第13話 イデスの進化①
お読み頂きありがとうございます。
暫く一話ずつの投稿になります(*;ω人)ゴメンナサイ...
イネスがクジラ達と楽しく過ごしている傍ら、イデスはと言うと……
クジラ達が動く事で起きる波がザザー、ザザーと打ち寄せる砂浜で、五体のクジラの背に順番に跳び乗り楽しそうに何やら喚いているイネスの様子を何となく眺めていた。
少しばかりの寂しさを感じつつも、意識はクジラ達が起こす「波」や背から噴き出る潮に向いていた。
『クジラが動くと波が出来る…潮は自分の体から噴き上がるという事は自分の意思で?
それに最近はクジラ達と念話が出来る様になったとか…ふむ。アンゼス様にお願いしたら、俺にも何か創ってくれるだろうか……。』
『何を創ってほしいの?』
背後から突然声がしたと思ったら、そこにはニコニコと笑うアンゼス様がいた。
『あ、アンゼス様。
何でもないです。クジラが起こす現象に少し興味があっただけで…特には……。』
正直に言うか一瞬迷ったが、クジラが羨ましくて言ってるみたいに思われるのも嫌だったイデスは、何でもない、クジラの現象に興味があっただけだと誤魔化した…が、そんな誤魔化しがアンゼスに通じる筈もなく…
『クジラねぇ〜』
『はい。クジラの起こす現象が…です。』
『うん!確かに面白いよね。
イデスもクジラみたいなのほしいの?』
『えっ?』
一瞬目を輝かせてしまい、咄嗟に目を閉じ首を横に振る。
『……そうゆう訳ではなく……ただ……』
『うん?ただ?何?』
『…………その…水の中ではない場所で、クジラの様に大きなものが動くとどうなるのだろうか…と思いまして…』
『イデスっ!!
それは面白いっ!!よし!やってみよう!!』
『……ふぇ?』
アンゼスの言葉に驚いて変な声を出してしまったイデス。しかし、同時に「いいの?」と期待もしていた。
『面白そうじゃん!!やってみようよ!!
あ〜、でもあの大きさを何体もその辺に創ると、さすがにイレスに怒られそうだから…どうしようかなぁ……う〜ん……』
そう言って、何やら考え込んで黙ってしまったアンゼス。そして、ブツブツと何かを言い始めた。
……どうやらイレスと念話をしてる様だ。
イレスとの念話が終わった様で、アンゼスはニコッと笑いイデスに声を掛けた。
『イレスが、いきなり大きいのは良くないから、とりあえず小さいもので試してみて、それから徐々に大きくしたらどうかって言うんだけど、イデスもそれで良い?私としても、また噴火の時みたいにここをめちゃくちゃにしたくないしね♪』
と、苦笑いで自分の頬をポリポリと指先で掻くアンゼスを見て、少し切ない気持ちになる。
『勿論です!ありがとうございます!!』
『よし!それじゃ、場所を移動して実験開始〜!!』
ガシッと手首を掴まれたと思ったら「行くよ♪」の言葉と同時に、自分の体がふっと軽くなり目の前が一瞬ぐにゃりと歪む。
あ…転移…
と、理解した時には別の場所に移動していた。
そこは先程の話にも出た、噴火した山の麓だった。
『ここでいいかな…。
この辺なら多少壊しても問題ない…と思うんだよね。空間創っても良いんだけど、それじゃ他との関係がどう影響するか確かめられないから意味ないし。
ま、被害があっても最小限で済むとしたら、ここしかないかな。
良いよね?イデス?』
『も、勿論です!!』
『よし!じゃあ、どんなものがいいか形でも何でもいいから、イデスの希望を聞かせて?』
『よ、宜しいのですか?』
『うん!クジラの時もイネスの意見聞いて、それを参考に創ったからね。
今度はイデスの番だよ♪』
『あ、そ、それなら……』
現象について考えていただけで、具体的な形等は考えておらず、どうしようかと悩んむイデス。
その時、白い「鳥」が視界に入る。
あれは…確か「鳥」とかいう名前だったか?
羽を羽ばたかせたら……!!
『アンゼス様!!
あれを見て下さい!!あの「鳥」はどうでしょう?
羽を羽ばたかせたら、波に近いものが出来るのではないでしょうか?』
アンゼスはイデスの指す方向に目を向け、白い鳥を見つけると目を大きく開き……キラキラさせた。
『おおーーーっ!!
いいね!いいじゃん、イデス!!
