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創造神と愉快な仲間たち  作者: 川森 朱琳
第一章 動き出す神界
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第15話 動き出す神界〜前編〜

お読み頂きありがとうございます。


神界が大きく動き出します。


イデスはアデスというパートナーを得て、毎日何処に行くにも一緒に過ごし会話した。


アンゼスの指示に従い、体を動かすのは少しずつで会話を重視して過ごした為、アデスとの意思疎通がかなり出来る様になり、言葉も随分話せる様になっていた。


アデスの口調は、基本的にはイレスに似て丁寧だった。また、世話焼きなところもイレスに似て、日々せっせとイデスの世話を焼いている。


しかし、イデスが考え事に夢中になり過ぎて無口になったり、アデスの話を聞いていなかったりすると喝が入り、延々と説教が続く。

そんなところもイレスに似ている。


そして、そんなアデスをイデスは大好きで、安心出来る存在だと思っている。




一方アンゼスは……



『なぁ、イレス……』


『何ですか?』


『……此処は…変わらないなぁ……』



神界の中心とも言える場所に位置する小高い場所。

アンゼスの休息場として、イレスが提案し造った「神殿」だ。


イネスとイデスが生まれ賑やかになった神界で、静かにゆっくり休める場所を…とイレスが考えたのが発端で、当初はアンゼスだけの特別な場所のつもりであったのが、一人は嫌だとアンゼスに拒絶された為イレスも共にこの「神殿」に入る事になった。


結果的にアンゼスにとって「特別な場所」となる。

以前からイレスに定期的に取る様言われていた休息をこの「神殿」で取る様になり、その際は常にイレスが「神殿」に控えているのでアンゼスはイレスの気配を感じながら安心して休めた。そして、その「安心感」がアンゼスの疲労回復の速度と質を向上させ、正に「相乗効果」とも言える結果を生んだ。


アンゼスとイレスは、時々この「神殿」の前に広がる神界の景色を眺めながら、これまでの事やイネス、イデス、最近に至ってはクジラやアデスの事を話していた。


イレスは、いつも通りの何気ない話をするのだと思っていた。


この時迄は……



『そうですね。此処はアンゼス様と私の大好きな場所ですから、この景色がいつまでも変わらない様に大切にしていますよ。』


『……うん。私もこの景色は大好きだ。でもな……』


『何か気になりますか?』


『……此処は私が初めてイレスに名前を呼ばれて嬉しさから出来た、歓喜の象徴みたいな場所だけど……


……気持ちって変化すると思わないか?』


イレスはアンゼスの言葉に二の句が告げれなかった。


『……アンゼス様…それは…

…………どうゆう意味でしょう…』


『う〜ん、上手く言えないけど……

私自身、あの時は最高に嬉しかった…正に歓喜の瞬間だな。でも、その後は…楽しい…とか…ワクワク…とか…気持ちが変化して、噴火させた時は無意識ではあるけど、寂しい…一人が怖い…と思った…だから噴火が起きたんだよな。


