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19 女子会 その1


「さあ、みんな。今日で夏休みの宿題を終わらせようではないか」

「いや、終わってないのマキだけだよ」

「……手伝って」

「私が手伝ってあげるわ」

「いや、コバヤカワはちょっと」

「遠慮することないわ」


 コバヤカワにロックオンされたマキは、これよりスパルタ授業が始まる。



 どうも、ユウカです。

 現在は、夏休み下旬。


 マキが夏休みの宿題を終わらせたいから、誰かの家に集まって一気にやってしまおう、とのこと。

 ま、その本音は、みんなとお泊りしたいだけなんだけどね。


 やはり、マキには正直になれない可愛さがある。


 で、集まったのは、私、ハル、マキ、メグミ、コバヤカワの5人である。

 そして場所は、コバヤカワの家である。


 いわく、両親が同じ日程で有休をとり、ヨーロッパ各国を巡る旅行をしているそうだ。

 で、家に誰もいないからとのことで、お泊り会の場所となった。


 そのコバヤカワの家は、ザ・お金持ちの家である。

 4階だてで、屋上までついている。


 私を含む他4人のテンションが爆上がりした状態で、コバヤカワの家に入る。



 そして、現在午前9時。


 マキはコバヤカワのスパルタ学習に、早くも根を上げている。


「ちょっと、誰か助けてよー」

「ダメよ。勉強は自分のためにするんだから。今まで、見て見ぬふりをしてきたマキが悪い」


 至極正しいことを言う、コバヤカワ。

 ただし、みんなで楽しくお泊りすることを夢想していたマキにとっては、酷な話でしかない。


 そんなマキを見かねて、私は読書感想文の宿題だけは手伝うと言って、微力ながらマキのゴーストライターを担当することになる。

 必然的に、私が読んだ本から選ぶことになるが、どれもラブコメである。

 さすがに読書感想文でキュンキュンした、みたいなことを書いてしまうわけにはいかないので、ラブコメの内容はあくまで土台として、そこから現在の若者の恋愛離れについて考察することにした。