じゃあ、大きさはどうしようか?あのままでは小さ過ぎるし…う〜ん……』
またも考え込むアンゼス。
イデスも一緒に考え出したが、この時のイデスは大きさではなく別の事を考えていた。
『アンゼス様…
大きさもそうですが、創り出したものは何処に住まわせるおつもりですか?水中以外ですと、木の上や山の中、地面……それとも……』
『っ!!確かに!!』
『……波とは…形がある様でない…波…現象…羽…動くと起きる…現象…波…』
イデスは創り出すものの「形」ではなく、「実験の目的」を考えていた。イデスの中では「形」はどうでもよく、「鳥」についてもたまたま目に付いたから言ってみただけなのであった。
アンゼスは、イデスの意見…「鳥」を見てひと目で気に入り「形」は決定になっていた。
その為、具体的なフォルムや大きさに意識が向いており「目的」は忘れていた。
そこでアンゼスは、再び意識を「目的」に戻し、どうすれば「波」を感じられるかに思考を集中させた。
『波を感じる…目視出来る…波の動き…波動…波動…』
ブツブツ言いながらアンゼスの頭の中は、これまで自分が創り出した「もの」「現象」等がフルスピードで駆け巡り、組み合わされていた。
目を閉じていない事が幸いであった。
『……こんな感じかな。』
ポツリと呟き、そのままアンゼスは目を閉じた。
徐々にアンゼスの体が金色の光に包まれ、全身が金色に染められる。そして、虹色の光が放たれた。
あまりの眩しさにイデスは目を閉じた。
目を閉じ視界は真っ暗な筈なのに、強過ぎる眩さのせいか薄らと明るさを感じる。
その感覚は、考え事をしていて何かを閃いた時の感覚に似ていた。
その感覚をイデスは何となく「知ってる」気がした。
イデスは目を開くと、目の前に「何か」が佇んでいる事に気が付く。
『どう?イデス。なかなかいいでしょ♪
イデスをイメージした「鳥」だよ。』
目の前にいるそれは、イデスと同じ位の体長で目つきは鋭く、じっと此方を観察する様に見つめている。体全体は黒い羽で覆われて細身…全体的にシュッとした印象だ。
瞳はイデスと同じ灰色で、目尻にだけ赤いラインの様な模様がある。嘴は体とは反対に真っ白だが、こちらもシュッとして見るからに鋭そう。
更に特徴的なのは、尾が長く五本に分かれており、上に向いてゆらゆら揺れていることだ。
その尾はよく見ると、長さ15cm程の葉の様な形のものが繋がって出来ており、外側が黒で中心にいくにつれ瞳と同じ灰色になっている。それが10枚…全長にして1.5m程の長さで、その尾がピンと立つと背丈はイデスより高くなる。
アンゼスが想像した外見は大鷲だった。そこにアンゼス独自の形を組み込んで、色はイデスをベースにした。嘴が白いのは、イネスの要素を少し入れたからだ。
これが俺をイメージしたもの?
嘘だろ……めっちゃカッコイイんだけど……
マジでタイプなんだけど……
イデスが心の中で呟くと、目の前の「鳥もどき」は少し俯き薄ら頬を赤らめる。
この「鳥もどき」は、誕生して最初に目にしたのがイデスで、「鳥もどき」もまたイデスをひと目で気に入ってしまったのだ。
結果…念話が出来る様になっていた。
お互いに一目惚れしたからなのか、何故いきなり念話が出来るのか理由は分からないが、そもそも念話は親密度が上がる事で出来るようになる為、恐らくそうゆう事なのだろう……。
但し、念話と言ってもまだ言葉を覚えていないので、会話ではなく何となく気持ちが分かる…程度のもの。
それでもアンゼスにとっては異例の事で、とても興味深い状況でもあった。
『それじゃあ、名前を付けようか。』
『え!?……私が付けるのですか?』
『うん。そやつ、どうもイデスの事気に入ったみたいだし、名前付けてあげれば親密度も今より更に上がると思うよ。』
『そう…なんですか?
……気に入ってる…親密度が上がる…』
何故かポッと赤くなるイデスと「鳥もどき」。
何だこの空気…と苦笑いで眺めるアンゼス。
『……で、では、僭越ながら私が名前を付けさせて頂きます。』
暫し考えた後……
『……決まりました。』
イデスは「鳥もどき」の元に近付き…
『お前は今から「アデス」だ。宜しくな、アデス。』
そっと頭に手を乗せ、優しく撫でる。
撫でるイデスの手に自身の頭を寄せ、気持ち良さそうに目を閉じるアデス。
イデスとアデス、両者の胸の奥が温かくなる。
どうやら親密度が上がった様だな…とアンゼスは感じ、今後の変化が楽しみになる。
実はこの一連の流れを、アンゼスからイレスに映像で伝えていた。
念話の進化版だ。
映像が送れる様になってからは、アンゼスが何処で何を創ったか直ぐにイレスに伝える事が出来る為、廃棄物収集が劇的に楽になった。
アンゼスの創造は、何時だってイレスを想う気持ちから生まれるのだ。
『アデス』
『キュウ』
『アデス〜』
『キュウ〜』
『アデス♪』
『キュウ♪』
新たなバカップルの誕生……
そんなラブラブな一人と一羽を見て、アンゼスはイレスの元に早く帰りたいと思うのだった…。
『ーーーックシュンッ!!
何かゾワゾワする……』
離れた場所で呟くイレス……
新たなバカップル(笑)…仲間の誕生回でした。
イデスはアンゼスの黒の領域(発想、負の感情)を強く受け継いでいます。
イネスは白の領域(適応力、楽観性)を強く受け継いでいます。




