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僕は出来損ないだが、ヒーローだ!!!!

掲載日:2024/12/12

話はフワッとしています。

寛大なお心でお許しを…!

_フワリ学園 1−Bの教室にて


「ヒヒヒッ、大人しくしとけよ?」

 意地が悪そうな笑みを浮かべるハゲの侵入者。

「ひっ…!」

「何でわたくし達がこんな目に遭わなきゃいけないの…?」

 ポロポロと涙を流すのは今当に侵入者に攻め込まれているフワリ貴族学園の生徒達。

「おぉ!胸がデケェ女が居るぜ!!」

 ツカツカと1人の女子生徒に他の侵入者が歩み寄る。

「近寄らないで!!」

 両手を後ろに縛られているので、抵抗も虚しく感じる。

「おい、女で遊んで良いか?」

 先程のハゲがリーダーらしき厳つい顔を袈裟斬りにされた跡があるオッサンに聞く。

「好きにしろ」

 その言葉で他の侵入者達が女子生徒に躙り寄る。

「キャアッ!来ないで!!」

「お母様…助けて…!」

 両手を縛られたままバタバタと足掻く者と両親に助けを乞う者。

男子生徒は明らかにホッとしていた。まぁ、貴族なので自分に被害が無くて安心したのだろう。

「まずはコイツかな」

 1人の女子生徒の服を剥ぎ取ろうとした。

「イヤァ!!!」

 『南無三』と皆が諦めかけた、その時…!

「ちょっと待ったー!!!」

 突然、勢い良く扉を開けた大きい音と共に少年の声が教室に響き渡った。


❖ 2日前


「最近、我々貴族を狙う不届き者が居るらしいわよ」

「大丈夫よ。だってここのセキュリティは王国一だもの」

 『おほほほ』と楽しそうに笑うご令嬢方。 

「おらよっと」

 生徒会のメンバーの男子生徒が貴族学園の制服を着た1人の少年の足を引っ掛ける。

「の゙わっ…!」

 優雅さをモットーとしたフワリ貴族学園に相応しくない声と共に『ズベシャッ』と頭から転ぶ。

「見て、今年入学してきた『出来損ない』よ」

「彼、貴族が使えて当たり前の魔法が使えないんだって」

「まるで、平民ね」

「平民以下だろ。普通に働きも出来ないんだから」

 嘲る様に生徒達が笑う。

「ハッハッハッ、僕とした事が転んでしまったよ!」

 起き上がり明るく笑うのは先程転ばされた、長い赤髪を低く束ね、夜空の様な紫色の瞳を持つ。この少年は辺境伯の息子『ルウィル・シュナールル』だ。

「いやはや、馬車に乗り遅れてしまってね。こうして鍛錬がてら走って来たんだ。あ、君。僕が思い切り蹴飛ばしてしまったけれど…大丈夫かい?」

 自分に足を引っ掛けた生徒会メンバーを心配する。

流石は、冷徹無慈悲・悪逆無道の辺境伯とその妻から生まれたとは思えないお人好しだ。

「痛い!こんな野蛮人に踏まれた足が痛いなぁ!!!」

 貶す為に大袈裟に足をさする。

「やはり…!失礼する!」

 膝の後ろを右手で支え、抱き上げる。所謂、お姫様抱っこだ。

「え?は!?降ろせ!!!」

「足を怪我しているのだろう!保健室に…!」

 因みに僕は至極真面目だ。 

「はぁ!?嘘に決まってんだろ!!馬鹿じゃねぇの!!?」

「誰かー!!!この方の担任の先生に1限目の授業はお休みする事を伝えてくれないかーー!!!!」

「聞けよ!てか、五月蝿い!」

「あ、私が伝えておくよ」

 ププッと笑いながら、『先生に伝えとく係』に立候補したのはこの学園の生徒会長であり、フワリ王国の第1王子『アイザル・フワリ』。

短い金髪に輝く碧眼の王道のザ・王子様だ。

「ありがとう!」

 お礼を言い、猛スピードで保健室に向かった。


❖ 次の日の放課後。


《ヴーヴーヴー!侵入者あり!侵入者あり!》

 

「何!?」

「何だ?」

「侵入者!!?」

 キャアキャアとパニック状態に陥る。

「落ち着けーい!」

 ドドンとスクールバッグを肩に下げたまま仁王立ちするのは僕だ。

次第にザワザワが落ち着いてくる。

「侵入者が来た時に備えて訓練しただろ?その道を通って逃げろ。僕は先生方を呼んでくる」

 僕にしては珍しい落ち着い声音で話す。

「わ、分かった!皆、逃げよう!!」

 我先に、と避難通路を通って逃げる。

   

(さて、僕は職員室に…!)


