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儚い宿主と始まる異世界生活

 俺は思い浮かべた条件で真っ先に該当した人物、いや産まれたばかりの赤子に取り憑くことに決める。

 女神レイケンの戯れに付き合う気もなかったし、赤子の脆さ故に呆気なく終わっても構わないとも思った。

 そして人を選ぶ権利は本当に個人の自由なようで、拒否されることなく赤子の守護霊になると決定された。

 この場にいる全員が取り憑き先を決めると、何の前触れもなく異世界エーレへと俺たちは飛ばされた。

 産声が上がる部屋の中で、宿主がセージュと名付けられる瞬間から守護霊生活が始まる。

 嬉しそうに笑い合う女性達に見守られながら、憔悴している女性と喜び褒め称える男性。そして小さくか弱いながらも全力で生命の声を上げるセージュ。

「選んでおいてアレだけど、場違い感すげぇな。実体があったら全力で不審者だわ」

 ホントに周りから見えていないのか不安に思いつつも、霊体であることに早速感謝をしてしまう。

「まっ、とりあえず誕生おめっとセージュ。わかんねぇかもしんねぇが、コレからよろしく頼むぜ相棒」

 苦笑しながら手を上げる俺なんて知りゃぁしないと、セージュは懸命に泣き続けていた。

 無事に異世界エーレに渡ったがいいが、特にやることもやれることもない。とにかくセージュがゆっくりと成長していく様をただただ見守る日々が続いた。

 しかしこの状況は何っていうんだろうな。異世界転生っていうには生き返っていないし、異世界転移っていうにも生きていない。まぁどっちか選ぶんだとしたら転移の方だろ。生死はともかく世界を移動してんだからな。

 時にセージュの危なっかしい行動や病気にヒヤヒヤしながらも、女神から与えられた権限を確認する。

 テレビゲームみたいなものと言っていたとおり、ゲーム画面みたいな能力が何の説明もなく与えられていた。

 マップって言うのがわかりやすいかな。周辺の俯瞰図と生命体の位置が確認できるようになっている。

 それからエーレへ転移した守護霊の残り人数も確認できるようになっている。ありがたいような、そうでもないような。

 けど人数が多いと不思議と安心できるし、少なくなったら焦っちまうんだろうな。案外女神が俺たちの危機感を煽る為に用意した警戒装置なのかもしれない。

 今のところ数は減っていないけど、一番最初に減らすのは俺かもしれない。

 子は天からの授かり物っていうだけあって、ちょっとしたことでコロりと逝っちまう。

 異世界セージュはよくある西洋風のファンタジーな世界だ。険と魔法のテンプレート。当然回復魔法なんかもあるけれど、使い手は多くなく庶民には無縁の代物だ。

 仮にお目にかかれたとしても料金がバカ高い。薬も同様だ。

 だからある程度成長して丈夫になるまで、子供は安心できない。命の火種が小さすぎていつ消えてしまうかわからないからな。

 不意にセージュが笑いながら小さい手を振るから、毒気を抜かれながら手を振り返す。すると満足したようにキャッキャと笑った。

「何がおもしろいんだか。何もないところに手を振って笑うなんてな」

 間違っても俺は見えちゃいないはず……見えてないよな。宿主だからもしかしたら存在は感じてるかもしれないけども。

 あの女神の説明からすると完全に幽霊というか、俺たちは見えていない存在として転移させられたはず。

「まっ、いっか」

 転移してから一ヶ月ぐらい。俺は狭い範囲の中でのんきに異世界生活を過ごしていた。世界の情勢なんて知りもせずに。

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