 途中、マキっぱい詩的な表現を挿入することで、無事隠蔽工作が完了する。

 あとは、マキが作文用紙に写せば終了である。


「はい、これ。読書感想文の下書きね。あとはこれを清書すればいいから」

「ありがとー、あんたの妄想力がこんなところで発揮されるとは」

「そんなわけないでしょ。妄想力全開の内容なんて、とても先生に見せられる内容じゃないんだから」



「あっ、ユウカ終わったー?」

「うん」


 メグミに呼ばれる。

 彼女はハルのスマホに保存されている写真を見ていた。


「何してるの?」

「ハルとオオクボ君が楽しそうにしてる写真を見てたの」

「だって、メグミが見たいっていうから」

「えー、そのわりにはノリノリで見せてきたけどなー」

「うっさい」


 照れるハル。

 それを見てうれしそうなメグミ。


 恋愛において、メグミから主導権を握れることはないだろうな。


「おっ、これは、この前の花火大会じゃん。あれ、タケルも浴衣着てる」

「そうなの、そうなの! めっちゃカッコよかったんだから」

「みたいだね」


 相当うれしかったのだろう。ハルが感情を爆発させてはしゃいでいる。


「ん? これは」

「あっ、それは」


 ハルは、見せていたスマホの画面を隠す。

 しかし私は、隠した写真をはっきりと見た。

 その写真は、タケルの家にて、二人がパジャマ姿でいるものだった。


「へー、家でお泊りしたんだ―」

「……そうだけど?」


「一緒のベットで寝たんだよね?」


 メグミが冗談半分で聞く。


 流石にないだろ。ハルとタケルの初々しいカップルが。


「……うん」

「嘘でしょ!! 本当に!?」


 ハルの赤面するリアクションからも、本当であることは確定だろう。

 これには、冗談半分で聞いたメグミも驚きつつも、ドキドキしている。


「てことは、そういうこともしたってこと?」

「? ドキドキしちゃって、ほとんど寝れなかったけど」


 私とメグミは目を合わせる。

 やはり、初々しいカップルである。

 自分たちの心がけがれていることを再認識して悲しくなっただけである。



 昼食。

 未だコバヤカワに拘束されているマキを残して、私とハルとメグミの三人で買い出しに行く。


「ちょっと、相談したいことがあるんだけど」

「何? 改まっちゃって」

「ああ、そういえば明日だったね、タケルの誕生日」

「そうなの。今までは悩むことなくすんなりプレゼントを決められてたんだけど。今は、その、付き合ってるわけだし」

「はーい」

「メグミ、なんかいい案あるの?」

「いい案かはハル次第だけど、手作りケーキとかはどうですか?」

「手作り、か」

「そう、手間暇かけて作ったプレゼントの方がうれしいだろうし。私、お菓子作り得意だし」


 というわけで、昼食を買いつつ、ケーキ作りに必要な材料も購入することになった。



「色々考えた結果、チョコケーキにしたいと思います」


 昼食を終えて、お菓子作りを開始する。

 冷蔵庫できちんと保存しておけば、明日渡しても問題ないだろう。


「タケルは甘いのが苦手なので、ビターチョコレートにします」


 タケルの甘いもの嫌いは、私も知っている。

 高校1年生の時、ハルと一緒にタケル宛てのチョコを作ったのだ。

 その際、ハルから聞いた。


「じゃあ、私が適宜アドバイスするから」

「私も手伝うよ」


 こうして、私とメグミの二人体制でハルの調理をサポートすることとなった。

 私だって、学校がある日は自分でお弁当を作る程度に料理をするほうなのである。



「はい、おやつの時間ですよー」


 3時。チョコケーキが完成する。

 タケルには一切れ残しておけばよいので、ホールを6等分して、そのうちの1つだけを買い出しの時に買っていた箱に入れて冷蔵庫にしまう。

 で、残りはおやつとして食べることにした。

 明日、タケルに渡す前の試食会でもある。


「やったー、勉強のしすぎで脳の糖分が不足してたから、有難い」

「とても美味しそうね」


 マキとコバヤカワの表情が晴れやかになる。


 声をそろえて、いただきますと言って、各々フォークで食べる。

 くちぐちにおいしいと感想を述べる。


 「へえ、オオクボも甘いの苦手なんだ。私と一緒ね」


 どうやら、コバヤカワは甘いものが苦手のようだ。

 クールなイメージとぴったりである。


 そんなコバヤカワと対照的に、マキは「うう、甘くない。これじゃあ、糖分が補給できない」と文句を言っていた。



「終わったー。バンザーイ、バンザーイ」


 マキは、諸手(もろて)を挙げてヒャッホイする。

 午後5時。マキの宿題が無事終了する。


「さーて、ここからが今日の本番だぜ」


 宿題が終わり気分上々のマキである。


「夕食は屋上でBBQをするつもりなんだけど、みんなそれでいい?」


 私たちは嬉々とした状態で、屋上に肉や野菜などを持っていく。


「都会でBBQなんてするとは思わなかったよ」

「そうだね。どうする? 今度はキャンプでも行く?」

「いやよ、虫が多いんだから。家でするのが一番。それにキャンプに行くなら誰かのクルマで行きたいし」


 少なくとも、高校生の段階ではキャンプに行くことはないだろう。

 じゃあ、大学になってから?

 このままでいたい。でも、いつか別れる時がくるんだよな。


「よーし、いっぱい食べるぞー」


 くよくよ考えてる時間がもったいない。

 今、この瞬間を楽しまなきゃ。

 私はお腹いっぱいになるまで肉やら野菜を焼きまくった。



「アンコール、アンコール」

「みんな、ありがとー。じゃあ、アンコールに応えまして、私の十八番歌っちゃいまーす」


 BBQを終えた私たち。

 コバヤカワが、おもむろにテレビしたの戸棚からマイクを取り出したのである。


「食後の運動ついでに、カラオケ大会でもしない?」


 コバヤカワの提案に乗った私たちは、それぞれ全力で熱唱する。

 で、最終的に、テンションが高まりきったマキが、ライブみたいな演出をしはじめるのだった。



 カラオケ終了後。


「さーて、ほどよく汗もかいたし、お風呂入ろー。浴室ってどこにあるの?」

「1階に降りてすぐ左のドアが浴室よ」

「ちょっと待って」


 そこに待ったをかけたのは、いまだ冷めやらないマキである。


「私、みんなと銭湯に行きたい」

「どうしてまた」


 マキは一瞬だけ、メグミの方を見る。


 ……なるほど。


「そうだね。せっかくだし、私もみんなと一緒に入りたいなー。さすがに5人全員だと浴室ぎゅうぎゅうになるだろうし」


 私はマキの意図を読み取った。

 これはチャンスである。

 修学旅行で見ることのできなかった、メグミの体を拝める絶好の機会である。


「それなら私も―」


 マキの意図を読み取っていないハルも、なんとなく楽しそうという理由で同意する。


「ま、過半数が言っているのだから、しょうがないわね」


 コバヤカワも流れに乗って同意する。


「……まあ、みんなが行くなら、私も行くけど」


 メグミもこの流れに逆らうことはできず、銭湯に行くことになる。


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