陽の当たらないアジサイは梅雨でも枯れる
初BLです。
坂道を下り続ける。雨の中、相合傘をして男友達と。「無邪気に傘忘れたから入れてくんね?」
とかけて走ってきた彼に、「しゃーねーなぁ」なんて嘘くさい男友達同士のガサツな返事を作って返す。
彼の髪が濡れて白い頬まで水滴が滴っている。見とれてしまわないように、あからさまに目をそらす。ちょうどいいところにアジサイが咲いていたので話も逸らす。
「アジサイって梅雨の花だけどさ、意外と陽当たりが重要なんだって。陽の当たらないところに咲いた花はほら、あんなふうに枯れてしまうんだよ」
僕の気持ちもこのまま陽が当たらないまま枯れてしまうんだろうか。
「お前って花好きなの?」
「んや、別に」
感情移入していただけ。
「最近知った知識ってすぐ自慢したくなるじゃん」
ごまかしただけ。
「ふうん」
興味なさそうに彼は返事する。
「男と花なんて見たってしょうがねえからなあ。俺が花なんておしゃれなもの興味持ったふりするのは口説きたい女の前でだけだぜ~」
一緒に花をみてもしょうがない存在だなんて知っていても、心に刺さる。それでも無理に笑顔を作る。
「花なんてどうせすぐ枯れちまうしな」
「まあ、儚いもんだからな」
枯らしたのはお前だろうが。
「というかなんかお前元気なくないか?」
お前のせいだよ。
「気のせいだよ」
気まずそうにこちらを彼がのぞき込む。その唇に見惚れてしまって、そんな本心を知ったら嫌がるだろうに興奮してしまう自分が心底気持ち悪くて嫌だった。でも、それでもこのまま枯れて枯らされて終わってしまいたくない。唇がすぐそばにあった。とっさに彼の唇を奪ってしまった。枯らされるくらいなら何もカモ壊れてしまえ!彼は目を丸くしておびえながら僕を見ていた。やってしまった。そのまま逃げ出してしまった。僕は横に咲いていたアジサイよりはるかにびしょ濡れになってそのまま坂を下って降りて行った。もう誰とも会いたくなくて、そのまま漁港に飛び込んでしまった。海の水は雨で濁っていて、前が見えなかった。そのまま船と漁港をつなぎとめるヒモに引っかかって、顔を上げることができなくなった。パニックになって、そのまま死を覚悟した。何も見えなくてあきらめて目を閉じると、右手を思いっきり引っ張られた。彼の腕だった。息ができるようになったことより、彼が救ったことのほうが衝撃的で
「なんで!俺あんなキモいことしたのに救おうとするんだよ」
衝動的に救われたのに叫んでしまった。
「だって、お前が追い詰められてたからさ」
「へ?」
つい期待をしてしまう。
「だから意味わからない行動したんだろ。おかしくなってねえと男にキスなんてしねえよ。それにおぼれてる親友をほっとけるかよ!悩みならいくらでも聞いてやるから早く上がってきな」
彼の優しい笑顔が本当にたまらなく好きで、苦しかった。女の子よりも彼のそばにいれる特権を持っているのことが、余計辛かった。この気持ちが叶うことも、拒絶されることも気づかれることもなく、隣にいるのに枯れてしまうから。
あんまりBLしらずにテキトーに書きましたが、ワンちゃん刺さると嬉しいです