勢いよく飛び出した空は青く澄み渡っていた。
気持ち良くなりぐるっと旋回すると、視界の端に赤い髪の女性体を見つけた。
イアレスは直ぐにあの声の女性体だと気付き、ブルートに了承を得て彼女の元に降り立った。
ブルートにも既に伝わっていて、二人は彼女に対して心から感謝した。
『『……ありがとう…』』
そして、その感謝の気持ちを込めて一粒の宝石を差し出した。
その宝石は一度しか出す事の出来ないもので、心が通じたものとしか共有出来ない。
それを初対面の彼女に渡し、彼女もまたそれを受け取った。そして、彼女の体に吸収されるのを見て安心する。自分達の目は間違いじゃなかったと。
『『……またいつか…』』
と、その場を飛び立った。
『なぁ、イアレス。俺達…っていうか、ドラゴンの名前決めない?』
『……ドラゴンの名前かぁ…』
『『……イブート!!』』
『……だな!』
『……だな!』
イブートと呼ばれる事がこの先来るかは分からないが、二人はドラゴンの体にも名前を付けてやりたかった。
二人はドラゴンの中にいるが、ドラゴン含めて三人で一人(一体)のような気がしていた。
『『……イブート、宜しくな!!』』
『………………』
イアレスとブルートには「よろしく」と聞こえた気がしたのだった。




