触58・触手さん遺骨回収する
アンチデヴィルス……何じゃそれ、まるでアンチウイルスソフトみたいな……つまりアレか?人種はウイルスって事?いやいや、流石にそんな……ねぇ?
「奴等は他種族を排除するだけではない、生産性をほぼ持たず、破壊を好み、侵略して奪い支配していく。現に今奴等の住む街は他種族が元来居住していた物だし、新しい建築物は奴隷にされた他種族が作った物だ、これは衣食住全てにおいてそうなのだ。そして増える速度も異常でな、短命ではあるものの一組のつがいが居ると一年で10は増える」
……うーん……聞けば聞くほどウイルスみたいだぞ……いや待て、一年で10増える!?
【ちょっと待って、そんなに増えるの?】
「ああ、決して子作りが盛んとかいう問題ではない、妊娠速度と成長速度が異常なのだ。妊娠後一ヶ月程で子を産み、その子も一年もすれば大人の半分程までに成長し、二歳になればもう子を産めるまでに育つ」
いや、鶏じゃあるめーし……明らかおかしいわ、人間と全く違うって事は分かった。
「とまあ、これだけの増殖速度だ、放っておけば世界は人種で覆い尽くされてしまうだろう、そう考え創造神は御子を作り、人種排除を行い始めたらしいのだが、千年前に人種が事もあろうに御子を彼の地へ封印した。それ以降爆発的に増えて行ってな、ついには資源の奪い合いを行うようになり、人種同士でまで争うになったのだ」
【どっかで戦争でもしてんの?】
キードが焼き菓子を一枚食べ飲み干す。
「……うむ、モル大森林の東にある帝国と、更に東にある聖王国が戦争の真っ只中でな、拮抗してる故ここ百年は続けておる。まあそのおかげで多少は人種の増加防止にはなっているのだが、資源欲しさに手当たり次第他種族を襲っては土地を奪ったり奴隷として連れ去っている。この地にもちょくちょく現れていてな……」
言ってキードの表情が曇る。
「……と、我が知っているのはこれだけだ、もっと知りたいのであれば……そうだな、この地より遥か北、エシータスク山脈を越えた場所にある原始の神殿に行くと良いだろう。そこは世界を作った創造神が最初に降臨したとされている。何か分かるやも知れぬ」
原始の神殿か、私自身の事も何か分かるだろうね。
「ただ、彼処は極寒の地、此処よりも遥かに寒く、我々ですら凍死しかねぬ地域だ、何か対策が無ければ進むのは無理だろう。見たところ複数の大精霊から力を貰っているようだし、火の大精霊からも協力して貰えれば良かろう」
火の大精霊か……何処に居るんだろ、土の大精霊はウチャデ鉱脈から出ていったって言ってたが。
【火の大精霊が居る場所って分かる?】
「ふぅむ……その質問からするとウチャデ鉱脈には居らなんだか。そうなると……そうだな、精霊というものは自然の力が強い場所で産まれる故、自身の属性に合った地を好む。火なら火の強い……まあ火山とかだな」
んー火山、火山ねぇ……一ヶ所思い当たる所あるけど……いやまさかねぇ……自力で探すしか無さそうかな、焼き菓子を頬張りつつ考える。てかこれ買ってきたんか?妙に旨いけど。
聞きたい事は今はこれだけかね、後は原始の神殿に行かないと駄目か。とはいえ謎は結構解けたけど。さて、んじゃあ今回此処に来た目的を果たしてしまおう。
【此方の質問はこれだけ、こっから本題なんだけど、此処にも人種が来てるんでしょ?】
問われてキードは大きく頷く。
「うむ、彼奴等め、我々同胞の遺骨を狙っていてな、どうやら何かの材料にしておるようだが。その都度排除しておったのだが最近は巧妙でな、文字通り姿を消して奪いに来るのだ、忌々しいことよ」
【姿を消して?】
「身体を透明にしておるのだ、どうも魔法の類いでは無くてな、魔力の流れを観る事の出来る我々でも見破れぬのだ。故に巡回をしておるのだが……此方は圧倒的に数が足りぬ為、手が回っておらぬ」
【成程、骨泥棒か】
「で、本来なら自ら選んだ死地に埋葬するのが仕来たりなのだが、最早そんな事も言ってられなくなってな、一ヶ所に集めて奉ろうとなった矢先、其方達が訪れたという訳だ」
【じゃあ遺骨の回収を手伝えばいいのね】
「うむ、申し訳ないが協力して貰えると非常に助かる、もし人種を見つけたら排除して構わん、生殺与奪もそちらに任せる」
【分かった、任せて】
触手で自分の胸を叩き答える、皆で手分けすれば早いか?
「案内は此方の者達がしよう、普段から巡回をしているからな、場所は全て知っておる、後で呼んでおこう」
それから雑談を交わし、今まで起きたこと等を話し合っていると、外から大きな咆哮が響いてきた。
「おお、巡回していた物者が一人戻ったか、ちと待っておれ」
そういうとキードは外へノシノシと歩いて出ていって直ぐに戻って来る。
「案内を頼んでおいた、さあ参ろうか」
キードがお茶を飲み干してまた外に出ていくので一緒に付いて行くと、外に一匹の、いや一人と呼んだ方が良さそうか、水色のドラゴンが座っていた。
「この者は我の側近でな、名をイーラと申す」
「イーラです、宜しくお願いします」
凛とした澄んだ声、多分雌だろう、丁寧にお辞儀をしてくれた。
「他の者達も此方に戻ってくるはずだ、イーラ、アードはどうした?」
「彼は人種を追って北の方へと向かいました、直ぐに戻るでしょう」
「そうか、あいつは鼻が効くからな、姿を消しても追えるだろう」
ほーん、ドラゴンにも色々居るっぽいな?
「ではイーラよ、御子殿を各遺骨の場所への案内を頼む」
「承知しました」
【じゃあ私がイーラと一緒に行くから、他の皆は他のドラゴン達に協力で、手分けして遺骨回収して】
【分かりました、お気をつけて】
【コンテナ一台借りてくよ】
私が乗ってたコンテナに乗り込んでスイッチを入れるとエンジン音が響きだす、操作方法は見て知ってるから問題ない、これでも運転免許持ってたしな。
「では参りましょう、先導致します」
イーラが羽ばたいて上昇して移動を始めたのでコンテナで追いかけて行く、さて、遺骨どれくらい埋ってんのかねぇ。