「あ゙ぁ゙ん゙?ガキが1人しか居ねぇじゃねぇか?」

 街のゴロツキより、たちが悪そうな中年の男性が5人入って来た。

「おい、お仲間はどうした?」

 

(完全にこちらを舐めているな。好都合だ)


「僕1人だ。皆はもう随分前に帰ってしまっている。僕は忘れ物を取りに来ただけだしな」

 大嘘をスラリとつく。

「ちっ!まぁ、ガキ1人居ただけマシか」

 すんなり信じてくれた。


(ふむ、学園(こちら)の情報はあまり知らないのか)

 

「まぁ、とっとと殺すか」

 鉄バットや刃物を取り出す。


(見逃してはくれなそうだ)


「はぁ〜、何人で来た?」

「教える訳ねぇよ!」

 僕に鉄バットを振り翳した。

「もう一度聞く。何人で来た?」

 片腕でそれを止める。

「教えねぇよ…!」

 『奪われてたまるか』と言わんばかりに力を込めてきた。

「そうか」

 グンとそれを持ち上げ、中年男性ごと宙に浮かす。

「残念だ」

 ドゴンと床に倒す。そのまま失神した様だ。

「この野郎!!」

 刃物を持った男が僕目掛けて一直線に走って来た。

「………」

 スッと横に避けた時に頬を切られたが、奪った鉄バットで後ろから相手の頭を強く打つ。

「がはっ…!」

 バタリとその場に伏した。

「「う、うお〜〜!!」」

 刃物を持った他の男達が僕に斬りかかるが全て避け、相手の頭や顎を鉄バットで強く打ち、先程の男と同じく失神させた。

「さて、まだやるか?」

 軽く凄めば鉄バットを持った他の男は地に伏した。

「さ、30人程できました…!1クラス3人で襲っています…!どうか、お許しを…!」 

「ありがとな」

 『ゴン』と鉄バットで相手の頭を強く打った。

「まずは、職員室に行くか」

 『う〜ん』と背を伸ばし、軽く屈伸する。

「よし!頑張れ、僕!!」

 ダダダッと職員室まで全力疾走。

「先生!!!!」

 ガラリと扉を開けると、先程のゴロツキの仲間が3人居た。

「ん?何だ?ぐあっ…!」

「がはっ…」

「ぐえっ!」

 サササッと職員室に居るゴロツキ全員を先程と同じ方法で失神させた。

「大丈夫ですか!!?」

 急いでスクールバッグに入っているククリナイフを取り出し、鞘から出す。

「え?」

 ザクリ、ザクリと先生方を後ろ手に縛ってある縄を切る。

「あ、ありがとう」

「お礼は結構です。僕は1年の生徒達を助けに行くので、先生方は2年と3年の生徒達をよろしくお願いします」

 ペコリと頭を下げる。

「分かった」

「では、ご武運をー!!」

 ククリナイフを仕舞い、鉄バットを右手に持つ。そして、猛ダッシュで職員室からB組の教室に向う。

その時、女子生徒がハゲの侵入者に迫られていた。

勢い良く扉を開ける。

「ちょっと待ったー!!!」


(酷い!!女性に迫るなんて…!)


「誰だ?お前?」

 怪訝そうな顔をする。

「僕はこの学園で『出来損ない』と呼ばれている者だ!しかし!ヒーローでもある!!!」

 ドドンと胸を張る。

「プッ、アハハッ!ヒーロー?バッカじゃねぇの!?そんな事は無意味だろ!」

「「「アハハハハッ!!」」」

 ケタケタと笑われてしまった。


(あの人は、こんな男にバカにされた程度では怒らない…)


 脳裏にこびり付くのは、あの強烈な憧れ()、あの明るい笑顔、あの優しく頼もしい声音。そんなあの人は僕を辺境に蔓延る魔物から鍬一本で自身の身を顧みずに助けてくれたのだ。勇者でも騎士でも、ましてや僕の親でも無い、ただただ普通の領民だったのに。

パンッと両頬を両手で叩く。

「あの人と肩を並べられる『ヒーロー()』になるまで、バカにされても、貶されても、研鑽を積む事を疾うの昔に決めているんだ!!!」

 走り、女子生徒に迫っていた男を蹴飛ばす。そして、後ろに居た男共々壁に打ち付けあ。

それだけで、男達は失神した。

「コイツ!」

 リーダーらしき男性がノコギリをブンブンと振り回すと1人の男子生徒に当たる…。

「っ…!」

「…!」

 男子生徒の顔色が悪くなった。それはそうだろう。僕が庇い、肩から袈裟斬りにされたのだから。

サッと肩に下げているスクールバッグを下ろし、両親に必ず持たせられる鞘に仕舞ってある剣を取り出した。

「僕は魔法が使えない。だが…!」

 カチャリと鞘にしまったままの剣を構える。

「努力なら人一倍出来る!!」

 ダンッと踏み込み一気に間合いに入る。

「なっ…!?」

 

(狙うは、顎…!)


