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冷たい妹と図書館

夜空を見上げてひとしきり悩んでいると、ポケットのスマホが振動する。取り出してみてみると、覚えがないアイコンからメッセージが送られてきていた。不思議に思い、アイコンの横に目を滑らせるとそこには『雨旗 優』と表示されていた。一は自分の心臓のテンションが上がっていくのが分かった。慌ててメッセージをタップして内容を確認する。

『明日の放課後、図書館で会議するから。入り口前で集合。』

優とメッセージでやり取りするのは初めてだ。クラスのグループから自分を追加したのだろうか、変な答え方にならないよう慎重に返信する。一が既読をつけてから10分後である。

『了解。』

一からすれば限界までひねり出した答えではあるのだが、メッセージの向こうで優が枕をぶん投げているとは分りもしない。優からのメッセージが嬉しくて、一は無意識にニヤニヤしながら公園を出た。


「キモ、なにニヤニヤしてんの?」

一が玄関のドアを開けると、そこには妹の愛名がいた。高校一年生であり、通っている高校は一と同じで安祥高校である。バスケのスポーツ推薦で入学しており、毎日遅い時間まで練習している。小学生の頃までは素直でかわいい妹だったのだが、中学生で軽めの反抗期に入り、高校生になると部活での疲労をもろに一と父親にぶつけるようになった。母親には一度ぶつけて弁当がしばらくなくなったことがあるので、それ以来一度もしていない。

「いやー、優と久しぶりに話せたと思ったら、まさかの同盟を結べてな。最高だよー。」

スリッパを脱ぎ、キッチリとこちら向きに揃える。妹を前に意気揚々と語る一であったが、妹の顔は見えていない。

「ふーん、まあよかったじゃん。じゃあね、クソ兄貴。」

久しぶりの優しさはすぐに消え、突然の暴言が一を襲う。何か言い返そうとしたときには、愛名は二階へと駆け上っていた。軽くため息をついて、一はリビングのドアを開ける。

自分の部屋へと帰ってきた愛名はベットへ豪快にダイブする。まだ髪のケアは終わっていないが、二、三回寝返りを繰り返した後、天井を見上げる仰向けの姿勢で止まった。

「いつまでウジウジしてんだよ、バーカ。」


一は図書館の入り口前で待機していた。10分ほどたつがまだ優は来ていない。不思議に思いながらきょろきょろしていると、学校の方から小走りでこちらに向かってくるのが見えた。

「ごめんごめん、ちょっと資料を集めててさ。」

「資料?」

一が首をかしげる。

「まあまあ、とりあえず中に入ろうよ。」

優がいたずらっぽい笑みを浮かべて、図書館へと入っていく。不覚にもドキッとしてしまった一であった。わかりやすい自分に悪態をつきながら一も図書館へと入る。

「予約していた雨旗です。会議室の鍵をお借りしたいんですけど。」

「はい、確認しますので少々お待ちください……はい、確認が取れました。こちら二階に上がっていただいて奥から二番目の部屋となっております。鍵は閉館時間の15分前にはお返しください。」

一が図書館へ入ると丁度司書から鍵を受け取るところだった。優がこちらを向いて鍵をチャラチャラ回している。一は手の消毒をしっかりしてから優の所へと向かった。




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