第16話 動き出す神界〜後編〜
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その「鳥」はアデスに似た姿をしているが体は何倍も大きく、背にアンゼスが何人も乗れる程だ。
また、長い尾は虹色に輝き、体全体が自発光するかの如く柔らかい金色の光を纏っている。
瞳の色はアンゼスと同じ金色で、瞳孔は黒く、同じ黒色の長いまつ毛が目を縁取り、表情は優しさの中に鋭さを併せ持つ神々しい雰囲気を醸し出す。
その「鳥」は神殿の屋根に降り立つと、ゆっくり金色の羽を広げ一際大きな声で鳴いた。
『キューーーーーーーーーーーーーッ』
金色に輝く「鳥」の高く澄んだ鳴き声が、神界全体に響き渡る。
それは、既に神界に存在する全てのものに、その奥底に眠る「何か」を目覚めさせるかの様に、ドクンッと鼓動した。
神界全体が鼓動した後、金色の「鳥」は大きく広げた羽をバサッバサッっと羽ばたかせ、強い「風」を起こし大木の葉を揺らす。
その「風」に煽られザーッと一斉に葉が舞い散る。
舞い散る葉は神界のあちこち迄「風」で運ばれ、落ちた場所に根付き芽を出し、青々とした草木へと成長する。
その現象は噴火により岩場と化した山やその麓、広大な海の中も同様に。
岩場と化した山の麓では、岩と岩の隙間から小さな芽を出し、やがて白い小さな花を咲かせた。
無数に広がる岩の一つ一つを縁取る様に咲く様は、まるでアンゼスの寂しさを包み込むイレスの優しさの様にも見える。
その小さな白い花達をふわっと撫でる様に「風が」吹いた。すると辺りを白い小さな花弁が舞い上がる。
次第に花弁達の舞い方が不規則な動きに変わり、何枚かがくっ付いたと思ったら離れを繰り返し、やがて白い蝶々に姿を変えた。
蝶々は留まるものと、ヒラヒラと何処かへ飛んで行くものに分かれた。
どちらも「意思」があるのだろう。
飛び去った蝶々は、新しい居場所を探しにその場を離れ旅に出る。そして、行き着く先々で最初に触れたものの色に変わる。水→水色、木→茶色、葉→緑、花→赤や黄色等…。
留まった蝶々は、そこを自分の居場所と決めたのだろう。留まった蝶々の色は変わらない。
どちらも選んだ場所で自由に過ごす。
どちらの蝶々も良いも悪いも、成功か失敗か…そんな事は分からない。
ただ、自分の「意思」で「選択」しただけ……。
海では、海底の至る所で大小様々な草花が生え、何も無かった海底に彩りを与えた。
海の中心部辺りの海底に、丈の長い草が大きなサークル状に広がる場所が出来ていた。
その草の中から、コポコポと小さな気泡が出ている。
よく見ると、その気泡の中には小さな核の様なものがある。それ等はゆっくり浮上していくと、パチンと弾けるものが幾つかあった。
弾けた気泡から小さな「魚」が生まれていた。
別の気泡で先に弾けた気泡より少し上の方で弾けた気泡からは、違う形の「魚」が生まれていた。
生まれた「魚」達は、少しの間その場でクルクル回る様に泳ぎ、その後は各々好きな方へと泳いで行った。
どうやら、弾けたタイミングで種類が変わる様だ。
大きさも色も形も違う。泳ぐ速さも体の強度も違う。
それ等は自分の「意思」で選んだ訳ではないのだろうが、何処に向かって泳ぐのかは自分で決めている。
個体そのものは選ぶ事が出来ずとも、進むその先は自由なのだ。
神界全体が至る所で「変化」を始めた頃、神殿の上の金色の「鳥」は羽を閉じ…目を閉じていた。
暫しの間じっと動かず目を閉じ、眠っているかの様に見えるその「鳥」は、やがてゆっくりと目を開いた。
そして、神殿の中に吸い込まれる様に消えた……。
金色の「鳥」が神殿の中に入ってからどれ程の時間が経ったのか……
突然、神殿の奥から金色の眩しい光が放たれた。
直ぐにその光は収まり、中からコツコツ…と足音が聞こえてくる。
姿を現したのは二人。
一人は……
光の当たり具合で金色にも白色にも見える、腰まで伸びたサラサラの髪を靡かせ、金色の瞳で瞳孔が黒く光りまつ毛も黒く長い、中性的な顔立ちで長身の男性体……「アンゼス」だ。
もう一人は……
髪色が白髪から銀色を帯びた白銀色に変わっているが……「イレス」だ。
二人は揃って神殿の外に歩き出し、ふわっと体が浮かびゆっくりと地面に足を着ける。
色とりどりに姿を変えた神界を見つめ、目を細める。
『綺麗ですね……』
『うん。綺麗だ……』
『『……最高の気分!!』』
声と科白が重なり、二人は顔を見合わせ…笑った。
二人共に大きな口を開けて、心から笑った。
その時、神殿を包み込む様に聳える大木の上に大きな虹が架かった。
そして、沢山の白い小さな鳥達が一斉に飛び立った。
鳥達の羽ばたきで、ふわっと優しい「風」が吹く。
この鳥達も何処かに安住の地を見つけ、色を変え形を変えるのだろう。
ーー其方達も自分の「意思」で見つけるといいーー
『『アンゼス様〜!イレス様〜!』』
イネスとイデス、アデスも二人の後に続き此方へ向かって走ってくる。
『賑やかな二人の登場ですね』
『そうだな。
暫くは質問攻めで休めそうにないな…』
『ええ。話題に事欠きませんね。』
『ふふ……それは嬉しい悲鳴だな。』
『ええ。嬉しい悲鳴です。』
こうして、神界は新たに動き出したのでした……
<お詫び>
あと数話で連載に一旦区切りをつける予定です。
書きたいエピソードが増えたのと、自分の中でもう少し細かい設定をしたいという理由から、頭の中を整理する時間を下さい。( ´>ω<)人…ゴメンナサイ




