閑話 箱庭の中は発見がいっぱい①
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アンゼスは、体内箱庭の中を覗いていた。
体内箱庭とは、以前イレスに内緒でアンゼスの体内に隠した箱庭だ。
箱庭は回収した廃棄物を一時保管する為のもので、イレスやイネスとイデスが交代で回収して持ってくる。
最初はアンゼスとイレスが、イネスとイデスを創造してからは、イレスとイデスが回収と廃棄処理をしている。
イネスには水の浄化を担当にして、その際廃棄物があれば回収するという形にした。
イデスが廃棄処理までやるのは、火の扱いを得意とする為焼却処理をさせているからだ。
イデスが出来ないものに関してはイレスが担当する。
そう役割分担する事で、これまでそれ等全てを一人で担っていたイレスの負担を減らした。
アンゼスは創造の際、以前創造したものを無意識に再度創造してしまう事があり、神界が物で溢れないように定期的に回収作業をしなければならなかった。
しかしそれは、アンゼスにとっては必要な事でもあり、やめる事が出来ない事でもあった。
新しい創造をする時、「創造物」は違えど途中まで同じ素材が必要だったりする場合もあるので、どうしても創り出してしまうのだ。結果的に使わなかったとしても。
その為、創造したけど使わなかったものは回収しなければならない。
しかし、アンゼスはそれ等を全て廃棄するのは勿体無いと思っていた。が、その数が一つや二つではない為、一時保管する場所は必要であった。
アンゼスは一時保管して纏めて処理するつもりで貯めていたが、いざ処理しようとする前にまた考え事を始めてしまい、いつまで経っても処理されない…という事がよくあり、その度にイレスに叱られる。
箱庭を幾つか追加で創ったものの、それは解決ではないとまたイレスに叱られ、箱庭の追加を禁止されてしまった。
ある時アンゼスは、回収物をいつもの様に消滅処理しようと箱庭の蓋を開けた。
すると、幾つかある箱庭の一つに今までと違うものがあった。何かしらの影響なのだろう。アンゼスが創ったものが混ざり合い、新しい「何か」を造りだしていた。
『ん?何だこれ?見た事ない丸い球体が幾つもある
……何これ、ちょっと面白いんだけど!!』
アンゼスは目をキラキラさせて興奮した。が、直ぐ様蓋を閉めキョロキョロ周りを見る。
『イレスに見つかったら消滅処理する様言われるな…どうしよう…う〜ん…』
アンゼスの能力があれば、隠す事は何ら大変な事ではないのに、そこには気付かない…ちょっとだけポンコツなアンゼス。
そして、そんな微ポンコツのアンゼスは、斜め上を行く発想で能力を使った。
『あ!いい事思いついた!!ここならイレスに見つからないぞ…ふふふ』
そう言って、箱庭を自分の腹の中に押し込んだ。
『…うっ!……ちょっとキツい…けど、大丈夫そうだな。よし!良いね!』
満腹とでも言うように、腹をポンポンと叩きご満悦のアンゼス。
それからは、カモフラージュ用に内緒で一つ箱庭を創造し、消滅処理は真面目に行った。
一人になるとこっそり腹から取り出し、中の様子を確かめほくそ笑む。それはアンゼスにとって、至福の一人時間だった。
箱庭を体内に隠してから暫くすると、アンゼスの言動がおかしくなってきた。
体内箱庭の影響を受けているのだろう。
影響と言っても体調に異変が起きるという類のものではなく、会話の中で時折聞いた事もない言葉を使ったり、見た事もないものの話をしてどう思う?と聞いてきたりする程度だ。
イレス達はそんなアンゼスの言動に最初は困惑したが、新しい「何か」を想像して話してるのだろうと思い、そこまで深く考えなかった。
実はそのアンゼスのおかしな言動は、体内箱庭の中で起きている現象が、体内にずっといる事でアンゼスに直接伝わる様になってしまったからだった。
体内箱庭の中がどうなっているかと言うと…
真っ暗な異空間の中で、アンゼスにより丸められた廃棄物がフワフワと漂う。
それ等は箱が何かしらの衝撃を受けると、中も揺れ近くのもの同士がぶつかったりした。