良くも悪くも気持ちって変化すると思うんだ。

……歓喜のままではない。


だから、此処も変わって…変化してもいいんじゃないかと思うんだ。


いや、変化させたいと思ってる。

イレスはどう思う?』


イレスはショックだった。

アンゼスの言いたい事は理解出来るし、何もおかしな事ではない…とは思う。

しかし、心が納得しない…

したくないと受け入れてくれない……



『……イレスは変化が嫌か?』




『…………………………。』




『……………………そうか。

いいんだ、ごめん。変な事言って。』




『…………………………嫌なのではなく……怖いです。』


『……怖い?』


『……はい、怖いです。

アンゼス様のお心が変わってしまう気がして……


……それが怖いのです。』


『……変わるのが怖い…か。


確かに変わるのは……怖いな。


私も噴火を起こした時…

多分……そんな気持ちだったと思う。


真っ暗な中に自分一人しかいなくて、何処からかイレスとイネス、イデスの楽しそうな声がして……


私は此処にいるのに、誰も気付いてくれない…

気にしてくれない…

私はまた一人ぼっちになるのか……


そう思ったら物凄く怖くなって……

怖い気持ちが限界に達した時……


噴火が起きた…と思う。


だから、イレスが怖いと感じる気持ちは分かる。』


イレスはあの時のアンゼスの状態が本当はどんな風であったのか、実際のところは知らない。


ただ「寂しい」「嫌だ」という様な感情が伝わった…気がして「きっとこうだろう」と自分なりに勝手な解釈をして、慮り…「同情」したのだ。


そう「同情」したのだ……


だが、イレスはこの時点ではまだ気が付いていない。


「同情」ではアンゼスの気持ちを理解出来ていない事を…

「同情」は「共感」ではないのだという事を……



『アンゼス様……

では、此処は…『でもな……』』


イレスの言葉にアンゼスが被せる様に続ける。


『……でもな、イレス。


真っ暗な中で孤独に怯えていた私の頭の中に、イレスの声が聞こえたんだ。

何度も何度も私を呼ぶ、イレスの声が……。


それで顔を上げ……目を開けたんだ。

そしたら、泣きそうな顔で必死に私を呼ぶイレスがいた。


イレスが私を抱きしめて、ここにいる、ずっと傍にいると言ってくれた。


それで私は……怖くなくなったんだ。』


そこまで言って、アンゼスは一旦口を閉じイレスに向き直り視線を合わせる。


『だからイレス……次は私が言うよ。


私はここにいる。ずっとイレスと一緒にいる。


だから……怖くない。』


『……っ!!

アンゼス様……


……ぅ……ぅぅ……』


アンゼスは、俯き顔を両手で覆い蹲るように体を小さくしたイレスを抱きしめ、背を優しく撫でる。


イレスは声を出さず、体を小さく震わせ……ぅぅ…っと嗚咽を漏らす。


『イレス……変わる事は確かに怖い。

でも、イネスやイデスが生まれ…一人ぼっちだった私は…今は四人だ。それから、クジラ達やアデスもいる。毎日が賑やかで楽しい。


これも…変化……だよな?』


『……ぅ……ぅ…………


……アンゼス様

……これからも私と一緒にいてくれますか?

……傍にいてくれますか?』


『勿論だ!私はイレスがいないと寂しくて、どうしていいか分からないんだぞ!

一人ぼっちだった時の私はどうやって過ごしてたか忘れてしまうくらい……


もう一人には戻りたくないんだ……』


最後の言葉を聞いてイレスはハッとする。


この瞬間イレスは、漸く「同情」ではなく「共感」した。



『アンゼス様……分かりました。


一緒に……変化を楽しみましょう。』


『イレスっ!!

ありがとう、イレス!

其方とならどんな変化も楽しめる!』


『私もです、アンゼス様。』



二人はガシッと強く抱きしめ合い、互いの背をポンポンと撫で叩く。


二人の胸の奥がこれまでよりずっと温かくなるのを感じると、次第に二人の体からキラキラと光が溢れ出す。そして、ゆっくりその光が二人の体を包み込むと、二人の体全体が一つの光の塊となった。


次の瞬間……


光の塊が勢いよく上空に飛び上がり…弾けた。



弾け飛んだ光は神界全体に広がり、次の瞬間以前からある太陽と月と呼ばれていた二つの球体が輝き始める。


太陽と呼ばれていた球体は燃えるように強く金色に輝き、月と呼ばれていた球体は静かに見守る様に優しく白く輝きだした。


二つの球体は、まるで互いに引かれ合う様に吸い寄せられ、丁度アンゼスとイレスが住まう神殿の真上に来ると一つに重なった。


この時、神殿の下からゴゴゴ……と音がして地面が隆起したかと思ったら、ムクムクと神殿を持ち上げる様に巨大な大木が伸びてきた。

みるみるうちに枝が伸び、葉が繁り、神殿を護るように包み込んだ。


そして、一つに重なった球体が一際強く輝き、その輝きの中から一体の金色に輝く「鳥」が現れた。




長くなったので、前半後半に分けました。


もうすぐ第一章終了になります。

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