第七話 アデスと亀レオン③
お読み頂きありがとうございます。
タイトルと内容が合ってないと思われるかも知れませんが、過程の話なので…
アデスと亀レオンが二人時間を過ごす少し前…
『やあ、イデス。調子はどうだい?』
『あ、アンゼス様。なかなか上手くいきません…。』
『そうなの?』
そう言ってイデスの手に持つ小さな石を摘みあげる。
『これは私が創った絶対鉱石だから、ちょっと位簡単には壊れないよ。遠慮なくやればいいのに。』
『遠慮なくやってもダメなんです…。』
落ち込むイデスを見てアンゼスが言う。
『ん〜、ねぇ、イデス?本当に遠慮なくやった?
自分の最大限の力使った?』
『…はい。そのつもりです。』
『ホントに〜?』
『はい。でも…力は最大限使ったつもりですが、どこか前より威力が出てない気がするんです。それが何故か分からなくて…。』
『ふ〜ん。
じゃあさ、この中にイデスの全力ぶつけてみてよ。』
アンゼスは小さめの箱庭(異空間)を創ってイデスに渡す。
『……?これは…箱庭ですか?この中に?』
『そう。この中に向けてイデスの全力を放ってよ。
この中なら、遠慮なくやっても大丈夫って分かるよね?』
『……はい。やってみます。』
イデスは箱庭の蓋を開け、中に両手を入れ集中する。
イデスの両掌に熱が集まり真っ赤に染まる。
『はぁーーーーっ!!』
イデスの掌から業火が放たれる。以前の噴火を思い起こす程の熱。その業火の色を見れば温度がどれ程のものか想像がつく。
『まだだね。私の箱庭が信じられない?』
『っ!!いえ、違います!!』
『じゃあ、もう一度。』
『はい。』
『はぁーーーーっ!!』
再び業火が放たれる。が、先程とあまり変わらない。
『もう一度。』
『はい!はぁーーーーっ!! 』
『もう一度。』
何度やっても合格がもらえないイデスは、徐々に焦り始め却って業火の質を落とす。
『イデス…。もういい。』
『っ!!まだやれますっ!!』
『……いや、何度やっても同じだと思う。』
『そんな……』
ガックリと地面に膝を着き、項垂れるイデス。
『イデス。何故だと思う?』
『……分かり…ません。
私の力不足としか…思えません。』
『不正解。まぁ、力不足なのはそうだけど、それよりも単純に実力出し切れてない。そして、その理由は自分で勝手に限界値決めてるから。
この位って自分でボーダーライン作ったら、もうその時点でそこが其方の限界値になる。だからそれ以上にはいけない。当然の結果だよね?
過去の自分の実力を参考にするのは構わないけど、それを正解と決めつけてそこで終わりみたいに思ってたら、ずっとその程度だし覚醒なんて先ず無理だね。
この石も必要無さそうだから、回収するね。
じゃあ、イデス。お疲れ様〜』
『ま、待って下さいっ!!
も、もう一度やらせて下さいっ!!』
『もういいよ。疲れたでしょ?』
『お願いしますっ!!
あ、後一回だけお願いしますっ!!』
『え〜、もういいよ。自分でやるから。』
『お願いしますっ!!』
ガバッと頭を地面に着け必死に懇願するイデスを、アンゼスはじっと見つめ「一度だけね」と、絶対鉱石をイデスに渡す。
『これで最後ね。
箱庭に石入れて全力出してみて。出来なきゃ終わり。いいね?』
『はい!』
イデスは絶対鉱石を両手でぎゅっと握りしめてから、そっと箱庭に入れる。
中は無重力状態なので、その石はふわふわと浮遊している。ふぅ…と息を吐き目を閉じ集中する。そして…
『はぁーーーーっ!!』
これまでと桁違いの熱量を持った業火が、イデスの掌から放たれ絶対鉱石を真っ赤に染める。
絶対鉱石は壊れる事なく、その渾身の業火を纏うとその熱を石の内部に吸収していく。
噴火の際に火口から飛び出した溶岩石の様に、熱を帯びた絶対鉱石。
『あ…業火が……』
また失敗したと落ち込むイデス。
『出来たじゃん、イデス!!』
『……え?』
『これこれ〜、これが見たかったんだよね♪』
『え?これが?』
『そうそう、これ♪漸く太陽の素が出来たよ〜。』
『え?太陽の…素?』
『そう!太陽の素!やっぱ太陽は熱くなきゃ!!
イデス!上出来だよ!!良いのが出来た♪』
『え、あ、はい…どう…いたしまして……?』
どうゆう事?と首を傾げるイデス。
そして、何の説明もなくその場を立ち去ろうとするアンゼス。
『あ!そうそう、イデス。』
『はい?』
『今のでイデスの能力一段階上がったよ。
おめでとう♪まだまだ上がるから、頑張ってね〜。』
『え?』
軽い気持ちで大事な事をさらっと言って、今度こそ本当に去って行ったアンゼス。
色んな意味で置いてきぼりのイデスは、我に返るまで暫しの間無言でアンゼスの去った方を呆然と見つめていた。
『えっーーー!!ちゃんと説明してーーーっ!!』
鼻歌を唄いながらご機嫌で立ち去るアンゼス。
『太陽♪太陽♪太陽〜♪』フンフンフン〜♪
イデスが熱を込めた絶対鉱石を、早速加工し「太陽」を造ったアンゼスは、それを神界の空に放った。
熱を帯びた「太陽」は、これまでの「光だけの太陽」とは違い、熱を放ち神界全体を暖めた。
その熱は浜辺で待機するアデスとレオンには地獄の様に暑かったが、アンゼスは気付いていない。
少し汗ばむアンゼスは「夏みたい?」と独り言を呟いた。
アンゼスのこの能天気な行動が、神界を混乱に巻き込む事になるとは、まだ知らない……
地球の美しさにちょっとした憧れを持っているアンゼスは、神界も地球みたいにしたいと密かに思ってます。
海に沈む夕日を見たくてどうしようかと考えていたところに、アデスの声を偶然聞いて思い付くままオレンジ色とマグマの色を重ねてしまった結果の所業です。




