第21話 神界のこれから⑤〜イデスとアデス〜
お読み頂きありがとうございます。
解説も残り僅かです。
漸く順番がきたイデスとアデス。
イデスにとって岩場と化したあの山周辺に、花が咲き誇り蝶が舞う光景は信じ難いものだった。
山の噴火。それはイデスが初めて見る光景だった。
体の奥底に眠る「何か」が、一気に噴き出し爆発したかの様に思えたその光景。
飛び散りあちこちに火種を作り、火元からゆっくり流れる「何か」がドロドロと体を侵食していく…そんな感覚だった。
辺り一面火の海と化し炎に包まれたその場に居ても、イデスは恐怖心より好奇心が勝っていた。
マグマの熱が齎すこの「現象」と、マグマの纏う「色」に無性に惹かれていたのだ。
熱により燃やされ灰となり舞い上がる様。
熱気による気流の上昇。
ドロドロと流れる赤に橙色を混ぜた様な温かさすら感じる「朱色」。
更にその「朱色」が濃くなったり薄くなったりする様は、「何か」が「鼓動」しているかのようにも見える。
イデスは、それ等全てが「美しい」と思った。
イデスはその光景に魅入られ動く事が出来なかった。
実はこの時、イデスの瞳の色に僅かだが変化があったのだ。イネスと同じ灰色の瞳はほんの少し黒味が増し、瞳孔がマグマと同じ「朱色」に変化した。
しかし、それはイレスに名を呼ばれ意識を戻した瞬間に消え、瞳の色は元の色に戻っていた為、本人は勿論イレスとイネスも気付かなかった。
アンゼスは、その時は自分以外に注意を向ける余裕がなかったので気付かなかったが、その後イデスを見て直ぐ変化に気が付いた。
だが敢えて指摘はせず、イデスがこの先どう変化していくのか見守る事にした。
イデスは噴火時を思い起こし、先程起きた変化により変わった景色とを比べてみる。
「朱色」からゴツゴツした「黒い」岩場と化した山周辺。そこに突如小さな芽が出て、「白く」可愛らしい花を咲かせる。その花達は「緑色」の小さな葉を覆い被せる様に増え、あっという間に「白い世界」を作り出した。
だがそれは、全てが白に覆われた訳ではなく、よく見ると凸凹の表面の凹み部分から芽を出しており、凹んでいる部分を埋めるかの如く花を咲かせていた。
離れた位置から見ると、白地に黒い水玉模様を描いた様にも見えるが、少し目を凝らすと水玉模様を薄い「灰色」が縁っている。
「黒」「白」「灰色」……イネスとイデスの「色」にも思えるが、イデスは首を振り「考え過ぎだ」と考えを打ち消す。
イデスのそんな思考を、アンゼスは金色の瞳を僅かに広げ見ていた。
『其方達は「ど根性○○」って言葉知ってる?
硬い地面から…有り得ない場所から芽を出すものに対して付ける……う〜ん、敬称?なんだけど。』
『『『『知りません。』』』』
『だよね、アハハハ。
あの白い花は、正にその「ど根性」だね♪
あんなとこから花が咲くなんて誰も思わないよね?
でも咲いた。あの小さくか弱い白い花が「自分の意思」で、硬い地面を突き破って地上に出る事を選んだんだ。凄いと思わない?
そして、その花達が「風」に煽られ舞い上がり、蝶に姿を変え飛び立った。それも「自分の意思」でね。
私は…神界のあちこちで起きているこの現象に「自分の意思」が作り出す「可能性」を感じているんだ。
だから今回、私は「意思」を持つものに「きっかけ」を与えた。それをどうするかは自由だ。
……「自分の意思」
それこそが「個」に繋がる第一歩なんだよ。』
『……自分の意思…』
『……個に繋がる…』
『……第一歩…』
『……飛び立つ…』
各々響いた言葉は違えど、何となくアンゼスの思いは伝わった様だった。
『あ!言い忘れてたけど、イデス!
噴火した山の山頂…いや、山の底にはまだマグマが残ってるんだけど、そこにも「意思の葉」は入ってるから、いつか目覚めるかも。
今はまだ眠ってるから何もしなくていいけど、麓の花達は「御海産」と同じで意思の集まりだから仲良くね。
しかも…「ど根性」の集まり……ふふ♪』
『え……』
軽〜っ!!
三人と一羽は思った。
『ハイハイハーイ!名前はあるんですか?』
何故かキラキラした目でアンゼスを見るアデス。
『おっと!名前か!!そうだなぁ……』
ワクワク♪ワクワク♪
アデスの期待に満ちた視線に、若干尻込みするアンゼス。
『ゴホン……え〜、それでは発表します!
その名も〜〜〜〜
「御山蝶」でーーーす!!』
『『『『やっぱり!!』』』』
『大体予想通りだわ…』ブツブツ…
『何かしら被せてくると思った…』ブツブツ…
『山と蝶…』ブツブツ…?
『……蝶』ブツブツ…?
『あの…アンゼス様?』
一人と一羽が疑問を持つ。
『何だ、アデス!』
ふんずっ!と言わんばかりに両腕を胸の前で組み、仁王立ちするアンゼス。
『御山蝶…とはつまり、山で蝶が生まれる…からきてるのですよね?』
『…ぐっ!……そ、それがどうした!!』
アデスに図星を指され怯むアンゼス。
『アンゼス様。
ここは山の麓であって、使うなら山より麓の方が良いのでは?』
『んなっ!!』
『あと、アンゼス様。』
『イ、イレスまで何だ……』
『ここは蝶しか生まれないのですか?』
『っ!!!!』
『『『『やっぱり……』』』』
『ま、まぁ、確かに?イレス(強調)の言う通り、蝶以外も生まれると思う?から、蝶限定みたいな名前はよくないな、うん。
よし!それじゃ「御山麓」に決定!!』
アデスに指摘され面白くないアンゼスは、あくまでイレスの意見として通そうとする。
『…………チッ!』
『何か言ったか!アデス!!』
『いい〜え〜。何も言ってませ〜ん……ッチ!』
『アデスッ!!』
口を尖らせ、プイっと横を向き不貞腐れるアデス……
「「「「コイツ、意外に図太いな……」」」」
……四人は思った。
ブブーーーッ!!
どこかで音がする……何かがマイナスされた様だ。
アデス…………残念っ!!
『何でっ!!』
負けず嫌いなアデス。アンゼスも実は負けず嫌い。
アデス…受け継いだのはそこか?そこなのか?
……残念!!