_ゴンッ 


「グハッ…」

 パタリとリーダーらしき男が倒れた。

「お、」

「「「おぉーー!!」」」

 周りから歓声が上がる。

「ありがとう!」

 感謝を口にする者。

「馬鹿にして、ごめんなさい!助かりましたわ」

 謝る者が居た。

「もうお前はヒーローだよ!!」

 と言い抱き着いて来た男子生徒も居た。

「痛っ…!」

 苦悶に顔を歪める。

「あ、ごめん…」

「あっ、いや、違うんだ。これは先程の傷では無く…。…その…父との朝稽古で切り刻まれ、突かれまくった傷が痛んだだけで…」

 恥ずかしいと思い顔を隠す。

「「「え?」」」

 周りの生徒達がギョッとする。

「…傷を受けてしまい、果てはそれが痛むとは…弱すぎる自分に反吐が出る…!」

 

(明日からはもう少し鍛錬を増やそう…!)


「え、お前のお父様は…その…稽古で本物の剣を…?」

「あぁ」

 何を当然の事をと思い首を傾げる。

「怖っ!お前、よく生きてるな!!?」

「お!褒めてくれて嬉しいぞ!」

「「「褒めてない!!!」」」

 総ツッコミを受けてしまう。

「さて、次はC組を助けに行かなくては…!」

 クルリと踵を返し、走る。

「うぁ?」

 廊下に出た所でグニャグニャと視界が歪む。

スッと下を見ると紅い液体が自分の体から溢れていた。


(しまった…!動き過ぎて朝稽古の傷が開いたか…)


_バタリ

 

❖ 2日後 シュナールル家の客室にて


「貴方のお陰でA組のクラスに居た娘が助かりました…!ありがとうございます!」

「い、いや、僕は…」

「命の恩人です!」

「だ、だから」

「本当にありがとう!」

 大勢の大人達に代わる代わるお礼を言われる。

 

(うぅ…僕はC組を助けられなかったのに…!先生方が対処してくれたから良かったものの…!)


 大人達がやっと去っていった頃に僕は『悔しい』と言う思いと格闘していた。

「不甲斐ない…」

「肝が冷えましたよ。ルウィル」

 背筋をピンと伸ばし、お茶を持って来たのは僕と同じ髪色と意志の強いオレンジ色の瞳を持つ母だ。

「母様…!」

 サッと立ち上がる。

「座っておりなさい」

 トンと押されただけで立ち上がれなくなった。

「やはり、不甲斐ないな…」


(母様の掌1つで動けなくなるなんて…!)


「ほら、あなた。謝るなら今ですよ。大男がうえんうえん泣いて私は困ったのですからね。さっさと終わらせなさい」

 その声でヒョコリと顔を現したのは、青色の髪に僕と同じ紫色の瞳を持つ大男だ。

「お前を戦場から遠ざけようとして…。怖がらせる為に切り刻んですまなかった…」

「そんな!頭をお上げ下さい!父様!」

 ブンブンと顔を横に振る。

「しかし…!」

「僕は感謝しか無いです。父様のお陰で軽々ゴロツキ共を倒せるようになりましたしね!」

 ニコッと笑って見せると漸く顔を上げた。

「そ、そうか…!良かった」

 ホッとした様子の父。

「やぁ。第1王子であるこの私をまず先に助けに来なかったルウィル君」

「「「わぁっ!で、殿下…!」」」

 家族3人同じ反応をする。

「何故ここに!?」

「君達の侍従に入れて貰ったよ」 

「なるほど…」


(あっ、そういえば…)


 殿下は2年生の為、効率を重視して後回しにしていた事を思い出した。

スゥッと顔が青くなる。

「申し訳ありません!!」

「許す変わりに生徒会の『私の友達枠』として入ってくれないかな?」

「分かりました!それで許してくれるのなら…って、え?」

「二言は無いよね?」

 ニコッと笑う。


(嵌められた感が拭えないが…仕方ないな)


「はい!光栄です!」

「ふふふ。それと、侵入者の中にはフワリ学園の元教師が居てね。パスワードを知っていた為、侵入出来たらしいんだ。その辺りも強化しておいたからもう安心して良いよ」

「ありがとう御座います!」


_これから、殿下に振り回されつつヒーローになるべく研鑽を積んで行く。

  

           終わり


面白かったな、良いなと思ったら『☆・良いね・感想』よろしく〜!してくれたら狂喜乱舞します!!

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