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創造神と愉快な仲間たち  作者: 川森 朱琳
第三章 新たな創造神
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第十話 ブルートという存在


アンゼスは暫くブルートを放置していた。


ブルートはあれからずっと、イアレスが消えた穴の傍から離れなかった。ただ、じっと見えない穴の底を見つめる。

その様子を、イレスもやるせない気持ちで見ていた。


『……気持ちは分かりますが、そのままではイアレス殿は見つけられませんよ。』


イレスが何気なく呟いた。


『そうだね。』


『…っ!アンゼス様…』


『イレスの言う通り、あそこでじっと嘆き哀しんだところで、それはブルート自身に向けた後悔の気持ちであってイアレスを求めるものではない。ブルートがそれに気付かなければ、イアレスに想いは届かない。』


『……私はブルート殿の今の心情はよく分かります。自分が彼の立場なら、同じ様に自身の言動に悔やみ…心を閉ざしていたでしょう。それが何時まで続くかは…私も分かりませんが、いつかは…きっと気付くと思います。そう信じたいですね。』


『…うん、そうだね……イレス覚えといて。

其方が生きているという事は、私は消えていないという事を。もし私が何かの理由で姿が消えたもしても、其方が生きている限り私も生きている。それだけは忘れないで。』


アンゼスは優しくふわりと笑いイレスを見た。

実際のところイレスが消えてもアンゼスは消えないが、それだけ自分を大事にしてほしいという思いを込めた言葉だった。


イレスは、自分がアンゼスと共に在るのだという嬉しさと、そんな状況になる事がこの先あるのかという不安で、何とも言えない気持ちになる。


『…大丈夫。そんな事は滅多に起きないよ。


言ってなかった?私は自分で自分を消す事は出来ない…と言うか、自分の消し方を知らないんだ。

それに私は「創造神」だよ。

仮にもし私を消せるとしたら、それは同じ「創造神」だろうね。けど、現時点で私より力のある「創造神」はいない。恐らくだけど…イアレスが戻ってきても彼では私を消せないと思う。

……だから私は消えないよ。』


絶対とは言えないけどね…


最後の言葉は心の中で呟き、イレスを安心させる様に微笑むアンゼス。


イレスは微かにアンゼスの中にある不安を感じたが、イレスもまた口には出さなかった。


何があっても貴方と共に在ります…





ーーーイデスの神殿にてーーー


イアレスの覚醒波で離れた海にいたイネスにも異変が伝わり、慌てて来てみたらあの惨状で、 事の経緯をイデスから聞いていたイネス。



『ねぇ、イデス。ブルート殿はこれからどうすると思う?ずっとあそこでイアレス殿を待ち続けるのかなぁ?』


『……どうだろう。』


『俺は無駄な時間だと思うんですけどね…』


『ちょっとアデス!言い過ぎよ!!』


『……言い過ぎかどうかは分からないけど、俺もじっとしてるのは…無駄な気がする…。』


『ちょっと、イデス!アンタまでそんな事言うの?

ブルート殿が可哀想じゃない!あんなに悲しんで…』


『じゃあ聞きますが…イネス様、彼処でじっとしてる事に何か意味があるんですか?何もしないで待ってるだけですよね?考える時間…って言うならならまだ分かりますが、見た感じ考えてる様には見えないんですよね、あの方。』


『…俺もアデスと同じ意見だな。…俺ならじっとはしてられない。何かしなきゃ…おかしくなりそうだ…』


『……イデス…確かにそうかも。私も…散々悩んで後悔して泣くけど…最後はじっとしてられなくなるだろうな…』


『…まぁ、あの方がこのままずっと動かなければ、イアレス殿も戻ってこないって事でしょうね。』


『……アンゼス様は…どう思ってるんだろう…』


『…そうね』


『…そうっすね』



アンゼスにはイデス達の会話が聞こえていて、彼等の成長を感じ嬉しかった。

彼等が言う様に、ブルートは行動を起こしていない。

待つ事に慣れ過ぎてる…とでも言うのだろうか。


アンゼスの予想はこうだ。

ブルートがどうゆう経緯で創り出されたかは分からないが、分析したところイアレスの分身…いや、半身の様な造りになっていて、イアレス自身の意識の奥底にある性質がブルートに宿っている様だった。


そして二人でいる間の過ごし方も、イアレスのやる事を傍でじっと見て寄り添う…といったところだろう。

イアレスは「創造神」らしく「好奇心」はあるのに「諦め」が先立ってしまい、その先…新しい想像に繋がらない。そんな様子をブルートはもどかしく思いながらも、いつかは…と待ち続けたのだろう。


イアレスは自分以外の存在が傍にいる事で満足し、ブルートはその先を望んだ。

その差が衝突し、今回の事を引き起こしたのだろう。


本来はブルートの「その先を」という感覚はイアレスの中にあったものだが、ブルートを創った時にイアレスから離れた…そう考えると、二人の反応の差に納得がいく。


イアレスとブルートは二人で一人の様なもので、イデスとイネスの性質に近いのかも知れない。

だからこそ、イアレスはアンゼスには到底及ばない。無論、イレスにも。それは今後も変わらないだろう。

何せ、イアレスは自分の力の半分をブルートに与えてしまったから。


ただ、今回イアレスが引き篭った事で、双方に何か変化があれば状況は変わるかも…と、アンゼスは考えている。


その為にも、ブルートには今の状況から立ち直ってもらわなければ、アンゼスの予想は実証されない。


アンゼスは二人を心配する気持ちと同時に、結果を知りたい…というある種「実験観察」の様な気持ちもあった。


それは「創造神」ならではの感覚と言えよう。


……「創造神」は神であり「人」にあらず……


また、「感情」が起因する事象に於いてはアンゼスですら予測が難しい為、尚更「結果」を知りたかったのかも知れない。


周囲のそんな考えを、ブルートは気付かないまま今も未だ膝を抱えて真っ暗な穴を見つめるのだった。





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