触62・触手さん原始を知る
エシータスク山脈、ドラゴンの集落に到着すると私達は其処から北方へと進んで行った。コンテナに取り付けられているコンパスを頼りに、北へ北へと向かってひた走る。大小のクレバスに注意を払いつつ進行、今回は案内役も居ないし、上空から道の安全を確認してくれる者もない。飛べはするものの燃費の悪さ故にずっと浮いてるのは無理である、よってやむ無し。
幸い天気は良好で降雪によって視界が塞がれることも無く今のところは順調そのもの、ただ気温がガンガン下がっているのがコンパスの横に取り付けられた気温計で見て取れる。現在の気温はマイナス25℃、既に極寒なんだが表示の下降が止まらない、徐々にだが進めば進む程下がっていく。まあコンテナの中に居ればまだまだ充分平気ではあるか。
小腹が空いたのでビスケットを摘まみつつ、携帯用の保温付きドリンクボトルから暖かい紅茶を一啜り。このドリンクボトル、ドワーフの作った特別製で、まあ簡単に言うと魔法瓶の水筒だ。これの凄いところは、何と冷却と加温が底に取り付けられた回転式のスイッチで切り替えて行う事が出来る。常にキンキンにしたりホカホカに出来る超優れもの、これ売ったら大儲けなんじゃ、ちなみに考案者はクオらしい、あやつ凄いなマジで。
で、これだけでも凄いのだが、こいつにはアタッチメントでろ過フィルターが取り付けられる、要するにどう言うことかっつーと、泥水でも雪でも飲料水になる、よって中で加熱すれば簡単に水が得られる。
まあ、魔法で水出せるしそれでもいいんだが、それだと魔力使うんでね、こっちの方が省エネである。
あ、ちなみに余所見運転は駄目だぞ、今は交代してメアリーが運転中だ。
一面銀世界の中、時折動物を見掛ける。豪雪地帯のせいか皆、厚い毛で覆われている、後でかい。どいつもこいつも私と同じかそれ以上はある、寒冷地の動物は大きいって見たことあるが、ここでもそのようだ、何食ってんだろな?木すら生えてないんだけどこの周辺、長距離移動とかでもしてんのか?この前の熊みたいな肉食動物なら他の動物補食すんだろうけど。
脚が六本のエゾ鹿みたいなのや、長毛の猪っぽい額から太い角生やした奴、胴体が異様に長い狐、等々、色んな動物を横目に見ながらコンテナは進む。
時々運転を代わりながら、さてどのくらい経ったか、気温は益々下がり段々と見られていた動物も減っていく。そして、何やら光景がおかしくなり始めた。
天では陽が煌々としているのに暗くなってきたのだ、進めば進む程周囲の明るさは減っていき、気温が加速度的に低下する。気がつけば動物達の姿も見かけない、どう考えてもおかしい、これは何かある。
更に進むと夕方くらいの明るさになり温度計の気温は遂にマイナス90℃を示した、真上では太陽が相変わらず元気に輝いている、最早異常。
成程、これは火の力が無かったら凍死するわ、コンテナの中の暖房なんて効きやしない。この状態でも耐えられているのは火の力で体温が維持出来ていて緩和出来ているからだ、おかげで寒さはそこまで感じていない。メアリーは……流石スケルトンか、何とも無いようである、良かった。
多分このまま暗くなる方へ進めば良い気がする、普通だったら自殺行為極まりないが、この先に原始の神殿が有ると直感した。
そして、とうとう気温はマイナス三桁に到達し周囲は夜近くまで暗くなり、コンテナのライトを点灯し暫くすると、前方に薄っすらと光が見えた。ライトの反射ではない、そちらへ進むと白い建物が視界に入る。
其の周囲だけ雪が全く無く、かなり古ぼけている、ここが原始の神殿だろう。入口らしき場所の前にコンテナを停めて私とメアリーは中に入って行く、外観とは一転、如何にもって感じの外とは丸で違い、床や壁に天井は黒い金属質で、良く分からん幾何学模様が蒼く光っている。
何か異星の宇宙船内部を彷彿とさせるな、真っ直ぐ伸びる通路を用心しながら移動すると大きい部屋に着いた、どうやら此処が終点っぽい。
中央には台座が有って、その上では謎の球体が浮かんでおり、四方には何かえっらい禍々しい大きな石像が四種それぞれ鎮座している、何なんこれ。
罠っぽいのも見られんので球体に近付いてみる事にする。
【充分お気をつけを】
【ほいほい】
メアリーに言われた通り慎重に這い寄って行くと、球体が薄く発光し、何処からともなく声が響いて来た。
『あーあー、テストテスト、本日は晴天なり本日は晴天なり……良し』
え、マイクテスト?何これ。いきなり始まった放送に困惑する私を他所に声は続く。
『あー、聞こえてるかな?原始の神殿へようこそ、我が子よ』
我が子……って、もしやこれ創造神か!!?
『そう、君が思った通り私が創造神だよ、あ、予測して言ってるだけだからこのオーブは私じゃないよ、まあ録音テープみたいな物だね』
録音テープ……それ今時の子供じゃ伝わらなくね?
『おっと話が逸れるから戻そう、君が来た理由は分かってるよ、色々と知りたいんだよね。じゃあそうだね……まずは君が「この世界に来た原因」これにしようか』
……いきなり本題を投げてきた。そう、そもそも何故私が触手の魔物としてこの世界に居るのか、一番知りたかった事だ、それがやっと分かる。
『ぶっちゃけて言うとね、君の居た世界、つまり地球だね。これが破壊された、宇宙毎』
…………はいぃぃぃぃぃぃい!!!?
創造神のとんでもない発言に、私は思わずゴボボボボーッと絶叫した。




