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円満追放  作者: RINSE
プロローグ
1/14

第0話「円満の騎士」

「99羽の鳥が地面に降り立った。種族は鳩。連中は全員、いつも通り馬鹿っぽく頭を振りながら足を動かそうとした。

 だが、誰も動かない。目の前に1羽の、白い頭の(わし)がいたからだ。


 鳩たちは困惑した。オスの鷲がいることにじゃない。その見た目にだ。

 そいつは片目が抉られ、片足が欠損していた。よく見ると体中傷だらけで、飛べるのかと疑問に思うほどだ。

 ここまで想像できたかな。


 さて、キミに質問をしよう。

 このあと鷲は鳩からどのような扱いを受けると思う? 攻撃されるか。侮蔑に塗れた視線を向けられるか。仲間外れにして全員飛び立つか。


 正解は、鳩たちは彼を歓迎した。


 なぜだと思う? 鷲であることに変わりはないからだよ。

 傷だらけだろうと強く、恐ろしく、そして美しい。皆の憧れの象徴だからだ。


 それから彼は群れに加わり、優雅に飛び続けた。餌を取る時も率先して動き、常に鳩たちのことを気にかけ、外敵との戦いは常に体を張り。長い年月を仲間と共に生き続けた。


 ここまで聞いて。キミは疑問が湧いてるだろ。言ってみろ」



「……なぜ鷲は、片目と片足を失っているの?」



「そう! 知りたいよな。鳩たちも悪いと思いながら質問した。

 彼は、仲間たちと仲違いしてしまった結果、失ってしまったと言った。つまり剛毅な鷲と喧嘩をし、破れたというわけだ。


 鳩たちは納得した。

 ああ、こいつは傷が恥ずかしくてここ(群れ)に来たのだ。自分より遥かに弱い者たちの輪に入り逃げている臆病者なのだ。しかしそうは言っても空の王者。せいぜいこき使ってやろう。

 大半の鳩たちはそう思った。


 だが一部の連中はこう思った。

 彼の話は本当なのか?


 そう疑問に思いながらも一緒に過ごすしか道はなかった。

 さて、ここまで聞いて、キミはどう思う?」



「……嘘だと思う。喧嘩で負けたのなら、足や目を潰すより翼を()ぐ」



「そう。その通りだ。鷲の話は嘘なんだよ。全てが嘘だった。


 鷲はね、爪を研いでいた。脳味噌を使い続けていた。

 そして爪を出す時が来た。翼を広げる時が来た。片目と片足を犠牲にした苦労が報われる時が来た。


 わかるかい? 鳩の群れが来たのは、偶然じゃない。必然だ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「……鷲は……何がしたいの?」



「決まってる。自分の大切な物を犠牲にし、誇りすら捨てた者が、それでも成し遂げようとするもの。


 復讐だ。


 憎くて憎くて、殺したいほど憎くてたまらない相手が、鳩の群れの中にいる。鳩の皮を被った悪魔がいる。彼はそいつを殺すために生きて来たんだ」



「……それで、どうなったの?」



「ん?」



「復讐は……果たせたの?」



 男は白い歯を見せた。



「今から話す。最後まで聞けば……円満(えんまん)の騎士の物語を聞けば、キミの求めていた答えが見つかるよ。


 眠くなったら、寝ても構わない。

 また明日話そう。


 そう……時間は、たっぷりあるから」


 

新連載はじめました。

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