触77・触手さん迷宮八層目
言って両手を組んで仁王立ちになる焔の巨人、高さは10メートル程、結構でかいな。どうやらこいつ倒さないと進ませてくれないようだ。
取り敢えず氷の膜は各々に展開しておこう、全員一緒だと戦闘しにくかろうて。一つだった膜を分散して全員にそれぞれ小型の膜を貼ってやる、スケルトンは暑さ関係ないけど一応な。
貼り終わったところで焔の巨人が動き出した、緩慢な動きで右拳を振り下ろしてくる。全員離れてこれを避けると、ビノセとパディカが風の魔法で真空の刃を複数巨人の足目掛けで飛ばし、スケルトン部隊も続けて氷の弾丸を大量に顔面へと集中砲火。しかし殆ど効いてないのか、全て巨人の身体に飲み込まれていく。
「うーん、これは手強そうだねえ」
クオが困ったように漏らす、確かにダメージ入ってる様に見えないんだよなあ、てかこいつ肉体あんのか?焔の塊っぽいんだけど。
氷も効いてないっぽいしなー、大抵こういう奴って水が弱点なんだけど、この分じゃ超水圧ブレードも効きそうにねえなぁ⋯
幸い動きが遅いおかげでこっちが被弾することは無さそうだけど⋯⋯って、なんか巨人が両手上に挙げて動き止まったんだけど⋯あ、これ絶対ヤバい攻撃の前兆だ。
予感的中、両手を振り降ろすと四方八方から焔の渦が立ち昇り、こちらに押し寄せる。全体攻撃かよ!!
慌てて私は巨大で分厚い氷の壁を展開、全員を包み込む。直ぐ様渦が私達を舐め尽くし、業火が吹き荒れる。
うおぉぉぉぉぉ、耐えてくれ氷の壁ぇぇぇぇぇ!!!
ゴリゴリ溶けてく氷の壁を絶えず再生成、薄皮一枚ってとこでやっと渦が消えてくれた、うえぇあっぶねー⋯⋯つかこれ他の冒険者マジでどうしてんの?今の一撃で全滅コースだろ普通。
しかし今ので魔力結構使ってもうたな、あんま時間かけられんぞこれは。
「ちょっと考えがあるんだけどいいかな?」
唐突にクオが提案してきた、ふんふん成る程?⋯オッケー、試してみっか。
クオは大きな筒の様な物を取り出すと青い石を中に入れ、巨人目掛けて石を発射、続けざまに私が飛んでいく石に向かって魔法で大きな氷で覆い、さらに炎でまた包み込む。
巨人の腹に当たった炎の塊は中へと吸い込まれて行き⋯⋯今だ!!
覆った氷を媒介に魔力を石に注ぎ込むと石から急激に冷気が発生し、みるみる内に氷が肥大化、そして一気に成長し巨人を内部から吹き飛ばした。
「おー、上手くいったね、良かった良かった」
クオは満足そうに頷いている、さっきの青い石は氷の魔石。魔石はそれだけでも効果はあるんだが、魔力を注ぐと効果が跳ね上がるらしい、なもんで私が作った氷から魔力を流して活性化させたって訳だ。炎で包んだのは氷が巨人の高温で蒸発しないようにする為、松明程度の温度の炎なんで溶け切るにはそこそこ時間が掛かるから氷の保護に使った。炎なら巨人も防いだりしないだろって打算もあったがな。
吹っ飛んだ巨人が復活する気配もなく、道を塞いでいた炎の壁が音もなく左右に開いていく、うっし倒せたみたいだな。
一応警戒しつつ開いた道を進んでいく、実は罠で壁が閉まってくるなんてありそうだしなぁ。
まあそんな質悪いトラップも仕掛けられておらずすんなり通過、大きな部屋の真ん中に金色の宝箱が鎮座している、豪華な宝箱だなもしかしてあの巨人ボスか何かだったのか?
箱開けたら毒ガスぶしゅ〜とか無いよな?一応警戒して遠くから私が箱を開けることにした、中から出てきたのは⋯⋯カードリッジが三枚。只このカードリッジ、シールに「アクション」「RPG」「パズル」とそれぞれ書かれてるだけ、何だこれ?実際にプレイしてみないと内容分かんねぇなぁ⋯⋯クオも頭を傾げている。
カードリッジを取り出してクオに渡すと彼はカバンにしまいこむ、奥には下への階段、では次にレッツゴー!
階段周辺は溶岩も流れておらず、階下はここよりもずっと涼しそうである、というかこの階層が暑すぎんだが。階段をある程度降りた時点で氷の膜を解除したが問題なし、どんどん気温が下がっていくのを感じる。
さて八層目⋯⋯うーん⋯⋯何ここ???
降りて来てみるとなーんも無い、本当に何も無い、というか壁や床すらない。
辺り一面真っ暗、遠くの方には沢山の星、何か銀河っぽいのもちらほら見える。これもしや宇宙空間か?つっても地面の感触はあるんで宇宙そのものではないようだが⋯⋯
少し進むと唐突に降りてきた階段も無くなってしまった、どうやら引き返すのも無理っぽい、うーん⋯進むしかねーのか。
どっち行けばいいのかすら分からんのでとりあえず真っ直ぐ行くことにする、ただマジで周囲が何も無い宇宙空間なんで方向感覚狂いそうだが。こういうのってゲームだと適当に進んでもゴールに着いたりすんだけど、まあんなこと無いだろうなぁ⋯⋯
警戒しつつ移動をして数分経っただろうか、⋯⋯何だアレ?遠くにある星やら銀河がねじ曲がってる様に見えるんだけど⋯⋯
少しづつそっちに向かって行くとやはりおかしい、銀河が円状になってて、こう⋯⋯中心がぽっかりと黒く空いてるんだ⋯⋯が!!?
その時だった、身体が強く引っ張られる感じがする。こらえようとするがどんどんあの黒い空間に引き寄せられていく。
「ま、まずいぞ、あれは恐らくブラックホールだ!!」
クオが足を踏ん張りつつ叫んだ、ぶ、ブラックホールだぁぁぁぁ!!!?
言ってる間にも引き寄せる力は加速度的に増していく。や、やべぇぇぇぇ!!どうすんだこれ!!?他の皆も必死に堪えているが今にも吸い込まれそうだ、私もんな耐えられんぞこれ!!
全員を触手で掴んで風ブーストを最大出力で噴射するも離し切れそうにない、数分で魔力が底を尽く、そうなったら皆一気に飲み込まれる!!
ど、どーすりゃいい!?あのブラックホールを破壊する?いやいやそもそも破壊出来んのか?ブラックホールって!!ぐるぐる回る頭の中をあーだこーだと考えて⋯⋯思い出した!!
戻りの宝珠!!
袋に仕舞ってた宝珠を急いで取り出すと⋯⋯って、どうやって使うんだこれ!?⋯⋯えーいままよ!!
私は取り出した宝珠を天高く掲げると、宝珠は眩しく光り輝き周囲の視界がぐにゃりと歪んで⋯⋯私たちはそこから消えた。