その結果、爆発するものや、性質が変化し別のものになったりを繰り返し、アンゼスの想像には無かった別の「世界」が作られていた。
その「世界」では、幾つもある球体を惑星と呼び、その中でも最も大きく熱いものを「太陽」と呼んだ。
そして、それ等をそう呼んだのは惑星のうちの一つでもある「地球」という惑星だ。
その「地球」には様々な生き物がいて、独自の方法で進化している。
地球に生きるものの中で最も進化したのが「人間」と呼ばれる種族で、球体に「太陽」や「地球」「惑星」といった名を付け、更に箱庭の空間を「宇宙」と呼んだ。
箱庭の中は、アンゼスの気持ち一つで幾らでも広がったり狭まったり出来るのだが、「人間」達はそれを知らない。
宇宙には「地球」以外にも、同じ様に生物が住む惑星は幾つもある。
だがそれは、人間の知識、技術、身体では到底辿り着けない距離に存在する。それでも人間は「可能性」を求めて日々研究を続ける。
アンゼスは、人間達が何処まで辿り着けるか見てみたかった。
アンゼスから見たら、とても小さな宇宙でも、そこに「意思」持つ存在がいる事に興味を惹かれた。
また、人間が作る「文明」にも興味を惹かれ、少なからず神界…アンゼス自身にも影響を齎した。
アンゼスの様に「創造」の力が無くても「想像」を基に何かを生み出す事は出来ると、地球に住む人間を見てアンゼスは知った。
神界も今は人型は自分達四人しかいない…しかも自分以外はアンゼス自身が創造で創ったものだ。
けれども、環境が整えば自然に新しい「何か(いのち)」が生まれ、地球の様に沢山の「何か(いのち)」で溢れるかも知れない。
同じでなくてもいい…でもあんな風に美しい世界で沢山の「何か(いのち)」と暮らしてみたい。
地球を観察するうちに、アンゼスはそんな事を思う様になっていた。
とは言え、何から始めたらいいのか分からないアンゼスは、目に付いたものや印象深いものから手を着けていった。
太陽、月、海、山、川、湖、鳥、魚…何の脈絡もなく、思い付くままに…
残念ながらアンゼスは地球に住んでいない為、知識として構造は分かっているが本当の意味では理解していない。所謂、見様見真似というやつだ。
それでも、ある程度は再現出来る。また、見様見真似で再現した「なんちゃって」のものから、アンゼス独自の観点で別のオリジナルを創造したりした。
その結果、神界全体に意思を与え「なんちゃって地球」から「神界」というオリジナルの世界を創る事に成功したのだ。
ただ、創造神のアンゼスでもどうしても創造出来ないものがあった。
それは「感情」だ。
これだけは何度創造しても「想像」の域を超える事が出来ず、また形もないし明確な答えもない為、創り出す事が出来なかった。
アンゼスは人間が生み出したその「感情」には沢山の種類があり、「感情」が様々な効果や影響を与えるものである…と、「知識」としては知っている。
そして「知識」としての「感情」は、自分自身が体験しなくては「理解」した事にはならない…それにも気付いている。
アンゼスは初めて自分が創造出来ないものがある事、自分の意思でコントロール出来ないものがあるという事に、今までにない強烈な興味を惹かれた。
それからというもの、アンゼスは一つ一つの言動に答え合わせをするかの様に「感情」を当てはめていった。
そして「知識の上での感情」と「自分が感じた感情」とを照らし合わせ、しっくりくるものは正解、しっくりこないものは不正解として、知識の上書きをしていった。
また、この上書きされた「知識」を、アンゼスの能力【浸透共有】を使い、神界全体にも発信した。
※浸透共有…広範囲に一斉に念話(知識、情報)を送る
そうして神界は「意思」と「感情」を持つ事になった。それにより、良くも悪くも様々な変化が起きていくのであった。
アンゼスの言動に地球語が度々登場するのは、こうゆう理由があったというお話でした。
因みに…体内箱庭(特に地球)での情報は、BGMの如く常にアンゼスに送られている(という設定です)




